田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

女優 中山美智子/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-03-25 06:27:24 | Weblog
第二章 女優 中山美智子

1

「ああ、なんてことかしら」
美智子はBMWのバックシートで頭をゆすった。

顔が薄紅色にそまっている。
まだ興奮している。
ココチヨイ、酔いごこち。
こんな気持ちは……三年ぶりだ。
覚めたくはない
彼と別れてきたのが心残りなのだ。
彼とはなしができた。
彼とあった。
それも霧降りで……思い出の場所だ。

車は美智子の付き人が運転していた。
中年の女性だ。彼女の母の妹だ。

「里佳子、おばさん。ごめんなさい。連絡もしないで消えちゃって」
「リカコでいいの」
「ふたりだけのときくらい、里佳子おばさんと呼ばせて」
「なにかあったのね」
「直人に会ったの」

上ずった美智子の声に。
里佳子のハンドルを握る手が反応した。
高速をぶっ飛ばしていた車が蛇行した。
タイアが路面をこすった。
タイアのスキット音がした。
あと少しで、事故を起こすところだった。
高速は東北道を東京に向かっていた。
秋の観光シーズンも終わった。
雪山のウインタースポーツのために車で行き来する若者にはまだ早い。
奥日光、那須さらには福島から東北一帯のスキーシーズンにはまだ間がある。
あいまいな季節だ。
道路はすいている。
こみあっていたら、たいへんな事故になったろう。

「ああこわかった」
同じような声とアクセント。
同時に里佳子と美智子が言った。
まさに叔母と姪だ。
「おどかさないでよ」
里佳子が横目で美智子を睨む。
ほんとうに、怒っているわけではない。


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