田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

夜空に消えた美香/超能力シスターズ美香&香世(完) 麻屋与志夫

2011-03-09 09:35:19 | Weblog
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香世のことばで鼓舞された。
バリアもはってくれた。
このステージで戦える。
心おきなく戦える。
東京を混沌とさせた。
混迷の底に落とす。
人々を恐怖に慄かせる。
害意をもって街をさまよう。
獲物をみつけると殺す。
血を吸う。
人外魔境をこの東京に現出させている。

許せない。

斬りつけた。
小手。
鉤爪ではじかれた。
チャリンと金属音がびく。
すかさず浮船で袈裟がけに斬りおろす。

V が右脚を引いて半身に構えたところだった。
左羽根の根もとに浮船がくいこんだ。
肉を斬る。
確かな手ごたえ。
Vの顔がゆがむ。
苦鳴を上げた?

でも、音声催眠を警戒している。
Vの声はきこえないように。
こころはガードしている。
特定した音だけを遮断する。
その技がいま生かされている。
こころに迷いは生じない。
だらりと垂れた片羽根。

斬りおろした浮船。
刃をかえして。
逆袈裟で斬り上げる。
美香とくいの連続技だ。

瞬息の技だ。
間合いに入っての剣技。
必殺の技の連続。
後に引く気はない。
この機に勝負をつける。

防具をつけない。
袋竹刀での鍛錬が役に立っている。
柳生但馬流の天才。
美剣士。
美香の技がさえる。
二度目はない。
これがさいごの勝負だ。

たじろぐVに。
脇構え。右腕を腰のよこに。
Vからは右の拳も見えない。
そして正面からVの胸に突き入れた。
指剣が青く光っていた。
輝いていた。
この技を瞬時にやってのけた。

必殺の突き。

Vは美香の浮船がまた残された羽根に斬りこんでくる。
そう……予測していたはずだ。

だが――Vも想定外の行動に出た。
胸を刺し貫かれでも一歩もひかない。
美香を体ごと抱え込んだ。
スリムな美香の背でガッチリと鉤爪を組んだ。
そのまま――ジャンプした。
ceilingを突き破る。

「オネエ。オネエ。美香、オネエサン!!」

「美香……」

アンデイの声。

翔子の声。

「ミカ!! わたしが病院から呼び出さなければ――」

百子の反省を込めて……悲嘆する泣き声。

あとには、ぼっかりと虚ろな穴が開いている。
満天の星空がみえていた。




注 ピットインの描写は作者のイメージです。

 


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