ねこ庭の独り言

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『 日本が軍事大国になる日 』 - 10 ( 領海法公布後の、南シナ海 )

2022-02-10 13:11:44 | 徒然の記

 東シナ海と南シナ海の説明に、氏はタイトルの表示を変えています。

  東シナ海 ・・ 「不審船による襲撃事件が頻発する東シナ海」

  南シナ海 ・・ 「南シナ海の領有権問題」

 同じような中国周辺の海を説明するのに、なぜタイトルが違うのか。氏は特に説明していませんが、読んだ後で分かりました。

 現在91ページですが、氏の著作が教えてくれる事実は、驚くことばかりです。マスコミの報道では、南シナ海の岩礁を埋め立て、飛行場を建設しているのは、中国だけのように思えます。しかし、フィリピンもベトナムもマレーシアも、領有権を主張する島や岩礁に、灯台を立てたり、ホテルを作ったりしていました。

 領土を守るためなら、大国の中国にも、各国は負けずに対抗しています。最初から軍が出動するため、「不審船」などの出る幕がありません。「不審船による襲撃事件」の文字が、タイトルから消える訳です。 発展途上国への援助と言いながら、日本は中国だけでなく、東アジアの国々へもODA援助をしています。インドネシアについて言えば、日本が最大の援助国だそうです。経済面から見ると、これらの国々は発展途上国に見えるのかもしれませんが、国際社会を生き抜く精神面から見ますと、日本の方が「発展途上国」であることを教えられます。

 岩礁の埋め立て争いは、最近の話だと思っていましたが、64年前の1956 ( 昭和31 ) 年から、各国が、衝突を繰り返していました。マスコミが、南シナ海での軍事衝突を報道しない理由も、氏のおかげで分かりました。自国より大きな中国に立ち向かう、東アジアの国々の報道をすると、日本の不甲斐ない姿が国民に晒されます。

 「経済大国に相応しい、日本のODAが、アジアの繁栄と安定に貢献しています。」「日本のリーダーシップと、平和外交が、多くの人々に理解されています。」

 政府と外務省がマスコミを使い、平和憲法のもとで、日本がいかに国際貢献をしているかと、国内向けの報道をしていますが、氏の著作が、この大嘘を国民に明らかにします。反日野党や学者のように、過激な言葉で攻撃しませんが、事実を述べることで、氏は「日本の異常さ」を教えてくれます。

 「尖閣諸島や竹島以上に、多くの国が領有権を主張し、」「しかも尖閣諸島以上に、」「豊富な海底資源が期待でき、その上戦略的に重要な位置にあるため、」「紛争発生がきわめて憂慮されているのが、南沙諸島である。」

 66ページの書き出しの叙述です。なぜ各国が激しい対立を繰り返すのかを、簡潔な言葉で説明しています。

 「台湾より南、マラッカ海峡に至る南シナ海には、」「東沙、西沙、中沙、南沙の4つの群島があり、合計170以上の島がある。」

 「これらの島は、歴史的、また民族、経済的に、」「周辺諸国と密接な関係があり、中国、台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイが領有権を主張している。」

 「漁業の適所であるだけでなく、海底油田、天然ガスがあることが確実で、」「ベトナム沖などはかなりの範囲で、米国が調査・確認している。」

 「しかも南シナ海は世界の経済にとって、きわめて重要な海上交通路で、」「年間5万隻の船舶が通過する。」「その重要性は、世界的視野からはおそらく、」「東シナ海を上回るであろう。」

 氏は南シナ海の実情を、東シナ海との比較で語りますが、もう一つ大事な比較を忘れてはいけません。各国と日本の対応の比較・・・これを常に頭に入れておくと、いっそう理解が深まります。

 「軍事上からは、インド洋と太平洋を結ぶ航路として、」「自由航行の保証が、米国にとっても重要となっている。」「中でも最重要な場所が、190以上の島と岩礁からなる南沙諸島である。」

 軍事面の最重要地点だから、関係国が領土を主張し、一歩も譲りません。名称についても、各国がつけた次の名前を変更しません。

  中国名・・南沙諸島        マレーシア名・・スプラトリー諸島

  ベトナム名・・チュオンサ諸島   フィリピン・・カラヤン群島

 南沙諸島に関する歴史的流れを、氏の説明に添い、箇条書きで紹介します。

  ・1938 ( 昭和13 ) 年、フランス軍が西沙諸島を占領した。

  ・同年日本が南沙諸島を占領し、台湾に編入し日本領とした。( 日本名 : 新南群島 )

  ・大東亜戦争終了後日本の占領が終わり、フランスも領有権を放棄した。

  ・領有権の継承が特定されなかったため、周辺国紛争の原因となっている。

 そうしてみますと、北方領土も尖閣諸島も、戦後の混乱が残した、紛争の種の一つだったことが分かります。注目すべきなのは、周辺国の行動です。

  ・1958 ( 昭和33 ) 年、フイリピン海軍が、南沙諸島の中に無人島9つを発見した。

  ・カラヤン諸島と命名し、フィリピン領と宣言した。

  ・同国は、バガサ島に航空基地を設営し、1000名の海兵隊を常駐させた。

  ・1974 ( 昭和49 ) 年、中国が西沙諸島をめぐり、ベトナム軍と戦う。

  ・1975 ( 昭和50 ) 年、南ベトナム崩壊に乗じ、中国が西沙諸島全域と南沙諸島の一部を占領した。

  ・中国はここに、港湾、航空基地、通信施設の建設をし、領有の既成事実化を図る。

  ・1980 ( 昭和55 ) 年、マレーシアが「200カイリ経済専管水域」に基づき、東沙諸島の部分的領有を主張した。

  ・海軍の監視所を設置し、マレーシア海軍がフィリピン漁船の臨検をした。

  ・フィリピンの抗議を受け、マレーシアが撤退し、その後にフィリピンが海兵隊を常駐させた。

 日本のテレビや新聞の報道を見ていますと、大国の中国が武力を背景に、周辺の弱い国々を無視し、わがまま放題しているように見えます。氏の説明を読み、南シナ海では、ベトナムもフィリピンも、マレーシアも、似たようなことをしていると分かりました。中国だけが悪者でなく、国益のため、似たもの同士が争っていただけの話です。

 比較して考えますと、争っている周辺国には、「独立国」の姿があり、何もしない日本の方が、「おかしな国」ということに見えてきます。

 スペースの都合で一区切りとしますが、「南沙諸島」での紛争について、次回も氏の解説を紹介します。ここに、現在の日本の問題点が集約されていると、そう感じるのは私だけでしょうか。

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