田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

死ぬほど辛いイジメ イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-09-25 20:56:37 | Weblog
9

針金のピエロの形がこわれる。
形がするするととける。
一本の……。
がながいハリガネだけの存在になる。
誠の上半身にからみつく。        
ハリガネはどんどんのびる。
銀色の光るハリガネはながくのびる。
触手のように誠にからみつく。
グルグル巻きついてくる。
 
地獄にいこう。

能力もないのに、どうして無理してさからうのだ。
おれのいいなりになっていれば楽なのに。
いいおめさせてあげるのに。
バカだな。
おまえ。
ほんとにバカだ。
ハリガネが誠にからみついて締め上げる。
いまや、ハリガネは……悪魔の触手だ。 
胸がくるしくなった。
息苦しい。
 
慧はどんなイジメにあっていたのだろうか。
死を選ばなければならい。
死にいたるような。
屈辱と苦しみとはどんなものだったのか。
わからない。
体刑だけではない。
殴られるというだけのイジメではない。
なにかもっとヒドイことがあったのだろう。
悪魔の介入があったような気がする。

死ななければならないようなイジメ。
死ななければ逃げられない。
イジメ。

怒りがこみあげてきた。 
慧、慧くん。
おじさんがどんなことがあっても追及してやる。
慧を死においやったものの正体を白日のもとにさらしてやる。
それがどんなものであるかわたしにもわからない。
だがなにかかならず形があるはずだ。
翔太が担任の先生からイジメられた。
やむをえず東京の転校させていた。
慧のことがわが子のことのようにおもえた。
かならず、おいつめてソイツの実態をみきわめてやる。
慧くん、やすらかに眠ってくれ。
慧に無念さはおじさんがはらしてやるからな。
 
どうしてなんだ。
ソイツはそんなに怖い存在だったのか。
慧なにをされたんだ。
おじさんに、なぜ相談してくれなかったのだ。

なぜだ。

誠は危うくハンドルを右にきった。
路肩の車が接触した。
衝撃がハンドルに伝わってきた。
体が凍えていた。
 
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悪魔は体操教師 イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-09-25 18:02:32 | Weblog
8

勝平の記憶。
誠は、父の勝平から聞かされていた。
朝鮮人の長太郎の親たちが教室にとびこんできたことがあった。
敗戦から間もないある午後だった。
生徒たちは昼食をまだ食べていた。
彼らは、竹刀や木刀を手にしていた。

「いまは戦争中ではないのよ。
それがワカラないのか。
日本はとうのむかしに負けたのよ。
あれから何日たっているのよ。
わからないのか。
うの息子を差別していたぶるなんて、おかしいよ」  

まず担任の橋田先生が勝平たちのみている前で殴られた。
竹刀でたたかれた。
橋田先生も黙ってはいない。
すさまじい乱闘となった。
ビュと竹刀が鳴った。
先生の足が。
――うちおろされた竹刀のしたで。
おかしなふうにまがった。
先生がうめいた。
イジメに参加していた生徒がつぎつぎにおそわれた。
勝平に竹刀をふりあげた父を太郎がとめた。
「ちがうんだ。
勝平くんだけは、ぼくを殴らない。
殴ったことがない」

そのあとが災難だった。
竹刀でなぐられなかったので。
いじめは勝平に集中した。
朝鮮人に向ける差別が勝平に向けられた。
勝平と太郎はそのかわり無二の親友となった。
その友情はいまもつづいている。
父にも学校は地獄だった。
学校はいつでも地獄だ。
誠は学校にいくのは苦役だった。
学校が、教室が地獄になった。
四十数年にわたり北小学校に君臨した橋田先生が……悪魔だった。
クラスは小悪魔にみちていた。

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先生に殺されちゃうよ イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-09-25 11:36:21 | Weblog
7

やはりこの世には〈闇〉の領域がある。
それがいちばん根深く存在しつづけているのは。
学校だ。
誠がはじめて悪魔をみたのは小学校だった。
悪魔は教師の顔をしていたのだ。

それは、教師に暴力をふるわれ。
ぜったいにさからうことのできない状況。
での。
悲痛な認識だった。

泣き叫びながらも……。
それを父にもいえない。

それは誠の小学生の時の体験でもあった。
鼻血で顔を染め。
床に倒れ。
あやまる誠に。
容赦なく竹の鞭がふりおろされた。

生徒はなぐってはいけないのだ。
どんな理由があっても。
けっしてさからうことのできないものを。
抵抗できない幼いものを。
教師が……それも愛の鞭などと嘯いて。
なぐることは許されることではないのだ。

本来は竹の指示棒であったもの。
黒板の重要な文章や絵を指示して。
生徒の注意をうながすはずの。
竹の棒が。
茶筅のようにこまく細かく裂けてしまっていた。
びしっ、びしっ、びしっ。
竹は微小な鋼鉄の線。
微細な憎しみの線。
細い線のいっぽんいっぽんに憎悪が宿っていた。   
誠の背中は苦痛の悲鳴をあげていた。
ミミズ腫れになった。
橋田先生に叩かれる度に、はねあがった。  
先生の顔はこの世のものではなかった。

悪魔の形相だ。

ニッと異様に白い歯をみせて笑っている。
たのしんでいる。
殺されるかもしれない。

殺される。

いまでなくても、いつか……殺される。

廊下をほかの先生が通り過ぎていく。
先生がなんにんも、なんにんも。
顔をそむけて……。
通り過ぎていく。
先生は、なにも見ていない。
先生は、なにも聞こえない。 
先生は、なにも知らない。
先生は、まっすぐ前をみて歩み去る。

ああ、だれか。
神様たすけてください。

それほど、先生は怖かった。


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翔太君のおとうさん、寒いよ イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-09-25 03:42:56 | Weblog
6

とりこまれたときはもう遅いのかもしれない。
あいつだろう。
慧君を、イジメタのは。
あの体操教師だろう。
慧君をイジメタのは。
女子生徒にイタズラをして話題になった。
あいつだろう。

小野崎よ。
男の家長としての存在理由。
戦う責任を。
忘れてはいけないのだ。
 
フロントにさげたアクセサリー。
針金細工のピエロがゆれている。
ロープのさきでゆれていたはずの慧。
の。
イメージがピエロと二重になっていた。

針金細工のピエロが等身大の立像となった。
左に右にはげしくゆれる。
外は、あいかわらず吹雪いている。
いや、雪ははげしくなっている。 

おじさん、寒いよ。   
翔太のおとうさん痛いよ。
痛いよ。     
毎日なぐられたんだよ。   
なにも……わるいことしないのに。
おもしろがって。
女の子のまえで。
なぐられていたんだよ。

女の子の前で殴られたという屈辱は。
誠のものでもあった。

橋田はわざと女子生徒のいる前で。
誠をなぐった。
誠が小学生のときに担任の橋田からうけた。
虐待の数々がよみがえる。

いまはPTSDとなっている。
精神的外傷体験後遺症がよみがえる。

慧と誠の体験が重なる。  

誠がきいた父の体験。
集団疎開の児童を引率してきた先生の首吊り自殺の話し。

翔太も担任の女教師のイジメにあった。
翔太が泣いた。
女性の教師だから、いじめかたがジメジメしていた。
あのまま神沼にいたら性格が歪んでしまった。
それどころか、慧君のようなことが起こらなかったといえるか?
勝平、誠、それに翔太。
親子三代にわたってうけてきた教師からの迫害。
……の。
記憶が。
慧のうけたであろう迫害と重なった。    



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