今回は、77ページから、生徒たちが書いた作文を紹介いたします。石井氏の説明が、現地の先生たちの想いを伝えています。
「文集『みなみ十字星』は、まさに南十字星の輝きに比するような、実績と言える。」「学校創立以来20年余の間、全校生徒の作文を、一年も欠かすことなく綴ってきている。」「1970 ( 昭和45 ) の創刊号は、ガリ版刷りで、」「手にすると、当時の教師と子供の熱く燃えた心意気が、伝わってくる。」
「当時の教師たちは、今もなお続刊されていることなど、」「想像もしていなかっただろうが、これを引き継いだ多くの教師が、」「価値のある足跡、としていったのである。」
石井校長は、文集の価値を理解し、赴任以来、生徒たちの作文の全てに目を通し、発行に協力します。毎日の児童への挨拶の中でも、「教育の国際化」について話をします。フライパンのテフロン加工では、生徒たちに伝わらないので、「体はインドネシア、心は日本」という言葉で説明し、もっとインドネシアを知り、友達を作りなさいと語りかけます。
たくさん引用してありますが、その中から、小学部 1年生、小学部 3年生、中学部 3年生、3人の生徒の作文を紹介します。
1. 「いんどねしあについて、おもうこと」・・小学部 1年生
2. 「体はインドネシア、心は日本」 ・・小学部 3年生
3. 「インドネシアの近代化の意味」 ・・中学部 3年生
1000人を超える生徒の作文が、毎年冊子になるのですから、保護者だけでなく、文部科学省の官僚や大臣や政治家たちも読めば良いのにと、私は思いました。教育の国際化とは何なのか、東京裁判史観のままの教科書でいいのか、あるいはまた、単純に戦前回帰で良いのか・・様々なヒントがあります。
《 1. 「いんどねしあについて、おもうこと」・・小学部 1年生 》
「なんでここは、よるのこどものてれびは、やらないのかな。」「ここのうみは、なんでこんなに、きたないのかな。」「どうしてここは、ずうっとなつなのかな。」「にほんみたいに、はる、なつ、あき、ふゆがないのかな。」「ぼくは、さいしょ、ふゆにここにきて、」「『あついな』とおもったけど、なれてきたら、」「『そんなにあつくないんだな』と、おもいました。」
「ぼくは、このまえばりとうにいって、うみにはいったり、」「さんぽをしたりしました。」「でも、ここではできません。」「なんでこことにほんでは、二じかんちがうのかな。」「ここのがっこうには、おともだちがいっぱいいるけれど、」「にほんのがっこうにいっても、ともだちがいっぱいできるかな。」「ぼくは、いんどねしあと、にほんは、どちらもすきです。」
一年生ですから、漢字がなく平仮名ばかりの文章です。時差や四季など、色々なことに興味を抱き、日本との比較で海が汚いと、平気で言います。けれども、偏見がなく、日本もインドネシアも好きだと、素直な気持ちを述べています。次の3年生になると、校長先生の話を理解し、自分の考えを伝えています。
《 2. 「体はインドネシア、心は日本」 ・・小学部 3年生 》
「校長先生のお話を聞いて、驚きました。」「体は外国なのに、心は日本、の人が多いと思ったからです。」「私は、せっかくインドネシアにいるのに、」「いつかは、日本に帰ってしまうので、」「インドネシア人のお友達を、作ろうとはしませんでした。」
「だけど、校長先生のお話を聞いて、」「もっとインドネシア語を勉強して、インドネシア人のお友達を、作ろうと思いました。」「私は、インドネシアより日本の方が好きでした。」「今日、校長先生のお話を聞いて、」「インドネシアの良いところを探して、好きになろうと思いました。」
「どうしてかというと、心は日本、体はインドネシアだったからです。」「それから、よく考えてみると、インドネシアの良いところは、」「いっぱいありました。」「だから、校長先生の話を聞いて、良かったです。」
もし生徒たちが、インドネシアでなく、ヨーロッパの国にある日本人学校に通っていたら、このような作文を書いたでしょうか。あるいは、保護者たちは、現地の子供と友達になることに、反対したでしょうか。明治以来、追いつけ追い越せと、西欧を目指していた私たちには、憧れこそあれ、蔑視の念は生じなかったはずです。
先生だけでなく、保護者たちも、なぜアジアが貧しいのか、なぜ不便な暮らしをしているのかについて、正しく教える工夫がいるのだと思います。「万邦無比の日本」とか「世界一の日本」という、自画自賛の話でなく、かっての日本も同じような姿をしていた時があったと教え、他国を軽蔑していけないと、語る必要があります。
先生にとっても、親たちにとっても、簡単な話ではありませんが、これが本当の「教育の国際化」ではないでしょうか。日教組の反日教育など、出てくる幕はありません。素直な子供たちにインドネシアの歴史を教え、日本の過去を語る過程で、教師や保護者、そしてそれを読む私たち自身が変わるはずです。次回は、最後の作文を紹介します。
3. 「インドネシアの近代化の意味」 ・・中学部 3年生