昨年の6月、妙な樹木を畑沢の某沢で見つけました。丸い実がブドウのように房になって垂れ下がっています。秋の赤い実の場合は、よく見慣れていますが、このようなものは初めて見ました。昔は、沢の山裾もきれいに下刈りされていましたので、沢筋を歩いていても、特段、目立ったものはありませんでした。ところが、沢の草刈りなどの手入れがされなくなり、樹木も自由に伸長できるようになりました。元々からあったのでしょうが、最近になって初めて私も目にすることになったようです。
しかし、目にしたことはしたのですが、いつものように全く見当がつきません。もう、9か月近くもそのままにしてしまいました。ところが、山形市内の御近所でマンサクのお話をしていたところ、その側に植えられている樹木の話になり、
「これはキブシと言って、花が藤の花のように房が垂れ下がる」
と説明してくださいました。その御近所の方は、尾花沢市荻野袋出身で、とても植物に深い造詣をお持ちです。いつも私は教えていただいています。さらに、
「キブシは本当は木の藤の意味だけど、キブシと呼んでいる」
ともおっしゃいました。ここまで説明していただくと、忘れっぽい私でも二度と忘れることはないでしょう。また、花が藤のように垂れ下がることを聞いて、「もしや」と思い、インターネットで「キブシ」で画像を検索したところ、出てきました。葉も実もキブシそのものでした。さすが尾花沢出身の先輩です。私がいくら探しても、分からなかったことをいとも簡単に解決してくださいました。なお、キブシの名の由来には、二つあって、一つは「木の藤」で、もう一つは「木の五倍子(ふし)」だそうです。五倍子とはヌルデの瘤から作る染料で、昔はその粉で女性の葉を黒く染めたそうです。あの気持ち悪いお歯黒のようです。キブシはその五倍子の代用にされたということです。