アメリカからのF-16戦闘機150機の輸出に対し、中国が激しい反応をしたことにつき、江畑氏が興味深い説明をします。
「アメリカのF-16売却決定よりも、北京にとって衝撃的であったのは、」「パリの、ミラージュ売却決定であったろう。」「1992 ( 平成4 ) 年12月、中国政府はフランスに対し、」「広東省広州の仏総領事館を、閉鎖するように通告した。」「さらに広州市の地下鉄建設計画に、フランス企業の参入を排除する決定を、広州市が下した。」
今更驚く話でありませんが、軍事と政治と経済が一体となり、国際社会を動かしている事実を、具体的に教えられます。テーブルを囲み話し合いをしていると見えても、テーブルの下の足は、互いを蹴り合っています。
「言われたら言い返す、やられたらやり返す」と、各国が応酬を繰り返し、黙って引き下がることはしません。戦前の日本も、独立国としての位置を有し、国際社会で行動してきましたが、敗戦後は、「言われたら謝り、やられたら引っ込み、」「金ばかりむしり取られる国」となってしまいました。
「言われたら言い返す、やられたらやり返す」・・・そうしなくては、国際社会を生き抜けません。「無理難題を仕掛けられても、我慢するのが大人の対応だ。」と、もっともらしい意見が、現在の日本を支配しています。氏の著作を読みますと、「戦後の日本の異常さ」を、警告されます。「国を守る」と言うのは、どう言うことなのか、フランスの動きが参考になります。
広州の地下鉄建設計画から締め出されたフランスは、ガス開発・肥料工場建設などを目指す上海の大型プロジェクトへの、6億4千万フランの財政支援を即座に決め、中国を喜ばせています。
フランス製ヘリコプターのライセンス生産の件もあり、中国は、フランスと完全に手を切るわけにいかない状況があります。
「フランスにしてみれば、今は多少 2国間の関係が悪くなっても、」「北京は必ず、フランスに膝を屈するであろうと、」「そんな見通しがあった上での、台湾志向であると、一般にみなされている。」
氏はさらに、フランスの立場を遠慮なく語ります。
「金がない中国に、いつまでも色目を使っているよりは、」「高速新幹線建設や原子力発電所建設で、今後大きな経済利益が期待できる台湾を、」「無視しない方が得策である、との計算がはじかれたことも疑いがない。」
その金がない中国に、ODA ( 政府開発援助 ) の名目で、永年多額の支援をしてきたのは日本です。日本を目の敵にする教育を国民に施し、連日のように尖閣の領海を侵犯する現在の中国を、多くの日本人は苦々しい思いで見ています。
政府開発援助とは、発展途上国の経済発展や福祉の向上のため、先進工業国の政府及び政府機関が、発展途上国に対して行う援助や出資のことですが、現在の中国のいったいどこが「発展途上国」なのでしょう。最大の支援をした日本に対し、中国は何の感謝もしていませんし、逆に「正しい歴史認識をせよ。」と説教をしています。
今もいるのだろうと思いますが、当時の外務省には「チャイナスクール」と呼ばれる、謝罪・媚中官僚の集団が力を持っていました。
「先の戦争で、日本は中国、朝鮮を侵略し、多大な被害を与えたから、」「謝罪するだけでなく、賠償もし続けなければならない。」
言うまでもなく、小和田次官による「ハンディキャップ・外交論」から生まれた、中国ODAへの基本方針です。平成30年の外務省の広報資料を読むと、日本が、どれほどのお人好しの国となっていたのかが、理解できます。「ねこ庭」を訪問される方々に、読んでもらいたいと思いますので、資料の一部を紹介します。
「1979年以降、中国に対するODAは、中国の改革・開放政策の維持・促進に貢献すると同時に、」「日中関係の主要な柱の一つとして、これを下支えする強固な基盤を形成してきました。」
「経済インフラ整備支援等を通じて、中国経済が安定的に発展してきたことは、」「アジア太平洋地域の安定にも貢献し、ひいては日本企業の、」「中国における投資環境の改善や、日中の民間経済関係の進展にも、大きく寄与しました。」「中国側も様々な機会に、日本の対中国ODAに対して、評価と感謝の意を表明してきています。」
「対中ODAは、1979 ( 昭和54 )年に開始され、」「2016 ( 平成28 )年度までに、有償資金協力(円借款)を約3兆3,165億円、」「無償資金協力を1,576億円、技術協力を1,845億円、」「総額約3兆円以上のODAを、実施してきました。」
「過去のODA事業では、中国に道路や空港、発電所といった大型経済インフラや、」「医療・環境分野のインフラ整備のため、大きなプロジェクトを実施し、」「現在の中国の経済成長が実現する上で、大きな役割を果たしています。」
フランス、オランダ、ドイツ、ロシアなどの諸外国の姿勢と比較し、日本の外務省の能天気さが目立ちます。
「日本は、中国を選ぶか、アメリカを選ぶか、はっきりさせなくてならない。」「アメリカを選んだ場合は、日本の未来はないだろう。」
2、3年前、解放軍の将軍が日本を威嚇しましたが、外務省の言う「ODAへの感謝と評価」は、どこにあるのでしょう。むしろ彼らは日本のことを、「自動現金支払い機」と冷笑しています。戦後日本の外務省は、「外務省でなく、害務省だ。」と言う意見もあります。拉致家族問題への取り組み姿勢を見るにつけ、私も同感しますので、時々「害務省」と言う言葉を使わせてもらっています。
まだやっと38ページですが、次回は55ページの第二章「東シナ海と南シナ海」へ進みます。ここでもまた、アジア諸国と日本を比較しながら読みますと、新しい事実が発見できます。楽しい発見ではありませんが、次回も、どうぞ「ねこ庭」へお越しください。緑の消えた、冬枯れの、寒々とした「ねこ庭」です。