33
香世のことばで鼓舞された。
バリアもはってくれた。
このステージで戦える。
心おきなく戦える。
東京を混沌とさせた。
混迷の底に落とす。
人々を恐怖に慄かせる。
害意をもって街をさまよう。
獲物をみつけると殺す。
血を吸う。
人外魔境をこの東京に現出させている。
許せない。
斬りつけた。
小手。
鉤爪ではじかれた。
チャリンと金属音がびく。
すかさず浮船で袈裟がけに斬りおろす。
V が右脚を引いて半身に構えたところだった。
左羽根の根もとに浮船がくいこんだ。
肉を斬る。
確かな手ごたえ。
Vの顔がゆがむ。
苦鳴を上げた?
でも、音声催眠を警戒している。
Vの声はきこえないように。
こころはガードしている。
特定した音だけを遮断する。
その技がいま生かされている。
こころに迷いは生じない。
だらりと垂れた片羽根。
斬りおろした浮船。
刃をかえして。
逆袈裟で斬り上げる。
美香とくいの連続技だ。
瞬息の技だ。
間合いに入っての剣技。
必殺の技の連続。
後に引く気はない。
この機に勝負をつける。
防具をつけない。
袋竹刀での鍛錬が役に立っている。
柳生但馬流の天才。
美剣士。
美香の技がさえる。
二度目はない。
これがさいごの勝負だ。
たじろぐVに。
脇構え。右腕を腰のよこに。
Vからは右の拳も見えない。
そして正面からVの胸に突き入れた。
指剣が青く光っていた。
輝いていた。
この技を瞬時にやってのけた。
必殺の突き。
Vは美香の浮船がまた残された羽根に斬りこんでくる。
そう……予測していたはずだ。
だが――Vも想定外の行動に出た。
胸を刺し貫かれでも一歩もひかない。
美香を体ごと抱え込んだ。
スリムな美香の背でガッチリと鉤爪を組んだ。
そのまま――ジャンプした。
ceilingを突き破る。
「オネエ。オネエ。美香、オネエサン!!」
「美香……」
アンデイの声。
翔子の声。
「ミカ!! わたしが病院から呼び出さなければ――」
百子の反省を込めて……悲嘆する泣き声。
あとには、ぼっかりと虚ろな穴が開いている。
満天の星空がみえていた。
注 ピットインの描写は作者のイメージです。
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人々を恐怖に慄かせる。
害意をもって街をさまよう。
獲物をみつけると殺す。
血を吸う。
人外魔境をこの東京に現出させている。
許せない。
斬りつけた。
小手。
鉤爪ではじかれた。
チャリンと金属音がびく。
すかさず浮船で袈裟がけに斬りおろす。
V が右脚を引いて半身に構えたところだった。
左羽根の根もとに浮船がくいこんだ。
肉を斬る。
確かな手ごたえ。
Vの顔がゆがむ。
苦鳴を上げた?
でも、音声催眠を警戒している。
Vの声はきこえないように。
こころはガードしている。
特定した音だけを遮断する。
その技がいま生かされている。
こころに迷いは生じない。
だらりと垂れた片羽根。
斬りおろした浮船。
刃をかえして。
逆袈裟で斬り上げる。
美香とくいの連続技だ。
瞬息の技だ。
間合いに入っての剣技。
必殺の技の連続。
後に引く気はない。
この機に勝負をつける。
防具をつけない。
袋竹刀での鍛錬が役に立っている。
柳生但馬流の天才。
美剣士。
美香の技がさえる。
二度目はない。
これがさいごの勝負だ。
たじろぐVに。
脇構え。右腕を腰のよこに。
Vからは右の拳も見えない。
そして正面からVの胸に突き入れた。
指剣が青く光っていた。
輝いていた。
この技を瞬時にやってのけた。
必殺の突き。
Vは美香の浮船がまた残された羽根に斬りこんでくる。
そう……予測していたはずだ。
だが――Vも想定外の行動に出た。
胸を刺し貫かれでも一歩もひかない。
美香を体ごと抱え込んだ。
スリムな美香の背でガッチリと鉤爪を組んだ。
そのまま――ジャンプした。
ceilingを突き破る。
「オネエ。オネエ。美香、オネエサン!!」
「美香……」
アンデイの声。
翔子の声。
「ミカ!! わたしが病院から呼び出さなければ――」
百子の反省を込めて……悲嘆する泣き声。
あとには、ぼっかりと虚ろな穴が開いている。
満天の星空がみえていた。
注 ピットインの描写は作者のイメージです。
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