田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

裏鹿沼/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-04-18 14:32:11 | Weblog
第八章 裏鹿沼

1

鹿沼。
日光の隣町。
舟形盆地にある町。
その鹿沼にある「マヤ塾」。

翔太郎の妻、智子は熱烈なロザリアンだ。
庭には冬を除いたて、バラの芳香がとだえたことはない。
もうすぐ、冬が来る。バラの芳香がきえてしまう季節だ。
夜からの授業の下調べもすんだ。
翔太郎は疲れを癒そうとサンダルをつっかけて庭にでた。

ツルバラのアイスバーグ。
ザ・ジェネラス・ガーデイナー。
ナエマ。
シティ・オブ・ヨーク。
アンジェラが。
白やピンク、薄い黄色の花を咲かせている。

純白のアイスバーグ眺めていた。
携帯がポケットで鳴った。
翔太郎はいままさに自由が丘の孫娘、美智子のことを想っていた。
智子が移植したアイスバーグは咲いているだろうか。
美智子は芸能界に復帰したことだしこれからまた忙しくなるだろう。
どうしているだろう。
などと考えていた。

「お父さん。美智子はブジにかえってきたからね」
電話は娘の里恵からだった。
自由が丘に住む娘里恵、里佳子、孫の美智子のことを意識していた。
このシンクロニシテイに驚きながらもきき返した。

「何の話だ?」
ふいのことだったので、翔太郎声がつい尖った。
「留守電、聞かなかったの」
「何かあったのか」
「美智子がパーティの席からいなくなって、おおさわぎしたの」
「すまん、テレビも見ていない。留守電も聞いていない。
智子がずっとこのところ、おちこんでいたので……」
「なにか鹿沼でもあったの」
「智子が万引きとまちがえられた。
悪意の波動を感じる。
またなにかいやなことが。
たてつづけに起きるようで。
警戒していた。
現に、智子がぬかるみで。
ころんでケガした。
まあ軽い捻挫ですんだからいいが。
おれがそばにいなかったら。
まちがいなく。
大怪我をしていた。
壁の絵が落ちたり。
智子が万引き呼ばわりされてから。
このところ。散々な目にあっている」 


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記者会見(6)/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-04-18 04:41:29 | Weblog
6

 美智子担当の原村に隼人は相談する。

「つぎの関東テレビの出演の時間までに三十分しかありません」

原村が感情的な声でいう。
若い隼人にしきられるのが気にくわないのだ。
しかたあるまい
事務所でも局の人間でもない。
美智子の私設ボデーガードのような存在なのだから。隼人は。

「隼人さんとキリコさんは裏口からでてください。
こちらは会見のつづきをすませて合流します」

 ピザ屋のラップがほどこされた配達車できていた。
 それが幸運だった。
 キリコの車はプレスにつけられなかった。
 局前のロータリーから美智子のBMWがゆつくりとすべりだしてきた。

「隼人」
 呼びかけられた。
 隣にはキリコがいるきりだ。

「隼人。美智子を守れ。彼女を守ってくれ」
「直人。直人なのか」
「美智子をたのむ。
しっかりガードしてやってくれ。
これは大切なことなのだ」

「隼人。なにひとりでつぶやいているの」
 キリコの声がしていた。

 幻聴だった?
 たしかになつかしい直人の声がした。
「なにか他の人の声でもきいたの」
「キリコには……きこえたのか? 男の声がしなかったか」
「だれかとはなしているようだった。直人、直人っていっていた」
「ああ。直人の声がした」
 耳をすましても直人の声はもうきこえてこなかった。
 あたりを見回しても、もちろんキリコのほかには誰もいない。
 美智子を想う直人の残留思念がぼくのまわり浮遊している。
 直人の携帯をポケットの中で隼人はしっかりとにぎりしめた。

「直人の顔は血だらけだった」
 隼人が悲しみに耐えるような声をだした。
「声だけでなく姿も幻視したのね」
「ああ、直人は血だらけだった」
 隼人はさらに強く携帯をにぎりしめた。
 携帯が手の中で振動した。
 ギクッとした。
 マナモードにしておいたのを忘れていた。
「直人。ついてきている」
 美智子の声がひびいてきた。
 まだハイテンシヨンだ。
 直人とはなしている気でいる。
「わたし怖い」



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震災前の穏やかな朝はもどったか? /麻屋与志夫

2011-04-17 11:20:53 | Weblog
4月17日 日曜日

●静かな目覚めだった。
震災以来――福島方面へ、ヘリコプターが飛び交った。
轟音に起こされた。
不安な目覚めがつづいていた。

●「恋空」で有名になった観覧車のある千手山公園。
桜が散りだした。
2階の書斎から花吹雪が観られる。

●裏庭のアンズの花も散ってしまった。
白木蓮もおわり。
震災騒ぎで杏花も木蓮の花もゆっくりとたのしめなかった。
きょうは桜を観に行こうと思う。

●金曜日には東京にもどった。
年に2回受けている定期健診。
尿酸値が少し高かった。
あとはまつたく異常なし。
ありがたいことだ。
まだまだ塾の教壇に立てる。
勉強の遅れている子に特訓を再開しょう。

●尿酸値が高いのは肥満したからだ。
このところ運動不足だった。
1月ほど風邪が長引いた。
体力をつけるといって、少し食べ過ぎた。
2キロふとってしまった。
それに、お酒は、ほんとうは止めた方がいいのだ。
「ストレス解消になるから少しはいいでしょう」
わたしがショボンとしているのでO先生がなぐさめてくれた。

●桜の花びらが部屋にひそやかにはいってきた。
桜の花の舞い込む部屋で文章をかけるなんてしあわせだ。
東京と鹿沼と故郷をもてるなんてこれまたしあわせだ。

●ただ教育や文化の落差がやたらと目につく。悲しい。

●鶯が頻りと鳴いている。

●猫のブラッキがのどをごろごろさせてPCの脇にいる。

●穏やかな朝。
だが震災前とはビミョウニかわったわたしの心境。
それが小説にも表われてくるだろう。
どんなかわりかたをするのだろうか?


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記者会見(5)/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-04-17 07:48:30 | Weblog
5

「だったら、静かに休むといいわ」
医務室で、なんどもうがいはした。
「水はあとで分析するから」
白衣の看護師が言う。
気をきかしてデスクにもどっていく。

「どういうことなんだ」
自問するように隼人がキリコと並ぶ。
部屋の隅のソファにかける。

「隼人を脅かすのがねらいかもね」
「ぼくはフロリダからきたばかりだ。
だれがぼくの到着を知っているというのだ」

隼人は辺りを気にしている。声を低める。
看護師はすこし離れた処にいる。
声は聞こえていないはずだ。
それでも、さらに声を低める。

「おこらないで。あくまでもアタシの考えよ。
だって、美智子さんと一緒にいて。
事故死したのは直人でしょう。
こんどだって、美智子さんに怪我はない。
あくまで隼人にたいする警告とみたらどうなの。
おれたちは、おまえさんの存在に気づいている」

隼人はさらに声をひくめる。
いままで、美智子さんの周辺でなにも起きなかった。
盗聴器で身辺はたえず見張られていた。
それでもなにも起きなかった。
それなのに、ぼくがきたとたんに……。
辺りに警戒の視線をむける。
キリコの耳もとでささやく。

「そうか、おれの任務がもれている。
そういうことか。
FBIかフロリダ警察に内通者がいる。
麻薬シンジケートから汚い金をうけとっているやつがいる」
「わたし兄貴に連絡してくる」

「直人の夢を見ていた。
あんなに夢でもいいから。
会いたいと思っていた直人の夢見た」
美智子はすがるような眼差しをしている。
隼人をじっとみている。
直人のことをおもいだとている。
水に何が混入されていたのか。
美智子が狙われているのか。
いまのところはなにもわかっていない。
美智子の顔色は平常にもどっている。 
美智子がベッドでつぶやいている。

「直人の夢みたわ」
記者たちの声が廊下でする。
背後でシャッターをきられながら。
キリコがすばやく部屋にもどってくる。
「隼人が直人に似ていることに気づいたひとがいるみたい。
美智子さんのモト彼が生きていた。なんていってる。
ヤバいよ。どうする」
「どうします」



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不穏な潮騒がきけてくる? /麻屋与志夫

2011-04-16 20:32:33 | Weblog
4月16日 土曜日

●餃子会館はやっていなかった。
入口には有刺鉄線が張り巡らされていた。
改築でもするのだろう。

●しかたないので某ホテルでハンバークをたべた。
おせじにもウマイとはいえないあじだった。
食材屋の冷凍物をあたためたのかな?
利益優先でこの町の人はものを考えすぎる。
その弊害があらゆる商店ででている。

●オリオン通りはシャッタ通りとなっていた。
はやく再生しないと、寂れるばかりだ。

●11時20ぷんごろ強い地震があった。
東武デパートの落合書店で買ったSPECⅢを読んでいた。
驚いて床に座り込むひともいた。
わたしは悠然と本を読みつづけていた。

●なにかおかしなことばかり起きる一日だった。
詳細は書き止めないが、平穏な日常の調和にホコロビがみえてきたようだ。

●どこがどうということはわからないのだが、
なにが地震のまえとはビミョウにちがうのだ。

●テレビをみても食べ物ネタが多すぎる。
一億総グルメなどといっている。
なにも、かわっていない。
これでいいのかな?
これからまちがいなくやってくる深刻な不況に。
どれだけの飲食店が耐えられるだろうか。

●東北で飢えている人がいるのに。
飢えないまでもなかなか食料がてにはいらないのに。
あじのよしあしをいうのは不謹慎なのかもしれない。
などと、ハンバークのあじをおもいだしながら思った。
もう外食はしない。
カミサンの作ったものだけを食べよう。

●地域差があらゆる分野で広がるだろう。
とくに教育の格差はおどろくべきものになる。
そんな予感がする。
教科書が厚くなる。
難しくなる。
どうなるのだ???

●戦後日本は文化国家の樹立を目指した。
もう一度、文化についてかんがえなおさなければならないだろう。

●どこに流れ着くのだ。日本。
社会の仕組みが液状化してしまった。
そのことだけでも、認識しておく必要がありはしないか。


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記者会見(4)/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-04-16 19:23:02 | Weblog
4

後ろでシャッターを切る音がする。
美智子の悲鳴のようにきこえる。
耳障りな音。
シャッターの音。

「わたしの友だち。心配ないから」
ふいに現れ、美智子をかかえて走るふたり。
警備の局のガードマンが声をかけた。
「あんたら、なにものだ」
「わたしの友だち。心配ないから」
 美智子の返事だ。
 意外としつかりした音声だ。

「舌先がピリッとしびれた」 
「医務局へいくほうが」
局の男が言う。
「そうして」
「中山さん。だいじょうぶですか」
美智子担当の男、原村が声をかける。
地味な紺のストライプの背広をきている。
目立たないように配慮しているのだ。
「心配しないで。なんともない」 
神経がぴりぴりしていた。
だれかに襲われるのではないかという不安があった。
水が舌先にぴりっときた。
それで恐怖におそわれた。
パニックを起こした。
「水はすぐに吐き出した。一滴も飲んでなかった」
それでも、医務室の椅子にすわると、
「直人。わたし こわい」
と……隼人の手を放さない。
「美智子さん。
わたしと隼人がついている。
守るから。二人で守るから。
すこしよこになったら」
キリコがおとなびたようすで美智子をいたわる。
美智子は直人と呼びかけたことに気づいていない。
それでも素直に医療用の機能つきのベッドに横になる。
すんなりとした両脚をそろえてのばす。
目を軽く閉じる。

「直人がきてくれてよかった」
気丈にふるまっている。
だが、かなり混乱してもいる。
PTSDから立ち直っているわけではなさそうだ。
いや隼人の出現が。
あらたな悩みをもたらしてしまったのかもしれない。
「水はのまなかったわ」 


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精神的津波がやってきた? /麻屋与志夫

2011-04-15 23:24:41 | Weblog
4月15日 金曜日

●隣の福島県では、そして東北地方では震災で大変なことに成っている。

●わが町鹿沼にも震災被害者が避難してきている。この街はむかし帝国繊維の工場があって、大勢の女工さんが東北地方からきていた。この街の若者と結ばれた。その縁故関係もある。

●ともかく、大変なことが起きた。これから真綿で首を絞められるように、わたしたちの生活はさらに苦しくなるだろう。生活基盤を失った苦しみ。肉親を失った悲しみは時がすぎてからさらに深まるものなのだ。

●そして、いままでの、戦後の考え方がおわりを告げたようにわたしには思われる。

●目に見えない心の荒廃が起きている。いまは――価値観の転換期にあるような気がする。

●そのことをこれから、ゆっくりと、考えたい。書いていきたい。

●精神的な津波がじわじわと迫ってきている。いやもう、こころは不安の海にどっぷりと漬かってしまった。

●具体的なことは、これから書いていく。物書きには書くことで戦うことしかできないのだから。

●みなさんもこれからどう社会がかわっていくか共に考えていきませんか。

●どう変革していくのが、betterなの考えてください。



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記者会見(3)/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-04-15 00:13:09 | Weblog
3

 中山美智子はほほえんでいる。
 隼人の存在に気づいた。
 不安が払拭された顔だ。
 でも、プレスの者はだれもそのことには気づかない。

「どうだ」
「あやしい感じのひとはいないみたい」

 キリコが隼人を見上げてささやく。
 隼人の内部ではかすかにアラームベルがなりひびいている。
 美智子はいまおおぜいのプレスの質問にあざやかにこたえている。
 頭のいい女性だ。
 これだけのひと、さまざまな質問。
 それらの質問を、あるときは真剣に。
 またあるときは軽くいなし、もう一時間ちかくなる。
 直人が死んでからの三年、つらく悲しい日々に耐えた。
 孤独に耐えぬき、みごとにカムバックした。
 そして、主演女優賞をかちとった。
 いまふたたび脚光をあびている。
 芯はつよい。
 美しいだけではない。
 悲しみにたえしのぶつよさがある。
 隼人は任務とはべつに、直人の死因を調べたかった。
 直人が転落事故などおこすはずがない。
 報道カメラマンだった彼はむろん榊一族だから武芸にひいでていた。
 忍びの技にもたけていた。
 それで裏で麻薬捜査官の仕事をするようにスカートされたのだ。
 日光は先祖の土地だ。
 ぼくとちがい、日本で生活していた彼には馴染みの場所だったはずだ。
 それがあの程度の傾斜で転落するなんてことがおこるわけがない。

「隼人」
 キリコが叫んでいる。
「水よ。水」
 美智子が口をうるおすために含んだ水をはきだした。
「美智子さん。美智子さん」
 隼人とキリコが左右からかかえて廊下を走る。


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記者会見(2)/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-04-14 05:01:49 | Weblog
2

「日本に出向した目的知ってる。
直人さんの三回忌の供養のためだけに。
フロリダからきたんじやないこと。知ってるよ」
「隠してもだめらしいな」
「いわなくていい。わかっているから。
……わたしたち黒髪のモノも。いったでしょう。
おなじような仕事をしてる」
「そうらしいな。世間では、おれたちの活かしかたを知っている。
そういう偉いさんがいるってことだ」

司会者の男がマイクを持った腕を下ろした。
美智子が卓上に並んだマイクの前で話しだした。
記者会見をドタキャンした謝罪会見だった。
なにもそれだけで、記者会見をすることはない。
でも宣伝にはなる。

謝罪会見とはいうものの――。
賞味期限改ざんなどの謝罪ではない。
華やかなムードが漂っていた。
部屋はプレスの腕章をつけた男女で満室になっていた。
隼人は注意深くひりとひとりに視線を向ける。
あやしい人物はいない。
プレスの多さに、美智子の人気を知った。
うれしかった。
彼女は輝いていた。

「この春にクランクインする作品は、監督は香取俊。
タイトルは『戦火の村で』。
場所は中近東のある村。
ストーリーは日本から来た報道カメラマンと。
村で日本語を教えている――
NPOから派遣された女子大生の愛の物語です。
ラブストーリです。
わたしはその女子大生の役で出演します」
そこで彼女はほほえんだ。 
ひととおり謝罪がすむと、受賞第一作の新作発表となった。

謝罪のほうはさっと流した。
パーティー会場をぬけだした。
プレスのインタビューをドタキャンした。
そのことには、あまり触れなかった。
さすがに演出がいきとどいている。
霧降まで昨日でかけた話を。
むしかえすことは得策ではない。
それらの話を省略した。
事務所サイドの賢明な判断によるものだろう。



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第七章 記者会見/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-04-13 13:54:38 | Weblog

第七章 記者会見        

1

沈黙をやぶったのは、携帯の着信音だった。
「わたし、美智子。やっぱおかしい。だれかに監視されてる」
東北道で襲われたあとだ。
自宅からは盗聴器がはつけんされている。
美智子の不安はよくわかる。
「いまキリコの車で、事務所にむかているから」
「こっちへきて」
美智子は出かける時、すがるような目をしていた。
一緒に行ってもらいたいのに……。目がそういっていた。

隼人もガードにつきたかった。
盗聴器の探すのにを優先したことを悔いた。
盗聴器を探すのに時間をかけ過ぎてしまった。
盗聴器を撤去するのに手間取った。
美智子よりだいぶ遅れて家をでた。
盗聴器はほとんど各部屋にしかけてあった。
場所によって機種もちがう。
ただだいぶ古いものだった。
ということは。
中山邸はずっと監視されていたということだ。
その監視される理由がわからない。
だから、隼人も不安で、なにかないかと後にのこった。
盗聴器をしかけるなどということは理不尽だ。
どうかんがえても異常だ。
恐ろしい。

隼人はあまり人前に出たくはなかった。
めだつのはゴメンだ。
トラブルの原因をつくる。

美智子のモト彼が生きていた。
なんてさわがれたくない。

そんなことがあれば。
美智子に迷惑をかける。
それもあって。
美智子と行動はともにしなかった。
事務所から来た男。
美智子担当の原村に任せたのだった。

「いまどこ」
「六本木の東都テレビ。これから記者会見。
プレスのひとに。きのう世間をさわがせたこと。
わびてから。新作発表があるの」
「テレビ局にすぐむかう」

「いろいろはじまる。ハジマルヨ」
キリコがいった。
かなり真剣な表情をしている。



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