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ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

『 日本が軍事大国になる日 』 - 4 ( 台湾の潜水艦保有計画 )

2022-02-03 20:34:58 | 徒然の記

 「難航している潜水艦保有計画」と言うタイトルで、台湾海軍の近代化計画が説明されています。台湾をめぐる各国の動きには、日本との比較で考えますと、さらに興味深いものがあります。24ページの叙述です。

 「台湾海軍の近代化は、着々と進行しつつあるが、一つ大きな問題がある。」「それは潜水艦の調達が、ままならないことである。」「いかに旧式のガラクタとはいえ、中国海軍が持つ100隻以上の潜水艦は、」「大きな脅威であり、これに対抗するには現有の戦力では不十分である。」

 台湾海軍が保有する潜水艦は、米国から貸与された旧式艦が二隻しかなかったと言います。米軍は魚雷発射管を封鎖して貸与しましたが、台湾は、その封鎖を解除し、イタリア製の魚雷発射装置をつけました。

 氏の説明によりますと、それでもこの潜水艦は潜航能力が極めて限られ、実践的価値がほとんどなかったと言います。これ以後の流れは、文章でなく箇条書きにします。

 ・1981 ( 昭和56 ) 年、台湾はオランダに潜水艦を発注・・ ( 世界で最も優れた設計といわれる)

 ・台湾はさらに、同型艦を4隻追加発注。

 ・1992 ( 平成4 ) 年、オランダ政府がこの4隻の輸出契約の中止を決定

    ・オランダ政府は、1984( 昭和59 ) 年に、中国と結んだ協定に基づく処置と説明

   協定の内容は、「オランダは台湾に兵器を輸出しない」というもの

 ・これを知り、フランスが台湾へ売り込みをかけた。原子力潜水艦1隻の売却を打診 ( フランスはすでに台湾に対し、戦闘機50機の輸出を決定済み。)

 ・1992 ( 平成4 ) 年の11月になり、台湾がフランスの申し出を断った

 潜水艦に関する流れはまだ続きますが、オランダとフランスの動きについて、説明が必要なので、氏の意見を紹介します。

 まずオランダですが、この時オランダ政府は、中国へジェット旅客機7機の輸出契約を結び、同時に今後の両国の貿易促進合意も取り交わしていました。

 「旅客機は2億5千万ドル、潜水艦の契約額は18億ドル相当と言われているから、」「オランダはかなり損をしたとみられるものの、長期的には、」「中国との貿易促進の方が、得策と判断したのであろう。」

 これが、オランダ政府の動きへの説明です。台湾が、フランスの原子力潜水艦売却打診を断った理由にも、興味深い内情があります。

 「原子力潜水艦を、自国の海軍以外に引き渡したのは、」「これまでに、ソ連がインドに行った例だけである。」「ソ連は原子力潜水艦1隻を、インドにリースしたが、」「一年余で、返却されている。」

 この艦は、インドが自力で原潜を建造するにあたり、技術的参考と乗員養成を目的としたもので、当初からリース契約され、売却ではありませんでした。秘密兵器の最先端を行く原子力潜水艦の売却は、ほとんどあり得ない話だということが、氏の説明で分かりました。

 興味深いと言いましたのは、売却を打診したフランスと、これを断った台湾側の内部事情です。

 〈 フランス側の事情 〉

  ・北京の意向を無視し、すでに戦闘機60機の輸出を決定しており、中国よりも台湾を選択した。

  ・国防費削減のため、原子力潜水艦戦力の大幅縮小を余儀なくされていた。

 〈 台湾側の事情 〉

  ・原子力潜水艦の導入に際し、必要とされるインフラ整備には多額の費用がかかるが、米・英の原子力潜水艦に比較すると、フランス製は性能が劣る。

  ・炉心寿命比較・・フランス製は約5年、米・英製は10~12年

  ・炉心交換のため、フランスに依頼せねばならなくなり、作戦的にも、経済的にもマイナスが多いと判断した。

 ここから再び、「潜水艦に関する流れ」を続けます。

 ・1991 ( 平成3 ) 年、ドイツが潜水艦の売り込みをし、台湾が10隻の購入を打診した。

 ・1993 ( 平成5 ) 年、ドイツ政府が、台湾への輸出不許可を決定。

  ( 表向きは、政治的な緊張状態にある地域への武器輸出禁止は、政府方針であるという理由。 )  ( 内実は、将来の中国市場を見越しての決定。 )

  ・米国のリットン・インガルス社が、ドイツ潜水艦の建造権を取得し、これを台湾へ売却すると提案。・・台湾が拒否

 ・1992 ( 平成4 ) 年、ロシアが台湾への売り込みをしてきた。

 ・ロシアは売れさえすれば、どこの国でも構わないという姿勢だが、台湾は、米欧と全く異なる設計思想の兵器を、簡単に購入しない。

 ・1993 ( 平成5 ) 年、1年前に輸出禁止を決定したオランダが、再び原子力潜水艦の売り込みをしてきた。

 どうしてこのようなことになるのかにつき、氏の説明があります。

 「オランダ政府は、先の台湾向け潜水艦契約の破棄に関し、」「議会に対し、1992年6月までに、中国との貿易額が増加しなかった場合は、」「台湾への潜水艦輸出契約を再検討するとの、条件をつけさせられていた。」

 「そして事態は、議会の心配通りになり、オランダ政府は、」「台湾への潜水艦輸出契約を、検討し直さなければならなくなった。」

 私が注目したのは、自国防衛のための兵器購入について、どの国も間髪をおかず、自国優先で考えているという事実です。信義や誠意など入り込む余地のない、軍事の世界が見えます。さらに、続く氏の説明は、私の知らない事実を教えてくれます。

 「1993 ( 平成5 ) 年1月末に、オランダが台湾に対し、潜水艦4隻の、」「台湾におけるライセンス建造を、提案していると伝えられた。」「オランダのRDM社は、台湾国内での建造に必要な技術も提供するから、」「これが実現すると台湾は、将来自力で原子力潜水艦を建造する、」「基礎的技術を獲得することになる。」「このことは結局、将来的に、台湾から第三世界への潜水艦輸出を、」「助けることになるかもしれない。」

 「それは中国のみならず、アジア、太平洋諸国や、」「アメリカの心配を喚起することになるだろう。」

 今では国として認められず、国連に加盟できない台湾でさえ、一つの国から購入すれば、その国の支配下に置かれると、複数の国から兵器を調達しています。自分の国を守るための決断と実行を、政治家たちが進めています。アメリカだけに頼り、アメリカの武器だけを調達している日本は、世界の常識から外れているのではないでしょうか。

  「日本は、果たして国際社会で言う独立国なのか。」

 残念ながら、今回も私の中に残る大きな疑問です。

コメント (2)
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