伊達秋雄氏の『 司法と人権感覚 』という本を読みました。
伊達秋雄氏は、砂川事件一審において、日米安全保障条約によるアメリカ軍の駐留は日本国憲法違反とする判断を示した裁判官です。
内容は、
はしがき
刑事裁判と裁判官論
司法反動
刑法改正
旧法の回顧
労働基本権
プライバシー保護
裁判時評
大正期のヒューマニズムと昭和初期の社会科学によって洗礼を受けた一人の裁判官の所感と云うべきものです。(・・・と、何かに書かれていました)
昭和61年11月初版の本で、少し読み慣れない文章ではありましたが、とても勉強になりました。(私がどこまで理解しているかは解りませんが・・・)
特に印象に残った部分は、
『人権は常に国家の治安の前に譲歩を迫られる危険がある故、厳しい警戒を怠ってはならない段階にある。』
『憲法九条の趣旨は、本来明白なものであった。それは、従来の国家の防衛と平和を戦力によって維持し、国家間の紛争を戦争によって解決するという国際社会の通念に反して、戦力不保持の原則に立って戦争を放棄し軍備によらない国の防衛に徹することを内外に宣言したもので、徹底した平和主義を採択したものであった。それはまさしく空前の世界史的意義を持つものであった。』
『「法治主義」とは『国民よ法を守れ』ではなく『国家よ法を守れ』である。』
『民主国家に於いて、行政機関に秘密があってはならない。』
『政府の政策を遂行するために、ただ方便として刑罰を用いることは、深く慎まなければならない』等々。
また、「貧民による森林窃盗が多かった木曽の山で、ある代官が、刑罰と併せて必要な薪を与えるという裁判をしたら違反がなくなった」・・・そんなエピソードも紹介されていました。
裁判官の眼から見た「憲法」の解釈が興味深く、特に戦前の大日本帝国憲法と日本国憲法の比較から、戦後の平和憲法制定の意思が読み取れたことは収穫でした。
また、コンピューター技術の向上により、国民のプライバシーが侵される危険を、この時すでに予見していたことは、驚きでした。
本屋さんにも出版社さんにも近くの古本屋さんにさえなく、諦めかけて図書館に行ったところ、司書の方が他市の図書館にあるものを取り寄せてくれて読むことができた本です。
とてもためになる本でした。
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