ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

『 日本が軍事大国になる日 』 - 3 ( 果たして日本は、独立国なのか )

2022-02-02 23:01:23 | 徒然の記

 平成4年の、中国共産党中央軍事委員会の記事録報道と、平成5年のAPECでの江沢民氏の発言を受け、台湾は軍備の近代化と装備の充実を、急がなければならなくなりました。

 「台湾は、1993年から1997年の5年間に、GNPの5.19パーセントを、」「国防費として、コンスタントに支出することを決定した。」

 日本の防衛費は、GNPの1%を越えるか超えないかで大議論になっていますが、台湾では事情が違いました。

 「特に海軍力と空軍力の近代化に、大きな比重が置かれ、」「海軍近代化計画は、おそらく世界最大規模と呼べるものである。」

 台湾海軍の保有する水上艦、潜水艦、駆逐艦のほとんどは、第二次世界大戦中に建造されたもので、これらは米国から貸与されたり、購入したりしたものだと言います。何度かの改造をしているが、部品の供給にも限度がありました。

 台湾海軍は、旧式艦船に、イタリア製の76ミリ砲、スエーデン製の40ミリ機関砲、イスラエル製の艦対艦ミサイルなどを搭載しています。軍事評論家である氏の説明は詳細ですが、私は素人なので、戦艦や武器の名称や性能より、台湾の危機感の大きさを知ることの方に重点を置きます。

 「つまり台湾は、当時、ともかく入手できる最新鋭兵器システムを、」「組み合わせて、空・海軍を作り上げたのである。」

 台湾政府は、1945 ( 昭和20 ) 年に共産党政権に追われ、台湾へ渡って以来、「大陸への武力反攻」を国是としてきました。

 「この国是の現実性は、ほとんどない。」「今後よほど、大陸中国の内部が揺れ、分裂するならともかく、」「たかだか45万の軍隊で、300万の中国軍と、」「あの広大な土地に侵攻するのは、無謀である。」

 氏の言う通り、国是とは言いながら「大陸への武力反攻」は、現実的でありません。だから台湾政府は、軍の近代化計画で陸軍を重視せず、海軍と空軍の近代化を急ぎ、中国軍の海上侵攻から国を守ることに、専念しています。

 同じように中国の脅威を受け、恫喝されている日本と台湾の違いが、どこにあるのか。あるいは、どこに共通点があるのか・・・氏の著書を読みつつ、私の頭にあるのはこの一点です。

 防衛省の『防衛白書』は毎年発行され、ほとんどの情報が公開されていますから、日本の防衛力を知ることはできます。しかし台湾との比較、中国との比較、韓国や北朝鮮、他のアジア諸国のとの比較ができなければ、自分の役には立ちません。

 氏の説明を受けた今の時点で、分かった事実を思いつくまま、台湾との比較で列挙してみます。

 1. 台湾は自国を防衛する軍を保有しているが、日本は軍を保有せず、「専守防衛」の無力な自衛隊を持っている。

 2. 台湾の武器購入国のメインはアメリカであるが、他にイタリア、スエーデン、イスラエル、フランス、オランダ、ドイツなど多数の国がある。

 3. 日本の武器購入相手国は、アメリカ以外の国を聞いたことがない。

 4. 台湾は、戦艦、潜水艦、戦闘機を、他国から購入すると同時に、国内生産にも力を入れている。

 5. 日本が、これらの国内生産をしていると言う話を、聞いたことがない。戦前は国内で製造していたが、民間航空機でさえ、米国の牽制で自由に作れないと聞く。

  防衛省のホームページによりますと、日本にある米軍基地は、青森県の三沢基地から沖縄まで、2020年1月現在で、全国に78ヶ所あります。世界第2位の経済大国と得意になっていても、台湾に、いったい幾つの米軍基地があるのでしょう。

 飛行機の航行は、日本では通常、国土交通省の航空管制官が行いますが、在日アメリカ軍の飛行場やその周辺では、アメリカ軍が行っています。米軍の空港がある上空は、宇宙の果てまで米軍が管理し、日本の自由になりませんが、台湾にはそのような主権制限 (侵害) があるのでしょうか。

 氏の本を読みながら、日本と台湾を比較しますと、敗戦後の日本の置かれた奇妙な状況が、見えてきます。学者も政治家も評論家も、こうしたことについて、国民に説明しませんが、このことからしておかしな話です。

 江畑氏も、日本の奇妙な状況を率直に述べていませんが、それでも、精一杯の努力で語っています。

 「日本はこれまで、あまりに軍事面を、」「無視してきたのではなかろうか。」「日本は今後、現実を直視せねばならないだろう。」

 私が疑問点とすることについて、江畑氏が率直に語れる環境が日本にあるのか、あったのか、それを考えますと、江畑氏の婉曲さを批判する気になれません。

 政府はこれまで米軍の駐留費負担を、「思いやり予算」という曖昧な言葉で国民に説明してきました。昨年の12月の日米合意で、「同盟強化予算」と呼ぶことに変更しましたが、こんなおかしな話が、台湾にはあるのでしょうか。

 独立した国が、他国の軍隊を全国のあちこちに駐留させ、経費の負担をすると言う話は、普通のことなのでしょうか。自分の国を自分で守るのなら、外国の基地は不要でしょうし、軍の装備も、自分で決めるのが独立国です。アジアの発展途上国などと、日本は他国に援助資金を提供していますが、これらの国々は自分で自分の国の軍事を決めています。

 何もかもアメリカ頼りで、アメリカに任せ、制空権もあちこちで分断されている日本が、どうして独立国と言えるのでしょう。氏の本を読んでいると、考えさせられます。

 共産党を中心とする反日の野党は、「米軍基地の撤去」を叫んでいますが、私とは違った立場からの意見なので、賛成するわけにいきません。

 スペースがなくなりましたので、一区切りとしますが、次回もまた台湾との比較で、氏の著作を読んでいきたいと思います。そうしますと、どうしても同じ疑問が頭に浮かびます。

 「日本は、果たして国際社会で言う独立国なのか。」

コメント (2)
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