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「クリスマスにちなんだ現代物語」 上 作 H.H.


今はベビーブームもずっと過去の事となった。かつてはサラリーマンの憧
れの的となった事もある、古き新興住宅街にある、希望が丘ワードの一室・・・。

「時間がないから、賛美歌はやめて、祈りで始めましょう・・」
「・・・アーメン」

「それじゃ・・先月議題に出た、75歳のA兄弟の事ですが・・。」
「それより先に、プログラムの事をやったほうが!」
「プログラムには後で時間をかけてやるから、先に個人問題をすましてし
まいましょう。」

「・・ええ・・じゃあ、A兄弟ですけど・・、HTが訪問していませんの
で、新しい情報は入っていません・・。」(注、HTはホームティーチャー)。
「そうですか・・。先月の話では、かなり体が弱ってきて助けが必要だと
か・・でしたね。」
「そうです、もう自分で身の回りの事をするのが難しいぐらいらしいです。」
「親族は?」
「御存知のように姉妹は先に亡くなられて・・子供さんは、別に暮してい
るようです。」
「子供は面倒を見ないのか?」
「はい・・・A兄弟がモルモンとして厳しく育てようとしたのに反発して、
出て行ったきり連絡もないようです。」
「年金とか介護保険とかで、何とかならないのか??」
「それも、若い頃から教会の召しを果たすために、定職につくのをあきらめ
て、自営業でしたし、教会の福祉があるって思って老後の蓄えや保険など
には入ってなかったようです・・。」
「そうか・・でも、それは、教会が勧めた事じゃないし、本人の選択だか
ら・・・仕方ないな・・。」
「断食献金とかで何とかならないんでしょうか・・。」
「ま・・一応その措置は考えて置きますが・・このワードでは他にも何人
かの高齢者がいるし・・、無限に財源がある訳じゃない・・。教会の原則は
あくまで自立ですからね・・・」
「ま・・そうですね・・・。」
「教会が全ての会員の生活を助けるなんて事が出来るわけないじゃないか。
ま、A兄弟も自分でなんとかしないと仕方ないでしょうね。とりあえずHT
には訪問して、ワードの新聞だけでも渡しておくように言ってください。」
「そうですね、先月のHTの実施件数が少なかったので今月は頑張ります。」
「じゃあ、時間がないから、聖餐会の確認と・・・・・。」


有馬は、チャイムを押した。「ピンポーン」と言う音を待ったが、音がし
ない・・?「あ・・壊れてるのか・・・」仕方なくドアをノックした「コ
ンコン・・」返事はなかった・・。
「もう帰ろうか・・・。」有馬は心の中でつぶやいた。

昨日の夜遅く、定員会の会長から電話があった、役員会の帰りらしかった。
「あー有馬兄弟ですか?」
「はい!有馬です。」
「遅くにすみません、いきなりなんですが、明後日に一緒にA兄弟を訪
問したいのですが・・。」
「すみません・・明日なら行けるんですけど。」
「じゃあ・・明日・・」

今日の7時の約束だったけど、結局会長は仕事で遅くなるって事で、有馬
だけが行く事になった。そんな事情だから、とにかくA兄弟の家まで来た
し、ドアもノックしたから・・それで返事がないのだから・・・自分の責
任は果たしたし・・。
そんな事を思いながらも、せっかく来たんだから・・と思いなおして少し
強くドアを叩いた、あまり強く叩くと壊れそうなドアだったので・・それ
なりに強く・・。

「はーい・・」中から小さく返事が返ってきた。
「教会のー有馬ですー。」
「ああ・・今開けます・・。」

スエット姿のA兄弟が出てきた、足腰は弱っているように見えたが、動け
ないほどでもなさそうだ。

「すみません・会長と一緒にって予定だったんですけど、予定が変わっ
て、私だけになりました・・。お元気ですか・??」
「あーご苦労様・・そこじゃー戸が閉められないから・・ちょっと中に入
って・・。今、座るところを作るから・・。」
そう言って、一つの椅子の上のものをテーブルの上に移して、有馬が座れ
るようにした。

「良く来てくれましたね。・・昨日までなら昆布茶があったんだけど。」
「いえ、すぐに帰りますから、何もいりません・・。」
「そだな・・今の若い人は忙しいから・・。」

「・・・で・体の具合はどうなんですか?・・」
「ま、見ての通り、部屋の中で身の回りぐらいは出来るけどね。買い物が
なかなか大変で・・。隣りのおばさんに頼んで買ってきてもらってるんだ
よ・・。」
「そうなんですか・・ちょっと言ってくれれば、扶助協会にお願いして・・。」
「ああ・・いや、隣のおばさんとは古い付き合いなので、頼みやすいから
ね・・。」
「そうですか・・なら・・また必要になった時に連絡してください・・。・・・・・・・。」

改宗してやっと1年が過ぎた有馬にはこの後の言葉が続かなかった・。

生活費の事や、家族の事など聞きたい事はいっぱいあったが、その様な事
は、役員がすでに聞いているだろうから、重ねて聞くのも失礼だし、本人
も話したくない事もあるだろう。そう思った。

「有馬兄弟・・・、で・・最近ワードの方はどんな感じですか・・。誰か
役員が変わったとか??」
教会に来ていなくても、役員の人事とかが気になるらしい・・。
「いえ・・役員は最近変わっていませんよ・・先週吉田家の3番目の加奈
子ちゃんがバプテスマを受けたぐらいかな?・・・」
「ああ、バプテスマ会があったのか、知らなかったな・・知っていても行
けないけどね・・はっはっはっ・・。」自嘲気味に笑った。

(続く) [著者のサイト上の名前:「余言者オモロイ」]

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23-26日のアクセス数 (NJWindow(アクセス数))
2007-12-27 08:49:40
末日聖徒版 クリスマス現代物語は12月23日早朝に投稿し、23-26日のアクセス数が合計328に達しました。その間の閲覧数(pv数)は820で、1アクセス当たり2.5になります。

訪問者の皆様ありがとうございました。また、作者のHHさんに感謝いたします。
 
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