『昭和教育史の証言』414ページを、読み終えました。むのたけじ氏以外の、「戦後編」14名の証言を含みます。読後の気持ちは、厳粛で陰鬱なものと、一筋の淡い光があります。14氏に共通する思想を、あげます。
1. 東京裁判史観
2. 白樺派的人道主義
3. 社会改革思想としてのマルクス主義
証言者本人は無意識ですが、14人意見を読み、私が見つけた三思想です。順番にも意味があり、彼らの反日左翼的主張をもたらしている根拠を、影響力の大きなものから並べています。私なりの理解で14人の共通点を解説しますと、次のようになります。
〈 1. 東京裁判史観 〉
・日本のためにと頑張り、歯を食いしばってきたのに日本は戦争に負けた。
・「鬼畜米英」と信じていたのに、連合国によって裁かれむしろ鬼畜だったのは日本だった。
・国民は政府と軍人に騙されてきた。こんな政府と軍人は許せない。
〈 2. 白樺派的人道主義 〉
・日本人は、富国強兵にばかり目を向け、日の当たらない場所にいる弱い者たちを無視してきた。
・部落に住む人々、在日韓国・朝鮮人、障害のある人々がそれだ。
・政府は立身出世主義の教育にばかり力を入れ、社会的弱者に目を向けなかった
・差別に泣く人々に目を向けず、差別を無くそうという努力も、しなかった。
・これは人間平等に反し、人道上からも決して許せない。戦前の教育の間違いだ。
〈 3. 社会改革思想としてのマルクス主義 〉
・マルクス主義こそが、人間平等の社会を作る。
・虐げられた最下層の人間が立ち上がり、全ての不平等を無くすのだ。
・封建的支配階級は消えてしまう。
3つの思想を上げる自分は、もしかするとむの氏のように、3本の毛が足りない猿の分析をしているのかもしれませんが、ともかくも3つの発見をしました。「一筋の淡い光」と表現したのは、2.番目の「白樺派的人道主義」が、どの証人の中にもあった点です。
社会主義者が弱者に光を当て強調するのは、弱者への愛からでなく、国民の憎しみを煽り、社会を騒々しくし、騒乱の種を撒くところに目的があります。証言を読む限りでは騒乱の種を撒くと言うより、白樺派的人道主義の立場から弱者を無くそうとしていました。
武者小路実篤の「新しい村」が失敗したように、証言者の解決策は曖昧な博愛主義で政治の現実策とはなり得ません。その証拠にソ連や中国や北朝鮮の指導者たちの中には、白樺派的人道主義はかけらもありません。
だから「ねこ庭」では、逆にそれを一筋の光と見ました。つまり日本人らしい、曖昧な優しい人道主義です。欠点は、憎しみと敵対主義のマルクス思想と重なって見える部分が多いことです。
〈 3. 社会改革思想としてのマルクス主義 〉
最後にきたのが、マルクス主義です。証言者の意見を読んでも、さほどの深さはなく、お手本通りの定型的な理解です。15人全部の証言を読んだ結果として、分かったことを述べます。
・この本に限って言えば、むの氏は、30数名の証言者中最低の人物です。
前回の結論と同じですが、氏の主張の中にだけ、「 2.の白樺派的人道主義」がありませんでした。白樺派的思考があると、他人ばかりを責めるのでなく、無力だったり、優柔不断だったりする自分を反省します。感傷的とか、甘いと言う批判もあるのですが、自分も傷つきながら他を批判すると言う姿勢は評価に値します。
むの氏は愛国記事を書いた記者から、反日左翼記事の記者へ転向したのですから、古巣の「朝日新聞」と何も変わりません。自分は傷ついていませんし、彼らが取り上げる弱者に関する記事は、社会に騒乱の種を撒く目的だけで、心に響くものが何もありません。
これが「戦後編」のまとめで、同時に本全体の評価です。残る14人の証言については、誰を取り上げどのように紹介すれば良いのか。思案しています。全員取り上げると冗長ですし、かと言ってどの証言にも、割愛し難い「真摯さ」があります。
ここで一息入れて、頭の整理をしようと思います。