田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

百子危機一髪/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2011-03-03 06:44:56 | Weblog
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まだ、残っていた。
隠れていた。
もっと、探すべきだった。

「ライフルを納めている」
「ギターケースよ。オネエ」
「そうね。スナイパーライフルよ。
ライフルは解体した。いまケースを閉じた」

もときたビルにふたりは走りだしていた。
百子が伴走していた。
ふたりの異常にきづいたのだ。 

「エイドリアンじゃないみたい」
美香が百子に叫ぶ。
「彼の脇でエレキ弾いていた男」
美香ははっきりと思いだした。
プラチナブロンドのイケメンだ。

百子との距離が開く。
膝も曲げない。
手もらない。
クノイチ走り。
見る間にスバルビルのフロントに消えていく。
右手を上げていた。
携帯が握られていた。
美香はうなづく。
「スイソウノアッタチカシツヨ。水槽の水をぶちまけた」
オエ!! 臭いまで伝わってくる……ようだ。
水槽の下。
「おとし蓋。開ける。もぐる」
「オネエ。翔子も呼んだ」
「翔子のパパも。百子のパパも。アンデイも、みんな来るように」

たった一発の銃声。
ひとりの犠牲者だ。
それが、美香を絶望と恐怖に落しこんだ。
日本はアメリカのように銃社会ではない。
銃による犯罪はすくない。
それがテロまがいの狙撃による犯行。
初めてだろう。
美香は走りながら震えていた。
激怒していた。

百子は美香の声にしたがった。
地下室。死魚が床に散らばっていた。
すごく臭い。
地下室への階段を駈け下りる時。
パタン。
音がした。


蓋はいま閉じられている。
美香に聞いていなければわからなかった。
ソレほど巧妙にできている地下への抜け道。
どこまでもつづいている。
下水を利用したのではない。
地下鉄工事のついでに掘ったのかしら。
森閑としている。
音がしない。
靴音くらい聞こえるはずだ。
美香ほどではないが。
わたしはクノイチ。
テレパシー能力はないが。
わたしもクノイチ。
聴覚は鋭い。
それが、いま前を走っているはずの狙撃犯の――。
待ち伏せだ。
百子はとっさに伏せた。
ビュウンと銃弾が頬を焼いた。
まさに。
危機一髪。 
柱の陰から。
銃口だけが。
見えている。

「百子。Vは一人じゃないシ」


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