青山透子氏の『 日航123便墜落 遺物は真相を語る 』という本を読みました。
内容は、
はじめに
第一章 この墜落は何を物語るのか 国産ミサイル開発の最中の墜落
第二章 焼死体が訴えていることは何か 乗客乗員全員分の未公開資料から
第三章 遺物調査からわかったことは何か 機体の声が聴こえる
第四章 証拠物と証言が訴えていることは何か 未来の有り様を考える
あとがき
というものでした。
この事故に興味を持ったのは、すでに事故調査委員会の調査結果も発表されている40年近く前の事件の記録を開示させないという判決が、どう考えても納得いかなかったからです。
判決の理由は
「遺族は和解したからそれで終わりである」
「日航は単なる民間企業だから事故調査にこれ以上協力する必要もない」
「事故調査報告書の書面で十分であるから情報は公開しなくていい」
ボーイング社の修理ミスが墜落の原因だと結論づけているのだから、日航は公開すれば良いのにと思いました。
それでも被害遺族に寄り添うべき立場の日航が、公開を拒否し続けている・・・。
本の中では、科学的視点からの考察と事故調査委員会の発表との間の矛盾を、理路整然と述べ、かつ、その隠蔽せざるを得ない理由(日航を緘黙にする理由)を自衛隊が起こした事件ではないかと推測しています。
そして、開示請求棄却の理由は、その背後に組織の閉鎖性と絶対的な上下関係がもたらした事件が存在する可能性があるとしています。
かつて、軍事力をもって世界に進出しようとした日本の歴史の中で、兵士が理不尽な上官の命令に振り回され苦しんだ事実があったと聞いています。
総員玉砕せよ 水木しげる
現在も一昨年、自衛官のセクハラ問題が大きな話題となりました。
上官の命令ではないでしょうが、組織の閉鎖性がもたらした事件かも知れません。
そんな中、この本で強く印象に残った部分がありました。
ドイツの軍人法第11条では、『(1)兵士は上官に従わなければならない。・・・ただし、命令が人間の尊厳を侵し、勤務目的のために与えられたものでない場合は、それに従わなくても不服従とはならない。(2)命令はそれによって犯罪が行われるであろう場合には、兵士は命令に従ってはならない・・・』とある。
軍人も「制服を着た市民」として、基本的人権を守られる・・・ということなのでしょう。
日本の自衛隊法には、このような項目はないそうです。
永田町も自衛隊も、情報が公にならない組織は、腐敗が早いということなのかも知れません。
当事者にとっては辛いことでも、情報を公にすることが組織を守る一番の近道だと思うのですが。
災害救助にあたっている自衛官の献身的な振る舞いを見るにつけ、隠蔽された諸問題の存在が、残念でなりません。
そんなことを感じてしまう一冊でした。