田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

銃声轟く西口広場/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2011-03-01 10:22:24 | Weblog
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「エアーポンプを利用してあの部屋の空気を抜いていたのかしら」
美香が素朴な質問をつぶやく。

「単純に、空気を送り込む装置を逆回転させれば……。
ということではないかも」
「でも、酸素がなくなったから、ココの魚が死んだことだけはたしかね」
「逆流防止弁になにか細工すれば、吸気するかも」
「吸気って空気を吸引すること? 吸血鬼らしく吸うことがすきなんだ」
翔子のジョークで締めくくられた。

いくら考えても、理系に弱いわたしたちではムリムリ。
……とはだれもいわなかった。

エイドリアンはどこかに消えてしまった。
美香は水槽で死んでいった魚をおもっていた。
酸欠で死ななくても。
刃ものできざまれて。
生け作りなどといわれる。
まだぴくぴくうごいていることが。
珍重される。人の食事となる。
結局は人のおなかに納まることになる。

人間だって随分と残酷なのだ。
酸欠で死にはぐった。
悪臭で死にそうだった。
奇異な体験が続いた。
日ごろあまり経験しない考えにひたっていた。

「ソバはいくら細かく細くきざんでも植物の粉」
武士を捨ててソバ職人に成った祖先の言葉。

あまりに多くの血を見た末の決断だった。
と美香にはいまなら理解できる。

生きていくことは残酷なことなのかもしれない。

西口広場は群衆が大津波が引くように消えていた。
あれほどの喧騒が――。
ウソみたい。
後には死体と救急隊員をまつ怪我人。
青い粘塊。
Vの死体だ。
ぶすぶす気化している。
「美香&香世さんだね。ありがとう。
爆発物を適切に処理してくれたのでわれわれには負傷者が皆無だ」
と百地隊長。
「百子。Vバスターズも、負傷者0よ」
兆子が父の脇で百子たちを迎えた。

外の空気をすった。
美香たちも生気を取り戻した。

このときだ。

銃声がした。

警察の機動隊員が美香の視線のさきで倒れた。

「ふせて」

百地の声。

吸血鬼との戦いは、新たな局面にはいった。
エイドリアンは銃を使用してきた。




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