ねこ庭の独り言

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非聖戦 - 7 ( 『非聖戦 』の意味と、日本国憲法 )

2018-11-25 20:25:49 | 徒然の記

 『非聖戦 』の、228ぺージです。あと151ページですが、依然として悪文です。

 1989 ( 昭和64 )年に アフガン紛争が終わった後、この戦争が欧米諸国と中東の国々に、取り返しのつかない爪痕を残しました。氏が語る負の遺産は、次の二つです。

 1. 利に聡い人間たちが金に目が眩み、味方だけでなく、敵勢力にも、お構いなしに兵器の横流しをしたため、おびただしい兵器と弾薬が、過激派組織の手に渡ったこと。

 2. 莫大な戦費の調達のため、麻薬の製造、密売ルートが複数箇所に作られたが、紛争後もそのまま残り、多くの国民を苦しめていること。

 昨日読んだ79ページは、「黄金の三角地帯」と呼ばれる、パキスタンとアフガニスタンにおける麻薬のシンジケートに関する説明でした。

 本来の「黄金の三角地帯」は、東南アジアのタイ、ミャンマー、ラオスの山岳地帯にある、世界最大の麻薬密造地帯を指しますが、アフガン紛争以来、新たに作られた麻薬密造地帯はこれを凌ぐ規模になりました。

 CIAの秘密資金だけでなく、サウジの王室からも、同額以上の金が武器調達のため注ぎ込まれました。中東諸国の国家予算に匹敵する金額が、反ソのための聖戦費用として、惜しげもなく使われました。

 アフガン紛争後に大小様々の過激派集団が、現在でも、その武器で殺し合いをしていると、薄々聞いています。ソ連をメインの敵として戦いながら、同じイスラムがスンニ派とシーア派で殺し合い、同時に穏健派と過激派も戦っていますから、中東を知らない者には、全体がどうなっているのか掴めません。

 しかしこれだけは、分かりました。

 ・敵対勢力への激しい憎しみと怒り

 ・家族と仲間への愛

 ・多額の金をめぐる欲望が絡み合い、想像のできない騒乱が起きている。

 ・しかも、先が見えない争い。

 更に麻薬の密造が行われ、ここでまた多額の闇資金が動き、泥沼の戦いが続いています。日本でも時折麻薬摘発のニュースが流れ、ヤクザのボスたちの動きを知らされますが。パキスタンやアフガニスタンの三角地帯の話は、桁が違います。しかも同じアメリカのCIAと、麻薬捜査組織が敵対し争うというのですから、いっそう頭が混乱します。

 『非聖戦』と、氏が本の名前をつけた理由が、ここに来て分かりました。麻薬をめぐる陰謀と汚い金にまみれている戦争は、「聖戦」であるはずがないと、どうやらそう言っているようです。

  「1989 ( 昭和64 )年以後の、新しい聖戦はエジプト、アルジェリア、フィリピン、ニューヨーク、パリ、その他のムスリムセンターなど全世界に広がり、激しさを増している。」

 「オサマ・ビン・ラディンらは、依然としてその資金を、供給し続けていた。彼らは世界のテロリズムを、民間人の手による大事業に変えてしまった。」

 「この過程で生まれている最大の脅威は、聖戦と暴力の資金源が、麻薬の栽培、精製へと、世界的な密売の方向を辿り始めていることだ。麻薬の大きな流れが、アフガニスタンとパキスタンから、ヨーロッパ、アメリカ、極東へと向かい始めた。」

 「これはコカインと同様、数百万の人たちを病に陥れ、死に至らしめるものだ。麻薬商人やその仲間を大金持ちにするが、結局は、数百万の生命を破壊した、アフガン紛争の直接の結果である。」

  麻薬を武器として利用する計画に関し、レーガン、カーター、ブッシュ、クリントンと、アメリカ大統領の名前が出てきます。ケーシーCIA長官、仏対外情報機関長官ドラマッシュによる密談も書かれています。

 麻薬王アフリディー、タリバンなど、多くの人名と組織名が、麻薬との関係で説明されます。詳述されるほどややこしくなり、私の理解を不可能にしました。

 ここでまた、素朴な疑問に戻ります。

  「本を訳したNHKの記者たちは、どんな思いで作業をしたのでしょうか。世界ではこんなことが、日常茶飯時に行われていると日本人に伝えたかったのでしょうか。それとも、日本でも同様のことが既に行われているのだと、お人好しの国民に、知らせたかったのでしょうか。」

 本が出版されたのは平成13年、ちょうどアメリカで「同時多発テロ」が発生した年です。ビン・ラディンは、まだ米軍の手で殺されていません。NHKの記者たちが、現在の日本を考えるため、貴重な書として出版したという気概はどこにも見当たりませんでした。

 私はこの本を読んでいますと、日本国憲法の前文が浮かんで参ります。

 「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、我が国全土にわたって、自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって、再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」

 「日本国民は、恒久の平和を祈念し、人間相互の関係を支配する、崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」

 「われらは平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を、地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。」

 「われらはいづれの国家も、自国のことのみに専念して、他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は普遍的なものであり、この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信ずる。」

 昭和21年に、マッカーサーから示されたこの前文を持つ憲法を、政府は受け入れました。72年が経過し読み返しますと、やはりこれは「戦争をした日本が悪かった。」「日本は反省しなければならない」という、トーンで書かれています。

 氏の著作を翻訳しながら、NHKの記者たちは、疑問を抱かなかったのでしょうか。「果たして日本以外の諸国民は、平和を愛する諸国民なのか。信頼するに足る、公正と信義を有しているのか。」

 「国際社会は、果たして平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を、地上から永遠に除去しようと努めているのか。」

 「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して、」「他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、」

 あたかも日本が、自国のことだけに専念し、他国を無視してきたような書かれ方をしていますが、これで良いのかと、NHKの記者たちは疑問を抱かなかったのでしょうか。

 「わたしたちは、二度と過ちを繰り返しません。」

 終戦の日の一連の行事の中で、広島市ではこの言葉が常に読まれます。一般市民への原爆投下という、無差別殺人をしたのは米国なのに、広島市民自身が謝っています。

 「何もかも、戦争をした日本が悪かったのです。間違っていました。」と、原爆を投下した、残忍なアメリカに頭を下げています。

 憲法の前文と広島の句碑の言葉は、戦勝国に膝を屈した卑屈な文です。日本は正しかった、間違っていなかったと、居直れと言っているのではありません。必要以上の反省をやめ、歴史の事実を見直そうと提案しています。アメリカが、ソ連をアフガン紛争の泥沼へ誘い込んだように、当時の日本はソ連とアメリカによって、底なしの消耗戦へ誘導されたという事実も、知る必要があります。

 息子たちに言います。現在の日本では、敗戦以来、反日左翼の人間が政界、学界、法曹界、マスコミで、戦後利得者として居座っています。

 彼らが生きてる間は、「憲法改正」は困難だろうと思います。少しずつ、ネットの情報が広がり、若い人々が日本の過去を見直し始める時がきたら、「憲法改正」が可能となります。

 NHKの記者たちのように、ケーリー氏の著作を翻訳しても、なにも矛盾を感じない者もいますが、多くの日本人は、そうでありません。

 何時かきっと息子たちが、日本を取り戻そうと考える人の仲間になってくれるだろうと、期待しています。

コメント
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