ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

『 ジャカルタ日本人学校の日々 』 - 4 ( 全生徒の作文 )

2020-12-21 09:34:52 | 徒然の記

 今回は、77ページから、生徒たちが書いた作文を紹介いたします。石井氏の説明が、現地の先生たちの想いを伝えています。

 「文集『みなみ十字星』は、まさに南十字星の輝きに比するような、実績と言える。」「学校創立以来20年余の間、全校生徒の作文を、一年も欠かすことなく綴ってきている。」「1970 (  昭和45 ) の創刊号は、ガリ版刷りで、」「手にすると、当時の教師と子供の熱く燃えた心意気が、伝わってくる。」

 「当時の教師たちは、今もなお続刊されていることなど、」「想像もしていなかっただろうが、これを引き継いだ多くの教師が、」「価値のある足跡、としていったのである。」

 石井校長は、文集の価値を理解し、赴任以来、生徒たちの作文の全てに目を通し、発行に協力します。毎日の児童への挨拶の中でも、「教育の国際化」について話をします。フライパンのテフロン加工では、生徒たちに伝わらないので、「体はインドネシア、心は日本」という言葉で説明し、もっとインドネシアを知り、友達を作りなさいと語りかけます。

 たくさん引用してありますが、その中から、小学部 1年生、小学部 3年生、中学部 3年生、3人の生徒の作文を紹介します。

  1. 「いんどねしあについて、おもうこと」・・小学部 1年生

  2. 「体はインドネシア、心は日本」   ・・小学部 3年生

  3. 「インドネシアの近代化の意味」   ・・中学部 3年生

 1000人を超える生徒の作文が、毎年冊子になるのですから、保護者だけでなく、文部科学省の官僚や大臣や政治家たちも読めば良いのにと、私は思いました。教育の国際化とは何なのか、東京裁判史観のままの教科書でいいのか、あるいはまた、単純に戦前回帰で良いのか・・様々なヒントがあります。

 《 1. 「いんどねしあについて、おもうこと」・・小学部 1年生 》

  「なんでここは、よるのこどものてれびは、やらないのかな。」「ここのうみは、なんでこんなに、きたないのかな。」「どうしてここは、ずうっとなつなのかな。」「にほんみたいに、はる、なつ、あき、ふゆがないのかな。」「ぼくは、さいしょ、ふゆにここにきて、」「『あついな』とおもったけど、なれてきたら、」「『そんなにあつくないんだな』と、おもいました。」

 「ぼくは、このまえばりとうにいって、うみにはいったり、」「さんぽをしたりしました。」「でも、ここではできません。」「なんでこことにほんでは、二じかんちがうのかな。」「ここのがっこうには、おともだちがいっぱいいるけれど、」「にほんのがっこうにいっても、ともだちがいっぱいできるかな。」「ぼくは、いんどねしあと、にほんは、どちらもすきです。」

 一年生ですから、漢字がなく平仮名ばかりの文章です。時差や四季など、色々なことに興味を抱き、日本との比較で海が汚いと、平気で言います。けれども、偏見がなく、日本もインドネシアも好きだと、素直な気持ちを述べています。次の3年生になると、校長先生の話を理解し、自分の考えを伝えています。

 《 2. 「体はインドネシア、心は日本」   ・・小学部 3年生 》

  「校長先生のお話を聞いて、驚きました。」「体は外国なのに、心は日本、の人が多いと思ったからです。」「私は、せっかくインドネシアにいるのに、」「いつかは、日本に帰ってしまうので、」「インドネシア人のお友達を、作ろうとはしませんでした。」

 「だけど、校長先生のお話を聞いて、」「もっとインドネシア語を勉強して、インドネシア人のお友達を、作ろうと思いました。」「私は、インドネシアより日本の方が好きでした。」「今日、校長先生のお話を聞いて、」「インドネシアの良いところを探して、好きになろうと思いました。」

 「どうしてかというと、心は日本、体はインドネシアだったからです。」「それから、よく考えてみると、インドネシアの良いところは、」「いっぱいありました。」「だから、校長先生の話を聞いて、良かったです。」

 もし生徒たちが、インドネシアでなく、ヨーロッパの国にある日本人学校に通っていたら、このような作文を書いたでしょうか。あるいは、保護者たちは、現地の子供と友達になることに、反対したでしょうか。明治以来、追いつけ追い越せと、西欧を目指していた私たちには、憧れこそあれ、蔑視の念は生じなかったはずです。

 先生だけでなく、保護者たちも、なぜアジアが貧しいのか、なぜ不便な暮らしをしているのかについて、正しく教える工夫がいるのだと思います。「万邦無比の日本」とか「世界一の日本」という、自画自賛の話でなく、かっての日本も同じような姿をしていた時があったと教え、他国を軽蔑していけないと、語る必要があります。

 先生にとっても、親たちにとっても、簡単な話ではありませんが、これが本当の「教育の国際化」ではないでしょうか。日教組の反日教育など、出てくる幕はありません。素直な子供たちにインドネシアの歴史を教え、日本の過去を語る過程で、教師や保護者、そしてそれを読む私たち自身が変わるはずです。次回は、最後の作文を紹介します。

  3. 「インドネシアの近代化の意味」   ・・中学部 3年生

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『 ジャカルタ日本人学校の日々 』 - 3 ( 『テフロン現象』 )

2020-12-20 14:43:08 | 徒然の記

 今回のテーマは、石井校長が苦心した「ジャカルタ日本人学校」の、国際化対応についてです。59ページから、書かれています。

 「ジャカルタ日本人学校における、現地との国際交流は、」「その活動を学校の基本理念の一つとして、位置付けている。」「これを積極的に行おうとする目的は、国際性の涵養に他ならない。」「子供の立場に立てば、絶好の機会が、海外校で学んでいる時であると言える。」

 つまりこれが、建前論であり、文部官僚の菱村氏が提案した、「教育の国際化」です。では現実はどうなのか、石井校長が説明します。

 「インドネシアに暮らして、インドネシアを知らず、」「同世代のインドネシア人の友達も、数少ない。」「このような姿が、ジャカルタ日本人学校の子供たちの、」「平均像である。」「中学校を卒業して仕舞えば、多くの子供たちは、」「それだけの海外経験で、帰国することになる。」

 簡単に言いますと、生徒たちの暮らしは、スクールバスによる学校と家庭の往復で、肝心のインドネシアとの接触が、ほとんどありません。現地の人々の暮らしは、あるいは現地の子供や大人たちは、バスの窓から眺める「風景」の一つでしかないのです。

 「以前の新聞記事で、海外に住む邦人の生活態様を、」「『テフロン現象』という言葉で、批判的に語られていたのを、目にしたことがある。」「テフロン加工したフライパンには、物がつかないことに似て」「現地と接触を持たない、持ちたがらない邦人の生活姿勢は、」「現地社会の問題にもなっている、という指摘でした。」「なんとかして、やらなければならない。」「この面で学校がやれることは、多々あるように思う。」

 氏は現地校と提携を結び、互いの生徒を年に何度か、交流授業をするところまで漕ぎ着けます。最初の頃は、イベント行事として行われ、お互いの国の文化を紹介し合います。相手校であるアルアズハール校は、目を見張るような伝統芸能を披露してくれます。

 そうすると、日本の側で考えるのは、「日本舞踊」ということになりますが、生徒の誰もがやれませんので、結局は教師の中の経験者が披露します。その他、石井氏が発案したものは、「一泊二日の交流授業」、「日イ交流キャンプ」、「日本語講習会」などがあります。

 校長が願っているのは、こうした交流を通じ、生徒たちが個人的につながり、友達になることでした。互いを見るだけでなく、友達になり、話すようにならなくては、真の交流にならないと、考えるからです。

 「ところが、肝心の時になって、保護者の中には、」「これを良しとしない風潮が、過去にあったと聞いている。」「日イ・キャンプで親しくなった、現地校の生徒が、」「本校の生徒に、電話をよこすようになったものを、」「保護者が、一方的な理由で、」「これを進展させないようにした、というものである。」

 「現地校の生徒は、日イ・キャンプとは、いったいなんのためなのかと、」「大変な不信感を持ってしまった、とのことである。」「現地校の保護者から、直接聞いた話であるが、実に残念な話である。」「このようなことになるのは、保護者にも、生徒にも、」「その根っこに、現地蔑視が存在するからである。」

 この部分の読後、私は3年前に読んだ、田母神俊雄氏の著作に引用されていた詩を、思い出しました。平成元年に、詩人ラジャ氏が、クアラルンプールで書いたものと説明されていました。戦前の日本人は、アジア諸国を踏み躙った軍国主義者ばかりだったという、反日左翼への反論として、そんなことはない、戦後の日本人の方が悪いのだと、そのために引用した詩です。

 そういうことは傍に置いて、石井氏の言葉と合わせながら、再読しますと、心の痛むものがあります。戦前と違う「新しい日本人」が、このような姿勢であってはなりません。息子たちと、「ねこ庭」を訪問される方々にも、新たな気持ちで読んでもらいたくなりました。

  かって 日本人は 清らかで美しかった
  かって 日本人は 親切でこころ豊かだった
  アジアの国の誰にでも
  自分のことのように 一生懸命つくしてくれた
 
  何千万人もの 人の中には 少しは 変な人もいたし
  おこりんぼや わがままな人もいた
  自分の考えを おしつけて いばってばかりいる人だって
  いなかったわけじゃない
 
  でも その頃の日本人は そんな少しの いやなことや
  不愉快さを超えて おおらかで まじめで
  希望にみちて明るかった
 
  戦後の日本人は 自分たちのことを 悪者だと思い込まされた
  学校でも ジャーナリズムも そうだとしか教えなかったから
  まじめに
  自分たちの父祖や先輩は
  悪いことばかりした残酷無情な
  ひどい人たちだったと 思っているようだ
 
  だから アジアの国に行ったら ひたすら ぺこぺこあやまって
  私たちはそんなことはいたしませんと
  いえばよいと思っている。
 
  そのくせ 経済力がついてきて 技術が向上してくると
  自分の国や自分までが えらいと思うようになってきて
  うわべや 口先では すまなかった 悪かったといいながら
  ひとりよがりの 
  自分本位の えらそうな態度をする
  そんな 今の日本人が 心配だ
 
  ほんとうに どうなっちまったんだろう
  日本人は そんなはずじゃなかったのに
  本当の日本人を知っているわたしたちは
  今は いつも 歯がゆくて 
  悔しい思いがする
 
   自分たちだけで 集まっては 自分たちだけの 楽しみや
  ぜいたくに ふけりながら 自分がお世話になって住んでいる
  自分の会社が仕事をしている その国と国民のことを
  さげすんだ目で見たり バカにしたりする
 
  こんなひとたちと 本当に 仲良くしていけるのだろうか
  どうして
  どうして日本人は
  こんなになってしまったんだ
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『 ジャカルタ日本人学校の日々 』 - 2 ( イクイット車 )

2020-12-19 22:17:40 | 徒然の記

 スクールバスの話の続きです。 

 「ジャカルタ市内では、交通ルールはあっても無きがごとしで、」「かつ大渋滞に遭遇するため、思わぬ出来事が起きる可能性が高い。」「交通事故はもちろんのこと、バスへの投石のような事件発生への予測も、しておかねばならない。」

 「人身事故となると、事故を起こした運転手が、」「その場で周囲の人々から、制裁を加えられることさえあるとも聞く。」「ある新聞報道では、ジャカルタ郊外で事故を起こした運転手が、」「報復を恐れて、付近の山に逃げ込んだと伝えている。」

 日本でこのようなことは考えられませんが、違う国では、違う価値観の人々が生活していますから、郷に入っては郷に従えで、自衛するしかありません。

 「スクールバスで、運転手が逃げてしまえば、」「バスに残された子供と先生が、緊急状況に置かれるのは必至であろう。」「スクールバスには、無線機が搭載されているから、」「これを使って通報するのだが、使用方法を熟知しているのは、」「運転手のみであるから、本人が逃走したら、」「これが機能しなくなる。」

 どうして交通事故が、このような危機につながるのか、それは現地の人々と、在留外国人の生活レベルの差にあるのだと、本を読んでいると分かります。はっきり書かれていませんが、日本人だけのことでなく、アメリカ、イギリスなど、現地に進出している外国人は、皆同じです。

 スクールバスを利用している生徒や先生には、普通の生活ですが、現地の人々からすると、とてつもなく裕福で、恵まれた暮らしをしていると見えます。それはおそらく、敗戦後の貧しかった私たちの目に、キャラメルやチョコレートをくれた、アメリカ軍の兵士たちが、羨ましかったのと同じ状況だと思います。

 国の風土が違えば、羨ましいだけでなく、反感や憎しみが生まれることもあり、何かのきっかけで激しい報復になります。隣の韓国や中国が、いつまでも日本を批判し、憎んでいることを考えれば、推測できないことではありません。ジャカルタの場合も、似たような土壌があるのかも知れません。

 「では、公衆電話ということになるが、これがまったく頼りにならない。」「設置場所が極めて少なく、たまにあっても故障が多い。」「ホテルやオフィスに飛び込み、利用させてもらう手もあるが、」「ジャカルタ市内の電話事情は、昼間はとてもかかりにくく、」「緊急事態を知らせる手段には、不都合なのである。」

 本が出版された平成7年に、日本はどういう状況であったのか。以前のブログで調べていましたから、転記します。

 平成7年の内閣総理大臣は、日本社会党の村山富市氏でしたが、氏は平成7年の1月に、突然辞任を表明し、橋本内閣が発足しています。「10大ニュース」の項目を見ますと、次のような出来事がありました。

  • 1位・阪神大震災 
  • 2位・オウム真理教による地下鉄サリン事件
  • 3位・不良債権で住専やコスモ、木津、兵銀など金融機関の破綻相次ぐ
  • 4位・大和銀が巨額損失、米当局の追放措置で住友銀との合併浮上 

 バブル経済崩壊後で、景気が低迷し、細川、羽田、村山と、短命内閣が続く、暗い世相でした。地下鉄サリン事件を起こした、オーム教団の幹部が次々と逮捕され、刺殺された幹部もいました。

 騒々しく不穏な世であっても、文部科学省は、教育の国際化を考えていたと言うのが、先日読んだ菱村幸彦氏の『学校は変われるか』(  平成8年刊  (株)教育開発研究所 ) から、分かっています。

 「国際化の中心が、人の交流だとすれば、国際化への対応は、」「結局、外国の人々と、どううまくつき合って行くか、」「ということになる。」「気質や習慣や、文化などの異なる、」「多様なもの、異質なものを、どう違和感なしに受け入れて行くか、」「ということである。」・・文部官僚の菱村氏の意見でした。

 後ほど述べますが、文科省から派遣された著者の石井校長は、「ジャカルタ日本人学校」の国際化への対応について、真剣に考えています。また平成7年は、日教組が長年の対立をやめ、文部省との協調路線を取ったという年でもありました。

 これを頭の隅におきながら、スクールバスの話を続けます。

 「そうなると、確実な緊急連絡方法は、人間が直接行うことになる。」「バスを追随する車 ( イクイット車 ) を出し、緊急連絡の手段としている。」「イクイット車は、現地スタッフに走行させ、」「連絡と救助任務を与えてある。」

 今回はスクールバスのことだけを、伝えましたが、現地での苦労はまだあります。174ページで、氏が次のように述べています。

 「『いつ何が起きても不思議ではない』とは、ここでの生活体験から判断した、」「危機管理の、合言葉である。」「聞き様によっては、現地国を非難する言葉であるが、」「そのようなつもりはなく、海外に住む者の、」「危機意識を喚起しようと、するものである。」「このような心がけを持って生活することが、自身の安全確保とともに、」「現地国に迷惑をかけない行動にも、つながるということである。」

 私は氏の言葉を、観光立国とやらで政府が音頭を取り、浮かれている現在、重いものとして受け止めています。「世界は一つ、人間は皆同じ。」「真心と誠意は、万国共通の言葉です。」と、こういう意見も大切ですが、「世界は一つでなく、人間は皆違っている。」「日本人の真心と誠意が、誰にでも通じないことがある。」と、厳しい現実も忘れてはなりません。

 25年前の本ですから、こういう体験をした「ジャカルタの日本人学校」の子供たちも、今では大人になり、日本で活躍しているはずです。同じ「おもてなし」をしても、他国の現実を知った上での「おもてなし」は、警戒心もなく外国人を歓迎する、「お花畑の住民」とは、いざという時の覚悟が違うと、そんな気がしてなりません。

 私の知らない間に、新しい日本人が育ち、新しい日本が生まれつつあるのでしょうか。次回は、石井校長が苦心した「ジャカルタ日本人学校」の、国際化対応について報告致します。

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『 ジャカルタ日本人学校の日々 』 ( 33台のスクールバス )

2020-12-19 13:59:51 | 徒然の記

 教育関係の未読の本が、11冊本棚に残っていると書いたのは、11月4日でしたから、ひと月半が過ぎました。本日やっと、『ジャカルタ日本人学校の日々』を読み終えました。下記の通り、青字で表示したのが読んだ本ですから、あと5冊残っています。

   1. 『教育への告発』       2. 『いま教育を問う』

   3. 『いじめと不登校』     4. 『昭和教育史の証言』

   5. 『教師』          6. 『学校は変われるか』

   7. 『教なき国民は滅ぶ』     8. 『いじめ・不登校』

   9. 『教育問答』          10. 『ジャカルタ日本人学校の日々』

     11. 『日本の教師に伝えたいこと』

 教育関係の本も、手に取りますといつものパターンで、国の歴史を否定する反日左翼の主張が、私の心を曇らせます。しかしこの本には、日教組が出てきませんし、反日左翼の主張もありません。インドネシアで苦労している先生と、生徒たちの話がたくさん紹介されているだけで、私の気持ちを明るくしてくれました。

 石井光信氏著『ジャカルタ日本人学校の日々』(  平成7年刊 近代文藝社 )は、私の知らない話ばかりで、たまにこのような本を読むのは、心の健康に良いと分かり、感謝しています。

 息子たちのために、「ジャカルタ日本人学校」についての概要を、本のあちこちから抜書きしてみます。25年前の本なので、今は様変わりしているのかもしれませんが、それでも私たちには参考になります。

 インドネシアには、ジャカルタ、バンドン、スラバヤ、メダンの4つの都市に日本人学校がありますが、ジャカルタの学校が一番大きく、リーダー的位置にあります。学校には初等、中等のクラスがあり、日本で言いますと、小学校、中学校にあたります。

 生徒たちは大型のスクールバスで送迎され、30路線で33台のバスが、913名の生徒を運んでいます。運営しているのは、PTAバス委員会だそうです。日本でも、スクールバスを走らせている学校を、時々見かけますが、これは私立の高校や大学が、宣伝やサービスのためやっています。

 しかしジャカルタでは、そうしなければならない事情がありました。バスの運行一つをとっても、日本とインドネシアでは、大きな違いがあり、こんな苦労があるのかとびっくりします。著者の石井氏には、ネットの情報がありませんので、本人の話で紹介しますと、氏は文部省から、三年の期間決めで派遣された校長先生です。それでいて、学校は私立経営と書かれています。現地の学校がどういう形態で運営されているのか、説明はあるのですが、ピンときませんでした。

 まず、スクールバスの話を紹介します。

 「日本人学校は、ジャカルタ南部の郊外に位置しているため、」「遠い通学者の中には、直線距離にして12キロを超える者もいる。」「当然何らかの交通手段によらなければ、通学できないのだが、」「公共交通機関が発達していないので、この利用ができない。」

 「自家用車は便利であるが、家庭によっては、父親の通勤用が優先されるから、」「登校手段として利用するには、無理があろう。」「余裕のある家庭なら、別の車で登校させて良いかと考えるのであるが、」「実は、スクールバス通学の原則というものがあり、当地の行政機関が行なっている規制である。」「スクールバス通学は、距離上の問題というよりは、」「学校維持会に課せられた、義務規定なのである。」

 日本では小学校や中学校が、住宅地の付近にありますから、スクールバスがなくても困りませんが、ジャカルタでは、こんなところから条件が違っています。

 「学校設立に際して、通学は地域周辺の交通の妨げになってはいけないと、」「付帯条件が付与されているので、スクールバスによって、」「短時間のうちに登校が完了していなれければ、ならないのである。」「これは、自家用車なら数百台になる走行を、規制していることになる。」

 日本でなら、たかがスクールバスと、一笑に付される話になりますが、ここではそうなりません。

 「バスの運営は、学校維持会が経理面を担当し、運行には保護者が立ち合い、」「運航の安全指導は、学校と保護者が行っている、」「というように、三つの組織が関係している。」「改善すべき最大の課題は、運行が保護者によって行われていることである。」「路線の計画、運行上の安全管理、緊急時の対応など、」「保護者の手にあまり、責任を負えない範囲のものである。」

 保護者たちは、現地に進出している企業や、大使館、マスコミなどで働いていますから、バスの運行にかかりきりになっておれない人々です。単身赴任者もいるのでしょうが、日本企業の海外進出が広がりますと、家族帯同の長期滞在者が増えます。インドネシアだけの話でなく、同じような話が、各国であったのだと思います。

 「なぜ保護者が主導するような形で、バス運行がされて来たのかは、」「一つはジャカルタにおける、治安事件の経験という、」「歴史的要因があると、思う。」「初めからバス運行が、保護者の手でなされていたわけでなく、」「暴動事件が発生し、危機感を強くした保護者がバス運行に関わり、」「それが引き続いて、状態になっている面もある。」

 ここまでは260ページの説明ですが、154ページに、具体的な危機の説明があります。何もかも日本にいては、想像できない話ばかりです。

 スペースが無くなりましたので、続きは次回といたします。

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戦う田中英道氏 - 9 ( 菅総理と柿崎明二氏 )

2020-12-17 13:39:40 | 徒然の記

 中国の軍関連の大学と協定を結んでいる大学が、45校あると、記事に書いてあります。北海道大学、千葉工業大学、芝浦工業大学、大阪大学以外に、どんな大学があるのかを知ろうと、ネットで検索しました。

 いくら探しても、まとまった情報がありませんでしたが、興味深い発見をしました。11月29日には、産経新聞の他に、共同通信社が配信した地方紙の同じ記事が、並んで表示されています。

 北海道新聞、東奥日報、山形新聞、岩手日報、茨城新聞、神奈川新聞等々、どの新聞の見出しも同じです。全国の地方紙に、共同通信社が配信しているのですから、当たり前の話です。

 不思議に思ったのは、全国紙と言われる朝日、毎日、読売が、この記事を掲載していないという発見です。これだけのスクープ記事を、朝日、毎日、読売が報じていないというのが、私の疑問です。朝日と毎日は反日新聞ですから、日本学術会議の味方なので、都合の悪いニュースをスルーしたのかも知れませんが、保守系と言われる読売が、なぜ報道しなかったのか・・どう考えても腑に落ちません。

 朝日新聞やNHKと共に、反日・左翼の先頭を走っている共同通信社が、突然保守マスコミに変身したのでしょうか。産経新聞と共同歩調ですから、そうでも考えない限り、理解できない話になります。記事の書き出しを、もう一度確認しますと、また疑問が生じました。

 「同国の7大学と、日本の国公私立大計45校が、」「学術・学生交流協定を結んでいることが、28日分かった。」

 実は、日本の大学と中国の軍関連大学が連携協定を結んでいるという文書は、中国側が詳細にまとめ、日本語訳したものを、既に公開しています。公開した大学は、北京第二外語学院で、あの王毅外相が日本語を勉強した大学です。ネットの検索で偶然発見したことばかりですが、いつでも、誰でも見られる情報を、なぜ共同通信社が特種のように全国発信したのか・・、という更なる疑問に繋がります。

 素人の推理ですが、共同通信社が菅総理を支援するため、故意にこの記事を全国発信したのではないのか。誰でも見られる公開情報のため、朝日、毎日、読売は、重要視しなかったのではないか。そう推測しなければ、話の辻褄が合いません。

 推測が当たっているのかどうか、知っている方がおられたら、教えて頂きたいものですが、そんな物好きな人はいないでしょうから、一人で考えるしかありません。

 菅総理は11月29日の閣議で、共同通信社の論説副委員長だった柿崎明二氏(59)を、10月1日付で首相補佐官に起用する人事を決定しています。政策の「評価・検証」を、担当するとのことでした。千葉日報の記事だったか、ネットの情報だったのか忘れていますが、このことを思い出しました。

 柿崎氏は早大卒と、大学は違いますが、生まれが秋田県で菅総理と同郷だそうです。氏は共同通信社で論説委員、編集委員、編集局論説副委員長などの要職を務めていますが、首相補佐官になる直前の9月30日で退社しています。

 共同通信社時代に、安倍総理の批判をしていた人物ですから、官邸入りした氏を皮肉る評論家もいるそうです。氏は59才とまだ若く、もしかするとあの竹中平蔵氏同様、野心と実力のあるやり手なのかも知れません。氏が補佐官になったから、菅総理の応援記事が書かれるようになったと、そう考えるのはおかしいのでしょうか。あれ以来菅総理への攻撃記事が減り、代わりに安倍元総理の「桜見の会」の報道が蒸し返されるようになりました。柿崎氏の安倍氏批判は変わらないのですから、まったくの変身ではありません。菅氏に関してだけ支援、という話になります。

 ここからまた、私の疑問がはじまりました。

 1. 共同通信社は、たった一人の実力記者の力で、記事の論調を変えるのか。

 2. 不動と見えるマスコミも、内部の実力者が籠絡されると、記事の論調が変わるのか。

 3. こんなことなら、どうして安倍総理は、菅氏と同じ手法で、反日マスコミの幹部を籠絡しなかったのか。

 4. もしかすると、菅氏はとんでもないやり手で、こうした手法は誰にでもやれることではなかったのか。

 5. 菅氏と柿崎氏の関係は、例外中の例外なのか。

 菅内閣が成立して、まだ3ヶ月足らずです。結論を急ぐのはやめようと思いますが、不安と期待の入り混じる宰相であるのは、間違いないようです。今回は、息子たちと「ねこ庭」を訪問される方々へ、疑問の提起だけで終わろうと思います。

 田中英道氏の動画が、ここまで私を導いてくれました。感謝せずにおれません。

 

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戦う田中英道氏 - 8 ( 日本の大学と、中国の軍関連大学 )

2020-12-16 18:07:10 | 徒然の記

  2.  日本の大学 ( 45校 ) が、中国の軍関連大学と交わしている協定

 今回は、上記 2.の最後の項目です。共同通信社が、一面の4分の1を占める大きな扱いで、全国の地方紙に掲載しました。見出しの活字も大きく、読者の目を引きます。

 「45校 中国軍事関連大と協定」「知財流出懸念 一部に共同研究実績も」「千葉工大 休止している」

 日本学術会議が、「軍事研究をしない」と言っているのに、日本の大学は、中国の軍事関連大学と連携協定を結んでいるという、スクープ記事です。6人の会員を不承認とした菅総理を支援する、タイミングの良い記事です。書き出しの部分を、転記します。

 「中国人民解放軍と関係があり、軍事関連の技術研究を行う、」「同国の7大学と、日本の国公私立大計45校が、」「学術・学生交流協定を結んでいることが、28日分かった。」「9校に、共同研究の実績があった。」

 「民間研究を兵器開発に用いる、『軍民融合』を進める中国の、」「知的財産窃取が問題視され、日本の研究現場からの流出が懸念される中、」「協定を、見直す可能性があると答えた大学は、」「3割超の16校。」「学問の国際化を重視する大学が、困難な対応を迫られている実態が、明らかになった。」

 大学教授のほとんどが、日本学術会議の傘下にありますから、45校に在籍する学者の何人かが、こうした研究に参加していることになります。

 「7大学は、北京航空航空大や西北工業大などで、」「防衛産業を統括する、中国工業情報省の管轄下にあり、」「国防 7子と呼ばれる。」「人民解放軍の、装備開発にも関わっており、」・・・と、軍と大学の密接な関係につき、詳しい説明が続きます。

 別途調べた旺文社の、令和2年のデータによりますと、日本の大学総数は780校です。内訳は国立大が82校、公立大が91校、私立大が592校です。合計765校で、780校に15校足りませんが、なぜなのか私には分かりません。いずれにしましても、記事には大学の総数が書かれていません。760校以上ある大学の内の45校なら、大した数でないと、そう思われるのを心配し記事にしなかったのか、それも私には分かりません。

 これは別にネットで調べたものですが、日本の大学の内、中国の大学と提携協定を結んでいる数が多いのは、どの大学かというデータがあります。

 〈  協定締結数の多い上位10位までの大学と、その協定数 〉

  1位   早稲田大学    102 件
 
  2位   立命館大学     97件

  3位   立命館アジア太平洋大学  84件

      4位   東北大学     81件

  5位   九州大学    70件

  6位   京都大学     68件

  7位   北海道大学    65件

  8位   東京大学     59件

  8位  広島大学     59件

    10位  神戸大学     56件

 トップテンの中に、日本トップの国立大学が占め、数の多さの比較より、質の高さが問題になる気がいたします。一件を一校と考えますと、早稲田大学は102校もの中国の大学と、協定を結んでいるということになります。「権力に屈しない、在野精神」を売りにしているとは言え、ここまで来ますと、とんでもない大学です。
 
 トップテンでありませんが、千葉工業大学、芝浦工業大学、大阪大学の名前が出ているところを見ますと、行なっている共同研究が、中国軍への貢献度が大きいということなのでしょうか。
 
 裏付けとなる共同通信社の記事があり、日本学術会議への批評も確かなものとなりました。これでこのブログを終了すれば、私の役目は終わりです。しかしここで、新たな疑問が生じ、これをお伝えしなければ、気持ちの整理がつかなくなりました。
 
 予定外になりますが、共同通信社の記事に関する疑問を、次回にもう一度だけご説明いたします。
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戦う田中英道氏 - 7 ( 中国科学技術協会 )

2020-12-15 20:11:30 | 徒然の記

 今日はまだ、下記  1. の説明の続きで、2. は残ったままです。しかし今回のブログを読めば、「日本学術会議」と、日本のマスコミが、いかに国民に事実を伝えていないかが、ハッキリとします。というより、それ以上に、保守と称する自民党の政治家も、一緒になり、国民に事実を言わない痴れ者の仲間だと、これもハッキリ致します。

    1.   日本学術会議と中国科学技術協会間の協力覚書

    2.  日本の大学 ( 45校 ) が、中国の軍関連大学と交わしている協定

 遠藤教授の記事の見出しには、大きな活字で次のように書かれています。

  「2013年、中国工程院と中国科学技術協会が提携」

 前回同様、氏の記事をそのまま転記します。

 「習近平が、国家主席に選ばれた2013年3月15日、」「中国工程院は、中国科学技術協会と、戦略的提携合意書の調印式を開いた。」「中国科学技術協会は、430万人ほどの会員を擁する、科学技術者の民間組織だ。」

 つまりこの時から、中国科学技術協会は中国政府の機関として、組み入れられました。日本学術会議の反日ぶりと、利敵行為の事実がここでハッキリとします。

 「自分が国家主席に選ばれた日に、中国工程院と中国科学技術協会の提携を発表するというのは、」「習近平の『中国製造2025 』完遂への、決意のほどを窺(うかが)わせる。」「逆に言えば、この提携は、中国のハイテク国家戦略、」「『中国製造2025 』を完遂するための、一環であったということが言える。」

 ここまで説明されると、誰にも分かります。日本学術会議が提携している相手は、「軍事研究をしている」中国の政府機関です。続く氏の言葉は、私の考えている通りです。

 「ということは、日本学術会議が、中国科学技術協会と連携しているなら、」「それは、中国工程院と連携していることになり、」「最終的には、軍事科学院・国防工程研究院と、」「提携していることにつながる、ということである。」

 「日本の一部のメディア、あるいは国会議員は、」「中国工程院が、国防部の管轄下にあるなどと、発言したりしているのを散見するが、それは間違いだ。」「国防部というのは、国務院の中の中央行政の一つに過ぎず、」「ほとんど力を持っていない。」

 「そんな末端の管轄下にあるのではなくて、中国工程院は国務院直轄だし、」「軍事科学院は、中央軍事委員会の直轄下にある。」「そのトップにいるのは、習近平・中央軍事委員会主席である。」

 私は、中国の批判をしているのではありません。かってアジアの盟主だった中国が、アヘン戦争以来欧米に蹂躙された、その屈辱を晴らそうとしているのなら、意を唱える必要はありません。私たちが、敗戦以来の「東京裁判史観」を抹殺しようとしているように、彼らも、中国人の歴史を取り戻そうとしているだけの話です。

 米国人が米国の国益を優先し、中国人が自国の国益を第一と考えるのは、国際社会では当たり前の話です。それぞれの国の人間は、自分の国を愛し、誇りを持っているからそうするのです。しかし、中国人でもない日本学術会議の学者の一部が、どうして中国のために協力するのでしょう。しかも習近平氏の中国は、明らかに日本を敵視し、尖閣も沖縄も自国領だと主張する国です。

 ここでもう一度、敗戦時以来の同会議の足跡を、振り返りましょう。日本での軍事研究には協力しないという、「声明」の出された背景の記録です。

 1. 第一回目の「声明」発表 ・・昭和25年

   GHQによる占領政策として、日本学術会議が設立された翌年

 2. 第二回目の「声明」発表 ・・昭和42年

   佐藤総理が、自衛隊の強化を目指し、「建国記念日」の制定を強行した年

 3. 第三回目の「声明」発表  ・・平成17年

   大東亜戦争終結から、60周年になった年

 4. 中国科学技術協会と「覚書」締結 ・・平成27年

   中国のハイテク国家戦略『中国製造2025 』が発布された年

 田中氏の言葉を、再度引用しますと、同会議への怒りが新たになります。

 「もともと日本学術会議は、昭和24年に、」「GHQの占領政策として作られたものです。」「日本を、二度と立ち上がれないようにするため、」「二度と、戦争をさせないようにするため、」「意図的な占領政策の中で、作られました。」

 彼らは、GHQに与えられた「トロイの木馬」の役割を今も忘れず、忠実に活動を続けていることが分かります。目的のためなら、中国政府との協力も辞さないのです。

 一連の事実を知れば、彼らは「国を出るべき人」であり、「国民であるわけがない人」であると、私だって言います。日本学術会議が、中国科学技術協会と「覚書」を結んだ、2015( 平成27 ) 年という年が、中国のハイテク国家戦略『中国製造2025 』が発布された年だというのなら、何をか言わんやです。

    2.  日本の大学 ( 45校 ) が、中国の軍関連大学と交わしている協定

 次回は、残った項目につき、共同通信社の記事をもとに報告いたします。

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戦う田中英道氏 - 6 ( 中国科学技術協会と 中国工程院 )

2020-12-15 09:58:46 | 徒然の記

 せっかく田中氏から、貴重な情報を教えられましたので、自分でも少し調べました。「中国科学技術協会」とは、どんな組織なのか。ネットの情報を、転記します。

 「中国科学技術協会」は、科学技術者の民間組織で、主席は韓 啓徳(Han Qide)である。」「同協会は、自然科学、技術科学、工学技術または、関連分野の167の、」「全国的な学会を設けるほか、科学技術の発展と、」「普及の促進を目的とする、32の省クラスの、科学技術協会と、」「多くの地方、下部組織、そして430万人あまりの会員を擁する、」「科学技術団体である。」
 
 説明によりますと、協会は民間団体となっており、団体の設立目的として、以下の7 項目が述べられています。 
 
 1. 学術交流を行い、科学の発展を促進する。
 2. 科学的な精神を発揚し、科学知識と科学思想・方法の普及を促進する。先進技術を広め、青少年に対する科学技術教育活動を展開し、全民族の科学的な教養を高める。
 3. 科学技術者の意見と要求を反映し、科学技術者の合法的権益を守るとともに、科学技術者を組織し、国家の科学技術政策・法規の制定や国家事項の議論などに参与する
 
 4. 優秀な科学技術者を表彰または奨励し、人材を推薦する。
 5. 科学の論証、相談サービスを展開し、政策提案を行うとともに、科学技術成果の転化を促進し、委託項目の評価や成果の鑑定や、専門技術職の資格審査を担当する。
 
 6. 民間の国際科学技術交流活動を展開し、海外の科学技術団体と、科学技術者との友好往来を促進する。
 7. 継続教育と育成訓練を行う。

 これもまた「覚書」と同様、普通のことが書かれています。しかし、共産党一党独裁の国で、世界的活動をする学術団体が、一般に言われる民間であるはずがありません。

 「全民族の科学的な教養を高める。」、「国家の科学技術政策・法規の制定や国家事項の議論などに参与する。」などと、よく読めば、中国政府の意向が現れています。「日本学術会議」は、政府からの独立を標榜しますが、こちらの方は、共産党の政策実施団体です。日本の政府の関与は拒否するが、中国政府の管理には異を唱えないのですから、「日本学術会議」の学者たちの一部は、やはり「国を出るべき人」」「国民であるわけがない人」、と言われても当然でしょう。

 ネットを探していましたら、Yahooジャパンニュースで、遠藤誉氏の記事を見つけました。氏は、筑波大学名誉教授で理学博士、さらには、中国問題グローバル研究所所長でもあります。興味深い記事なので、そのまま転記します。

 「習近平は、2012年11月の第18回党大会で、中共中央総書記に選ばれると、」「すぐさま『中国のハイテク産業を緊急に促進させよ!』、という号令を出して、」「その年の年末から、2013年の年明けにかけて、」「中国工程院の院士たちを中心に、諮問委員会を立ち上げた。」

 「中国工程院というのは、国務院(中国政府)直属の、アカデミーの一つで、」「中国科学院から、分離独立したものである。」「中国にはほかに、中国社会科学院や、中国医学院、」「中国農学院など、多くのアカデミーがある。」

 「『院士』というのは『学士、修士、博士』などの、」「教育機関における、アカデミックな称号とは別系列の、」「中国の学問界で、最高の学術的権威のある称号である。」

 「2013年、中国工程院の院士たちを中心に、最高レベルの頭脳が集まり、」「『中国製造2025 』、の基本枠を構築した。」「2013年末に、その答申を受けて、中国政府の関係者が、」「実行可能性や予算などを検討し、互いに討議を繰り返した末に、」「2015年5月、李克強国務院総理が発表したのが、ハイテク国家戦略『中国製造2025 』である。」

 「中国科学技術協会」と無関係な、中国の政治情勢の説明と思い読んでいましたが、そうではありませんでした。私にとっては、新しい事実の発見となります。

 「それまでの、組み立てプラットフォーム国家から抜け出して、」「半導体製造や宇宙開発、あるいは5GやAIによる軍事技術も含めた、」「『スマート化』を図ることなどが、目的だ。」

 「米中覇権競争時代がやってくるのは、目に見えていたので、」「アメリカに追いつき、追い越さなければ中国が滅びる。」「だから、『中華民族の偉大なる復興』を目指し、」「国家運命を賭けて漕ぎ出したのが、『中国製造2025 』だった。」

 アヘン戦争以来、欧米列強に国土を切り取られた中国は、かってアジアの盟主でした。アメリカにアメリカの目標があるように、中国には中国の目標があります。習近平氏は、日本で横暴な独裁者のように伝えられ、私も嫌悪していますが、中国人の目には、別の姿で捉えられているのかもしれません。私が知る氏の考えは、次のような主張として流布されています。

 「さらなる15年の奮闘により、豊かで強く、民主的かつ文明的で、調和のとれた、美しい社会主義現代化強国を築き上げる。」「その暁には、目標が実現され、中華民族はますます溌 剌(はつらつ)として、世界の諸民族の中でそびえ立っている。」

 つまり氏の中に生きているのは、漢民族の持つ「中華思想」です。私がご先祖さまの思想を大切にするように、氏もまたそうしているのですから、不思議ではありません。この点を心に刻みながら、遠藤教授の記事を読みました。

 「もちろん、『中国製造2025 』では、『軍民融合』も謳われており、」「そのためには、国家直轄でない民間の科学技術団体も、」「統合していく必要があった。」

 最後の二行が、今回息子たちに伝えたかった事実です。つまりこの時点で、「中国科学技術協会」は、中国政府の管理下に組み入れられたのです。氏の記事には、さらに重要なことが書かれていますが、スペースの都合で、次回といたします。

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戦う田中英道氏 - 5 ( 中国科学技術協会と結んだ「覚書」 )

2020-12-14 19:53:14 | 徒然の記

 今回から、次の2つを説明いたします。

  1.   日本学術会議と中国科学技術協会間の協力覚書

    2.  日本の大学 ( 45校 ) が、中国の軍関連大学と交わしている協定

 「日本学術会議」と「中国科学技術協会」が結んだ「覚書」の和訳を、ネットで検索しました。「覚書」の最後には、次のような文言が記載されています。

 「本覚書は、2015年9月7日に中国(北京)で英語により複写され、署名された。両文書ともに、同様に真正なものである。」

 これで、「覚書」が結ばれたのは、2015年つまり、平成27年であることが分かりました。全文を転記しますが、日本と中国の政府関係の学術団体が、学問研究を相互に協力し合いましょうという内容で、これだけ読みますと、問題点らしい文章はありません。

 < 日本学術会議と中国科学技術協会間の協力覚書 >
 「日本学術会議と、中国科学技術協会(以後、両機関)は、相互関係を強化し、」「個人の研究者、及びその関系者間のつながりを促進することがのぞましいと考え、」「以下の内容に同意し、協力関係に入ることを希望する。」

 1.  出版物の交換、科学技術の会議、セミナー(研究会)会議等を含む、学術活動の情報交換を行うこと。

 2.共通の科学的な利益(関心)のある分野において協カを促進する。

  a)  アイデアや情報の交換のために、研究者(若手、シニア両方)の交流。

  b)  互いの研究者が参加する、共同のワークショッブ、セミナーの開催をする。両機関は相互の協議を通じて、トピックを決定する。

  c)  科学情報と経験を共有し、国民の科学理解の促進。

 「両機関は、本覚書の範囲内で推薦(指名)された研究者を、」「通常の慣行に従って受入れ、研究プログラムの調整や現地でサボートを行う。」

 「両機関間でまとめられた本覚書は、互いの認可組織の承認後に効力をもち、」「どちらかの機関が、終了を書面で通知した後、6か月は引き続き効カをもつ。」

 「MoU(本覚書)の円滑な実施にあたリ、実施のための手順、」「財政的支援、その他必要と思われる詳細事項を決めるため、」「実施手続により、相互が合意の上で、補足される可能性がある。」

 「日本学術会議」とマスコミは、特に説明しませんが、私たち国民が知っておかねばならないのは、「共通の科学的な利益(関心)のある分野」、「科学情報と経験を共有し、」という言葉の意味です。「科学的分野」、「科学情報」と言っている中には、「軍事に関する研究」が含まれているということです。

 田中英道氏が、「日本学術会議」を厳しく批判する理由がここにあります。日本の大学では、「軍事研究をせず、政府に協力しない」と声明文を出しながら、中国の研究機関との間では、「軍事研究をする」のですから、理屈が通りません。さらに氏が説明した事実を、思い出してください。

 「日本学術会議」の予算は、年間10億円ですが、「日本学術振興会」の予算は、年間2,600億円です。配分額の決定には、「日本学術会議」が深く関与しています。「日本学術振興会」は、「中国科学者会議」、「中国科学院」、「北京・研究連絡センター」と連携し、中国とのさまざまな共同計画を推進していると言います。

 「日本学術会議」は、「日本学術振興会」の予算を使い、日本の学者たちの研究費、出張費、滞在費などに当てています。この事実を知れば、田中氏が次のように言った理由が理解できます。

 「それを外したり、拒否したりするような人間がいるのなら、」「その人は、国から出て行く以外ないですよね。」「国民でもない訳です。」

 「日本学術会議」は、日本の国立アカデミーで、内閣府の特別の機関の一つですが、「日本学術振興会」は、文部科学省所管の独立行政法人です。所管する役所が違いますから、門外漢の国民には、二つの団体が深い関係にあるなど、田中氏の話を聞かなければ、知る由もありません。

 国内政治と官僚機構について、熟知していると言われる菅総理ですから、考えもなく「6人の不承認」をしたとは思えません。「トロイの木馬」というところまでの認識があったかどうか、それは知りませんが、初志を貫徹してもらいたいものです。

 この問題が、いかに重大なものであるのか。早速反日マスコミの毎日新聞が、12月14日 ( 本日 ) ネットで記事を配信しています。元最高裁判事の浜田邦夫氏(84)が、女性記者の質問に答えています。詳細は省略し、結論だけを転記します。アメリカの大統領選挙では、おかしな裁判官が沢山現れ、国益を忘れた発言をしていますが、日本も同様のようです。

 「拒否できるのは、『犯罪歴』や『業績不足』のケースのみ。」

 これが浜田元最高裁判事の意見だそうですが、この人も、「国を出るべき人」の一人なのかもしれません。こうなりますと、アメリカの司法家や学者や政治家を、他人事のように見ておれなくなります。アメリカは現在国論が二つに分かれ、南北戦争前夜のようになっているらしいですが、日本は、敗戦以来76年間、ずっと国論が二つになったままです。

 政治家が立派だから、日本の国が維持されていると、最近までそんな気持ちでしたが、今は違います。選挙の一票を持つ、多くの国民が賢かったから、日本の国は崩壊せずにここまで来た。息子たちにもそうなって欲しいし、「ねこ庭」を訪問される方々は、既にそうなのだろうと頼もしくなりました。

 残りは、次回といたします。

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戦う田中英道氏 - 4 ( 日本学術会議と中国科学技術協会 )

2020-12-12 14:37:53 | 徒然の記

 氏はマイクを片手に、「政府の6人会員の不承認を支持する」という、声明文を読み上げます。声明文の共同提案者として紹介されたのは、次の各氏でした。

  伊藤隆 ( 東京大学名誉教授 )   小堀桂一郎 ( 東京大学名誉教授 )

  田中英道 ( 東北大学名誉教授 )  渡辺利雄 ( 元拓殖大学総長 )

  馬渕睦夫 ( 元防衛大学教授 )

 「日本学術会議は、我が国喫緊の課題である、軍事研究を抑制する声明を発信するなど、」「一種の学問統制機関として、機能している。」

 声明文なので、語調が堅くなっていますが、米中対立という、緊迫した国際情勢を思えば、気になりません。まして氏の訥弁など、なんの気にもなりません。

 「我が国の置かれた、国内外の環境を考えるとき、」「かかる状況は、直ちに改善される必要があります。」「こういう時、一部研究者等の中から、このような間違った意見が唱えられ、」「世論を誤らせようとする状況は、学問研究に関わる者の良識に照らし、」「憂慮に耐えません。」

 GHQに作られた「日本学術会議」が、いまだに占領政策を守り、日本の防衛を妨げているのですから、批判されて当然です。氏はここで、声明文を読むのを止め、会場に語りかけました。

 「あらゆる科学技術の発展は、軍事研究の中で生み出されています。」「皆さんが使っているコンピュータもそうですが、」「進んだ技術のほとんどが、そこから生まれています。」

 コンピュータだけでなく、携帯電話も、スマートフォンも、レーザー光線も、人工衛星も気象衛星も、民生用なのか、軍事技術か、現在では区別できなくなっています。

 「それと同時に、国を守るということは、明らかに必要なものであるわけで、」「それを外したり、拒否したりするような人間がいるのなら、」「その人は、国から出て行く以外ないですよね。」

 大きな声で訴え、感情をあらわに喋る人間もいますが、氏はいつも通りの顔で、いつも通りの声です。しかしその言葉は、これまで聞いたことのない、強い批判なので、私には氏の真剣な気持ちが伝わりました。

 「学問にとって必要なものを、最初から拒否するというのは、」「通常の人間ではないんですよね。」「国民でもない訳です。」

 そして、氏はまた「声明文」の朗読を続けました。

 「わが国において、軍事という研究領域における、科学的認識を深めることは、」「わが国の科学の発展に寄与するとともに、外国による侵略攻撃を予防し、」「自由な学問研究の保証された、わが国の安全を保障することなどに資するものである。」

 「日本学術会議の姿勢は、自由な学問研究の擁護とは対照的に、」「学問統制の性格を持つと同時に、」「わが国の、自由な学問研究の安全自体を危機に晒す、」「性格を持つものと、言わなければならない。」

 「学問の自由」を守るためという、日本学術会議の声明が、返って「学問の自由」を統制しているという意見ですから、これほど厳しい批判はありません。反日左翼学者がする、議論のための議論でなく、強弁でもなく、むしろ常識の話です。学者には学者の反論があるわけですから、マスコミもこうした意見を報道すれば良いのです。

 これが「両論併記」ですが、彼らは決してそんなことはしません。アメリカの大統領選挙で米国メディアは、バイデン陣営の応援記事ばかり書いていると、多くの人が驚いていますが、何を驚くことがありましょう。日本のマスコミは、戦後76年間、反日左翼を称賛する偏向記事ばかり報道しています。

 「一方で日本学術会議は、学問研究の自由を欠く、軍事大国たる外国の国家機関、」「その機関と関係のある研究機関との間で、提携関係を結ぶに至っている。」

 おそらく氏が述べたかった、日本学術会議の矛盾点の一つのが、これではなかったかと、私は考えます。建前と本音が、こんなにも違っているのに、マスコミがきちんと報道しないから、国民は何も知りません。

 「それは、我が国の学問的知見及び、科学技術が、」「外国により、軍事的に利用される道を開くものである。」「こうした行為を、声明文と重ねてみるとき、」「わが国の犠牲において、外国の軍事研究を助長する行為と評することも、」「決して不可ではない。」

 現に今回会員として不承認となった、立命館大学・松宮孝明教授は、中国人民大学法学院の名誉教授です。調べればもっと色々出てくるのでしょうが、これだけみても、田中氏の指摘が的を射ていることが分かります。

 「法に基づくわが国の行政機関が、かかる行為に及ぶことは、背理と言う以外ない。」

 まだ少しありますが、ここで氏の話の引用をやめます。どうしてこのような、おかしな事実が改められないまま、まるで「正義の機関」でもあるかのように、日本学術会議が存在しているのか。自衛隊員の入学を拒否する大学が、中国の軍人は受け入れている矛盾など、なぜこんなことが罷り通っているのか。

 田中氏のように、勇気のある学者の発言を知ったのですから、これを機会に私たちは、もっと考える必要があります。次回は、裏付けのデータとして次の二つを紹介します。

   1.   日本学術会議と中国科学技術協会間の協力覚書

      2.  日本の大学 ( 45校 ) が、中国の軍関連大学と交わしている協定

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