親切が 却ってアダに なりました

満員電車で…立っている僕です。
暫くすると…僕の前の席が空きます。
僕は少し先で立ってる…おばあさんを呼びます。

『ここ席…空きましたからどうぞ』
誰もがやる…ごく普通の行動です。
おばあさんは…申し訳なさそうに座ります。

すると…おばあさんは僕に尋ねます。
「良い声ですね…お仕事はアナウンサーさん」
聞かれた僕は…少し迷惑そうに照れてしまいます。

そして「もう一度…声を出して」と要望されます。
車内の周りの見知らぬ人々も…耳をそばだてます。
僕は何故か高い声で『勘弁して下さい』と…云います。

しかし御年よりは…執念深いです。
「お年は？」「結婚は？」「何処に住んでいるの」
質問攻めで…どうにか僕を喋らそうと躍起になってます。

でも『いや～』と…裏声で交わす僕です。
車内は完全に…僕の話し声に微妙に期待してます。
おばあさんは…その期待に応えんが為に話しかけてきます。

すると…おばあさんの携帯電話が鳴ります。
5回のコール音で気付き…慌てて電話に出ます。
電話に救われた僕は…ホッと胸を撫で下ろします。

しかし…おばあさんの声は大きいです。
僕に注目していた方々は…迷惑そうに他所向きます。
途中で乗車した方は…おばあさんと僕を知り合いと思い睨みます。

でも…おばあさんの問い掛けに救われた僕です。
席を譲っただけなのに…尋問され続けた僕なのです。
そして車内の携帯電話は…僕がいけない雰囲気だったのです。

おばあさんが…電話中に下車する僕です。
しかし「ありがとう」の声に…『どうも』と答えた僕です。
おばさんも周りの方も…小さく笑っていたのは気のせいですか。
もしかして…これって女難ですかね。