有罪の者は獄へ送られますが、長野県教員赤化事件の結末は、呆気ないと言えば呆気ないもので、研究会の他の主要メンバーは、校長の転任命令により他校へ追放されました。
彼らはこの弾圧に屈せず、それぞれが転任先で研究会活動を続けようと誓い合います。「一人一人が大地に撒かれる一粒の種となり、革命運動を広げよう」と、まるで岩波書店の発刊の言葉みたいな約束をしています。
ここで注目しましたのは、警察の一斉検挙を受ける以前の、彼らの慎重な活動方針8項目です。善良な庶民をたぶらかす現在の反日活動家たちの姿と重なるので、紹介せずにおれなくなりました。
1. 児童や父兄から、敬愛される先生になることを心がける。( あんないい先生がどうしてと、警察が生徒に説明しにくくなる。 )
2. 天皇批判と戦争反対については、浮き上がった言動で不敬罪や非国民扱いとされないように心がける。
3. 天皇に対しては教室の内外で批判せず、特に児童に対しては直接話さない。
4. 児童には日本史を科学的に扱い、神話の非科学性を考えさせることにとどめる。
5. 兵士の出征の場合日の丸を手に学童が見守るが、直接反対することを慎み、冷静にする。
6. 平和主義、人道主義の立場から、児童自身に考えさせるようにする。
7. 天皇制と軍国主義との戦いのためには、当面は組織拡大に力を注ぐしかない。
8. 力を蓄え、他の組織との共闘を最大の目標とする。
共産党の活動家たちは歴史的経験を踏まえ、「微笑作戦」「善人作戦」を使います。現在の日本では、似たような作戦で中国共産党や韓国の反日活動家たちまで、潜り込んでいます。よほど本気で警戒しないと、国民は丸め込まれます。
氏の証言の中で、最も注目したのは次の言葉です。
・教労長野支部の犠牲者は転向し、戦争によって打ちひしがれた。
・さらには敗戦・占領という屈辱の歴史をたどり、日本の戦闘的民主勢力は弱体化されていったが、支配階級も敗戦の痛撃を受け治安維持法が廃止された。
・日本の革命を絶望的にしていた、天皇、軍隊、警察は解体・弱体化された。
・だがこの支配階級は、民主勢力の力で倒されたのではない。日本の民主勢力は、自分の力で支配階級を打倒する力は持っていなかった。
・それは、国際反ファッショ戦線の力で倒されたものだった。
・日本の支配階級は、アメリカ軍の占領下で立ち直り始めたのであった。
・夢よもう一度とばかり復活し、天皇、軍隊、警察の力をだんだん蓄えて、支配力を強化した。
同じ事実を眺めても、立場が異なると意見が違います。これは昭和51年、本の出版当時の山田氏の主張ですが、現在に続く、反日左翼勢力の考えにつながっているのだと思います。
朝日新聞の論調で行けば、「軍靴の響きがする」「軍国主義の復活だ」となります。
山田氏を含め、朝日新聞に代表される現在の反日勢力は、愚かとしか言いようがありません。明治・大正以来、彼らの敵は「日本の支配階級」であり、それ以外は見ていません。
戦後70余年が経ち先の大戦を検討すれば、弱肉強食の国際社会の中でいかに日本が翻弄されてきたか。日本の周囲にどれだけ恐ろしい数の敵国がいるのか、分かって良いはずなのに理解しません。
氏の証言の最後の言葉を紹介しますが、「馬鹿に付ける薬はない」という見本です。こんなことばかり言っているから、彼らは「日本の支配階級」と一緒に、「日本の被支配階級」も滅ぼしてしまいます。他国の支配下になれば、日本という国が無くなってしまうという常識が欠落しています。
・一方、日本の民主勢力は団結ということができず、分化・対立はいよいよ深まるばかりで、団結指導にあたる前衛党を見失ってしまった。
昭和51年の時点でも、反日左翼勢力は分化・対立をしていたということです。日本の文化と伝統に合わないマルクス主義は、庶民から見れば馴染めない思想です。天皇陛下を殺したり、外国の力と組んで日本の軍人を消滅させたり、そんな思想は日本に根付く土壌がありません。根なしの浮き草の左翼活動家が、一大勢力になれるはずがないのです。
・戦前『教労』は、新興教育の旗を掲げて、日本プロレタリア革命を展望して、闘って来た。
・そこには、運動を推進する革命的情熱があった。今はなぜか、その情熱が感得できない。そしてそれを指導する、党の姿が見えなくなってしまった。
こんな意見を言うから、氏は共産党を除名されたのでしょうが、なぜそうなったのか。氏への答えは平成3年のソ連崩壊で、やっと目に見えるようになりました。令和3年の現在、社会主義国として存在しているのは、国民弾圧の独裁国家中国と北朝鮮などです。マルクシズムの矛盾と大嘘が世界の人々に晒された現在、彼らこそがこの信仰を捨てる時でしょう。
39人のうちの、やっと二人の証言の紹介が終わりました。時代区分で行けば、「戦中編」「戦後編」が手つかずのままです。どうすれば、息子や孫たちのため、無駄のない適切な紹介ができるのか、一息入れながら考えたいと思います。