「台湾の戦闘機保有計画」の続きです。台湾へ、アメリカからF-16戦闘機150機の輸出が報道されても、東南アジア諸国が、なぜ大きな懸念や反対の意思表示をしなかったのか。これに関する、江畑氏の解説を紹介します。
「最大の理由は、台湾が大量の戦闘機を保有することで、」「中国が、ロシアから輸入した最新鋭機、Su27戦闘機、Su33、Su35などを、」「台湾海峡方面に、張り付けておかねばならなくなった。」
「これで中国は、航空戦力による、南沙諸島やベトナム方面への強い圧力が、かけられなくなる。」「台湾もまた、中国の戦闘機を無視し、」「南シナ海方面に、思考するわけにいかない。」
「つまり、東南アジアのほとんどの国にしてみれば、」「台湾が最新鋭の戦闘機を保有することは、むしろ歓迎すべきことになる。」
東南アジアの国々から見れば、中国も台湾も軍事大国ですから、両国が動けなくなれば、その間だけでも自国の領域が安全になる・・と言う理由です。さらに氏は、これに関するアメリカの戦略についても、説明します。スペース節約のため、箇条書きにします。
・アメリカの戦闘機や軍艦の引き渡しは、一つには、天安門事件以後の北京政府に対し、圧力をかけることにある。
・ロシアから、近代的新鋭戦闘機を導入した中国に対し、台湾へ米国製造の近代的戦闘機を提供することで、台湾海峡の軍事バランスを取る。
・これにより、東シナ海から南シナ海方面の、軍事的安定を保持する。
しかしF-16戦闘機と言っても、旧型の戦闘機に不満を持つ台湾は、多目的機能を持つフランスのミラージュ2000も購入しています。江畑氏は、台湾の意図を次のように説明します。
「実際問題として、ミラージュは空対空戦闘だけでなく、」「敵地・対艦攻撃能力を有する多目的型である。」「もし今後、ニクソンの中国訪問時のように、」「ワシントンと北京の関係が改善され、再び台湾が同じ目に遭う場合を考えれば、」「アメリカととフランスの2国から武器調達をするのは、国家安全のため覚悟せねばならない。」
「これによって生ずる、部品、整備、教育などの経済上の不都合も、あえて覚悟せねばならない。」
台湾と日本を比較して考えるとき、果たして日本には、台湾のような決断のできる政治家がいるのだろうか、と言う疑問です。国の安全を考えた場合、一国に全てを頼ると言うのは危険だと、兵器の調達先を分散しておく覚悟は、簡単にできるものではありません。
日本政府がもし実行しようとし、イギリス、フランス、ドイツなどと交渉を始めたら、どのようなことになるのか。考えるまでもありません。アメリカが日本占領時代に作り上げ、日本に残してきた「トロイの木馬」が、一斉に騒ぎ立てます。
「反日左翼学者」「反日左翼マスコミ」「反日左翼政治家(自民党も含む)」たちが、手を繋いで合唱します。その最大の根拠となるのは、最強の「トロイの木馬」である「日本国憲法」です。
「これによって生ずる、部品、整備、教育などの経済上の不都合も、あえて覚悟せねばならない。」
台湾の政府が下したような覚悟は、日本では、どこからも生じません。「トロイの木馬」の大合唱に、ほとんどの国民も騙されてしまいます。
話が横道へ逸れましたので、氏の著作へ戻ります。
「米政府は、台湾への戦闘機輸出の承認前に、」「中国政府に通告したとされるが、それで北京の怒りが収まるものではない。」「当然のことながら、北京は激烈な反応を示した。」
中国の銭其琛外相が、次のように述べています。
・1982年の中米コミュニケに違反する決定である。
・アメリカの対中政策変更につながる、重大な事態だ。
中国外務省は、北京駐在のアメリカ大使を呼び、最も強い抗議を行ないました。
・この決定は、中国の内政に乱暴に干渉し、中米関係を著しく傷つけた。
・中国の、平和統一事業を破壊する行為だ。
・米国政府がこの決定を取り消すまで、国連安保理事国の5ヶ国にとどまるのは難しい。
・アメリカがあくまで自らの方針を貫くなら、中国政府とその人民は強い対応をとるほかない。
・その結果については、すべて米政府が責任を負わねばならない。
これを読みますと、18年前から、中国の脅し文句が変わっていないことを知ります。北朝鮮や韓国も、中国の口調を真似、日本を脅していると言うことも、分かります。
「だからと言って、中国が具体的に、何ができるものではないが。」と、江畑氏が説明していますが、確かにアメリカは、言われても平気です。しかし日本はどうでしょう。
同じことを言われると、即座に反応する人間がたくさんいます。「トロイの木馬」だけでなく、中国で金儲けをしようと意気込んでいる、経済界があります。彼らは、自民党のスポンサーですから、早速政治家が中国に謝ったり、言い訳を並べたりします。
台湾と比較しながら、読みますと、さまざまなことが分かりますが、戦闘機購入の話はまだ続きますので、一休みし、次回にいたします。