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ねこ庭の独り言

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アメリカの正義に惑わされるな - 8 ( 世間の息子たち )

2018-11-13 19:37:34 | 徒然の記

 山本裕司氏著『アメリカの正義に惑わされるな』を、読み終えました。

 この本は、アメリカが行った、陰謀、殺戮、戦争の告発書でした。7回のシリーズで紹介したのは、ごく一部に過ぎません。省略した事件は、原爆投下、下山事件、三鷹事件、松川事件で、戦争については、朝鮮戦争、ベトナム戦争、バレスチナ戦争、アフガン戦争、イラン・イラク戦争、コソボ戦争などです。

 アメリカの経済的謀略には、プラザ合意、経済摩擦があり、狙い撃ちにされたのは日本でした。世界第二の経済大国と有頂天になっていた日本が、バブル崩壊により、「失われた20年」と言われる不況に突入します。

 一連の事実を詳しく知りますと、元外務官僚だった馬渕睦夫氏が、世界の支配者はアメリカのウォール街だと語る意味が理解できます。スケールの大きさと、内容の陰湿さのせいで陰謀論として語られるため、多くの人が眉をひそめます。常識の世界に生きる庶民には、聞きたくないゴシップと思えるからです。

 「清く、正しく、美しく、」という言葉に縁遠い私でも、本を読むのはいささか苦痛でした。しかし読後の今でも、氏の列挙した事実が、全て虚構や捏造とは言い切れないと思っています。ここに私が付け加えるとしたら、「山本さん、そんな話は、アメリカだけのものではないでしょう。」「イギリスも、ドイツも、フランスも、ロシアにも中国にも、ついでに言えば日本にも。」・・と、そんな言葉です。

 アメリカについて述べるから、アメリカだけが極悪の国になりますが、世界の国を、一つずつ憎しみの目で眺め、批判していけば、ろくな国はないはずです。しかし、別の目で見れば同じ国が、「正義の国」に変わります。息子たちに言えるとしたら、「正義の物差しは、一つではない。」「国の数だけ、民族の数だけある。」、という事実です。

 何時になれば、息子たちが私の言葉に気づいてくれるのか、本気で向き合ってくれるのか、今の私には分かりません。息子たちに言う言葉は、何時も同じです。

 「日本だけが悪かった。」「日本だけが、間違った戦争をした。」と、こんな東京裁判の判決に、何時までも縛られることはない。戦勝国の彼らが勝利に奢り、彼らの「物差し」で出した判決に過ぎない。

 私は戦後の日本人と、同世代の人間に期待する気持ちが薄れつつあります。政治家や学者や、マスコミの人間たちを見ていますと、本気で国を思う人間の少なさに、呆れてしまいます。何よりの証拠が、元毎日新聞の社会部部長だった、この山本氏ではないでしょうか。

 ここまでアメリカの悪辣さと横暴さを暴露し、犠牲となった中東諸国や社会主義国への同情を隠さないのに、自分の国である日本については何も語りません。国家の存続条件は、軍事力と経済力だと断言しながら、自国を防衛する軍隊の持てない日本については一言も言及しません。

 弱小国ながら、世界最強のアメリカを相手に屈せず、勝利したベトナム国民の矜持は賞賛しても、大東亜戦争で世界を相手に死力を尽くした日本人を理解する言葉は、どこにもありません。戦後の日本には、どこの国の人間なのか分からない、自己否定の愚か者たちがのさばり過ぎました。結局はこの本も、「日本人をダメにする悪書」でしかありませんでした。

  世間の息子と同じように、私の息子たちも、生きている父親の言葉には、耳を傾けません。息子は親の意見を聞き流し、本気で耳を傾けないというのが世の定めです。

 歴史が繰り返すのは、国だけではありません。個人の家庭でも、歴史は繰り返します。「子は、親の背を見て育つ。」と、昔の人は言いました。自分の父の話を上の空で聞き、大して孝行もしなかった私ですから、息子たちが同じことをしても、不思議には思いません。

 父が死んだあとで、父の折々の言葉を思い出し、そっと涙ぐみます。出雲の叔父が亡くなったときもそうでしたが、生きている間、私は叔父を、どちらかと言えば、軽視しておりました。

 それこそ「田舎のどん百姓」と思い、本気で会話したことがありませんでした。遺品の蔵書を叔母から貰い、自分の机で読んだとき、初めて叔父の偉さが分かりました。父と同様、折々の叔父の笑顔を思い出し、私はそっと涙ぐみます。そして私は、こっそりと考えるのです。私の息子だから、きっとお前たちも父と同じことをするのであろう、と。

コメント (2)
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