ねこ庭の独り言

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アメリカの正義に 惑わされるな ( 敗戦思考の著者 )

2018-11-05 19:23:41 | 徒然の記

 山本裕司・大野彩子氏著『アメリカの正義に惑わされるな』( 平成15年刊 河出書房新社 ) を、読んでいます。

 275ページの本の、29ページです。平成13年の9月11日の、前代未聞の同時多発テロ事件から、記述が始められています。普段なら、もう少し読み進んだ後で、書評に入るのですが、今回はそれができなくなりました。もし間違っていたとすれば、最後に訂正しなければなりませんが、著者への不快感が生じました。

 大雑把な結論を言いますと、ビンラディンの無差別テロには、それなりの理由があり、アメリカだけが正義ではないという主張です。昭和24 (1949) 年の朝鮮戦争以来、アメリカが世界で行った大戦争と言えば、昭和40 (1965) 年のベトナム戦争、平成3 ( 2001 ) 年の湾岸戦争があります。

 いずれも大規模な地上部隊を派遣し、他国に攻め入っています。戦争には米国なりの正義があり、理由が掲げられていますが、世界一の軍事大国ですから、実力で阻止できる国はありません。『アメリカの正義に惑わされるな』という表題については、私も頭から否定せず、納得できる思いもあります。

 「ビルに激突、ないしは墜落した4機の搭乗者数は、次の通りだった。」著者は、4機の状況を列挙します。

 1. アメリカン航空機 ( 世界貿易センタービル北棟激突 ) 乗員数 92名 

 2. ユナイテッド航空機 ( 世界貿易センタービル南棟激突 ) 乗員数 65名

 3. アメリカン航空機 ( 国防総省激突 ) 乗員数 64名

 4.   ユナイテッド航空機 ( ピッツバーグ近郊墜落 ) 乗員数 45名

 著者である山本氏に、違和感と不快感を抱いたのは次の叙述でした。

 「これは戦争だとブッシュは言ったが、戦争で死ねば、殉教者として天国へ行けると教え込まれ、その教条を信じ込んでいるイスラム過激派の若者たちにとって、自爆テロは恐ろしいものではない。」

 「これは第二次世界対戦の末期に、日本軍が、アメリカの艦船に対して仕掛けた、零戦による自爆攻撃によく似ていると、あるアメリカ人元将校が言った。当時、特別攻撃隊カミカゼは、アメリカに言い知れぬ恐怖を抱かせた。」

 タリバンによる自爆テロと、特攻隊の爆撃は、同じものではありません。大西中将の隊員への訓話でも知られる通り、狂信的扇動で出撃したのでなく、冷静な覚悟の死でした。まして彼らは、一般市民を巻き込んだ無差別の攻撃でなく、軍を相手に戦ったのです。 

  「アフガニスタンを攻撃するため、アメリカの原子力空母はアラビア海に展開したが、その艦内にはいたるところに、真珠湾を忘れるなと書かれたポスターが、貼られていた。」

 「真珠湾攻撃から半世紀が過ぎた今、アメリカ本土の、しかも国家の中枢機関を攻撃され、何の関係もない、3千人もの人々が殺されたのだ。」「今もなお、真珠湾攻撃での敗北を忘れていないアメリカが、この仕打ちに対して報復をしないはずがないのだった。」

 アメリカの元軍人の話の引用とはいえ、疑問も反論もなく聞き入れ、そのまま文章にするという無神経さに、怒りを覚えました。昭和時代ならまだしも平成の世となり、大東亜戦争の事実が沢山明らかになっているにも拘らず、無差別テロと特攻隊を同列に述べて語るのですから、憤りを覚えます。

 巻末の説明によりますと、山本氏は、毎日新聞東京本社社会部部長だったと、書いてあります。朝日と並ぶ、反日・左翼の新聞社ですから、やはりそうかと思いました。いつものように、ネットの情報を検索してみます。

  「昭和11年、満州国奉天市に生まれ、山口県萩市で育つ。」「早大卒業後、毎日新聞社入社」「社会部デスク、横浜支局長。」「ルパン文芸、を主宰した。」「平成29年、81才で逝去。」

  私より8才年長ですが、終生反日で終わった氏です。記者がやっかいなところは、反日が個人の範囲で終わらず、記事や著作を通じて、社会に悪影響を及ぼすところです。結局は氏も、「東京裁判史観」に囚われた記者の一人ですから、日本だけが悪いと思い込んでいます。無差別テロと特攻隊が同列に語られても、何の痛痒も感じない魂の抜けた日本人だったと、理解しました。
 
 先日読んだ「東京大空襲」の作者早乙女氏も、山本氏に似た人物でした。児童文学者である氏は、悲惨な東京空襲を克明に綴りました。すでにブログにしていますが、一部を再度紹介します。

 「東京の下町は、山手と比べて土地が低いだけでなく、川の多いのが特徴である。」「隅田川、荒川放水路、江戸川と三本の大きな川が、東京湾に流れ込むデルタ地帯に、マッチ箱のような人家が密集し、さらにこの川を縦横に結び、数え切れないほどの運河がある。」

 「B29の焼夷攻撃は、これらの町を炎の壁で包囲し、その後で、しらみつぶしに、人家の密集地帯に向け、エレクトロン、油脂、黄燐と、各種の焼夷弾の雨をぶちまけて行った。」

 「人々は運河に飛び込んで、難を逃れたが、飛び込んだ人、押されて落ちた人で、水面は人間でうずまった。」「炎の反射で、水面がギラギラと真紅に燃えたから、それはまさに、地獄の血の川だったろう。」「両岸から、火炎と熱風と黒煙が川面を吹きなぐり、水面から首だけ出していた人は、一瞬に髪を焼かれて死んだ。」

 228ページの本の八割は、こうした無残な状況が綴られます。私は氏が説明した、米軍内の情報に心を奪われました。

 「当時サイパンには、米空軍爆撃隊司令官として、カーチス・ルメイ少将がいた。彼はハンブルグ大空襲の指揮官として、ドイツへの戦略爆撃で知られた、悪名高い男である。」「ルメイは東京大空襲で、新しい、もっとも恐ろしい爆撃方法を、採用した。」

 「それは夜間、低空で、目視による爆撃をする方法で、無数の焼夷弾が使用された。この戦術の変化には、軍事施設だけでなく、地域一帯への攻撃が加えられた。日本の軍需生産の多くが、家内工業に頼っているというのが、その理由だった。」

 「無差別絨毯爆撃の意図は、これで、まったく完璧なものとなる。明らかに、地域一帯の一般市民に対しての、残虐な皆殺し爆撃が、この夜の米軍の主目的だったことが、理解できよう。」

 死者8万3千人、負傷者4万9百人ですから、同時多発テロの死者3千人とは、比べものにならない数字です。早乙女氏は、ここまで詳細に、米国の非道な爆撃を述べていながら、結論は、左翼作家らしいお目出度い言葉になります。

 「戦争は、こんなにも無残である。もう二度と、戦争をしてはならない。戦争の被害者は、常に社会の弱者である。老人や女性や、子供たちだ。」

 「無謀な戦争をした、軍隊はいらない。負ける戦争へと、国を破滅させた政治家も、許してはならない。」・・・正確には覚えていませんが、爆撃をしたアメリカを批判せず、日本の政府と軍隊を否定していました。

 今の若者たちが東京大空襲に関し、米国による、この世界最大の非戦闘員爆撃の真相を知れば、昭和20年3月10日という日が忘れてならない日となるはずです。米国人が言う「パールハーバーを忘れるな。」と同じく、日本人には怒りの日です。今更そうする必要はありませんが、子や孫たちのために、事実は知っておかなくてなりません。

  早乙女氏と山本氏の共通点は、「東京裁判史観」です。「日本だけが悪かった。」「日本人だけが間違っていた。」とする、「敗戦思考」です。敗戦後の混乱時なら、こういう思考に惑わされたとしても、今後の私たちは、卑屈な思い込みのまま、生きてはなりません。

 早乙女氏の著作は、昭和46年の出版なので、まだ我慢できるとしても、平成15年にもなり、こうした著書を出すとすれば、山本氏はやはり「駆除すべき害虫」の一人でしょう。

  わずか29ページでの書評ですが、これからどうなりますことやら。

コメント (4)
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