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日本で、たまたま訪れた公民館にあった本。フィンランド語を研究しており、昨年行ってもみた、ということで、興味を持って読んでみました。日本語の本は久しぶり。
渡辺久子他 編著 『子供と家族にやさしい社会 フィンランド』 明石書店
フィンランドがここ数十年で、いかに社会による子育て支援のしくみを充実させてきたか、ということが複数の著者によって述べられています。フィンランドは何らかの理由でかつての極端な少子化状態を脱し、最近はあるていど高い出生率(それでも、人口を維持できるレベルには達しない)を維持しているらしい。ただし、この本で述べられている支援がその要因なのかどうかは、実証的に検討されるべきだと思います(フィンランドの例に限りませんね)。
ずっと前(2005/5/17の記事)、赤川学『子供が減って何が悪いか!』という本の感想を書きました。その本の趣旨に今も賛成で、「結婚しても共稼ぎ、仕事も子育ても犠牲にせず、という「勝ち組」ライフスタイル」に偏った支援がなされるのは問題だと思います。この本も子育て期の収入減を補う支援策に多くのページを割いて説明をしてはいますが、同時に子や親が抱える問題を共有したり、相談できる場の整備(と人材の確保)に力が入れられていることも述べています。
好感が持てるのは、このようなシステムに、医師などの専門家による民間の活動に端を発し、のちに公的施策として取り上げられたものがかなりあるらしいことです。中にはそういう市民活動家から、そのような施策を担当する役人になった人もいるそうな。フィンランドの市民社会が成熟していることを感じました。
ということで、紹介されている支援策は、読む限りよさそうに思えるのですが、問題点(やっぱり、あるはず)がほぼ語られていないので、逆にどこまで本当に評価できるものなのか分からない。いいことしか見せてくれないのでは鵜呑みにはできないかも、という印象が残ってしまうのは、伝え方として成功なのかちょっと疑問です。
もう一つ疑問なのは、本の構成。いくつかの講演の内容がそのまま収録されているからか、複数の著者によって、同じ子育て支援策の情報について再三論じられるなど重複が多い(しかも微妙に違ったりして混乱する)。章どうしの関連も希薄で、一冊全体としてまとまった内容が伝わってこない。こんなに面白いトピックについて、最前線で活躍する人々が論じているのに、ちょっともったいない気がします。
ところで面白いというか、衝撃的だったのが、収録された統計。たとえば子育て期の家庭について、額面の収入と、子育て支援のための税控除・補助金などによる再分配後の収入を比べたデータ。当然ながらほとんどの国で、再分配によって収入は上がり、支援策の恩恵を受けているのですが、そのデータ内では日本のみが、逆に収入がちょっと下がっているというのです。統計は算出方法によって違いが生じるものだから、元データに戻って確認するなどしないと確実なことは言えませんが、本当だとすればすごい話です。再分配の方法が悪いか、分配するといって徴収した税金の一部が、分配されないでどこかに吸収されてるか。。。 いずれにしても、日本の少子化が食い止められそうだと思えるデータではありませんでした。
ともあれ、個人的には、少子化どうこうより、実際に生まれてきた子供たちが、どこに生まれたのであれみんな、大切に育てられる状況を促進するような社会であってほしいものだと思います。
渡辺久子他 編著 『子供と家族にやさしい社会 フィンランド』 明石書店
フィンランドがここ数十年で、いかに社会による子育て支援のしくみを充実させてきたか、ということが複数の著者によって述べられています。フィンランドは何らかの理由でかつての極端な少子化状態を脱し、最近はあるていど高い出生率(それでも、人口を維持できるレベルには達しない)を維持しているらしい。ただし、この本で述べられている支援がその要因なのかどうかは、実証的に検討されるべきだと思います(フィンランドの例に限りませんね)。
ずっと前(2005/5/17の記事)、赤川学『子供が減って何が悪いか!』という本の感想を書きました。その本の趣旨に今も賛成で、「結婚しても共稼ぎ、仕事も子育ても犠牲にせず、という「勝ち組」ライフスタイル」に偏った支援がなされるのは問題だと思います。この本も子育て期の収入減を補う支援策に多くのページを割いて説明をしてはいますが、同時に子や親が抱える問題を共有したり、相談できる場の整備(と人材の確保)に力が入れられていることも述べています。
好感が持てるのは、このようなシステムに、医師などの専門家による民間の活動に端を発し、のちに公的施策として取り上げられたものがかなりあるらしいことです。中にはそういう市民活動家から、そのような施策を担当する役人になった人もいるそうな。フィンランドの市民社会が成熟していることを感じました。
ということで、紹介されている支援策は、読む限りよさそうに思えるのですが、問題点(やっぱり、あるはず)がほぼ語られていないので、逆にどこまで本当に評価できるものなのか分からない。いいことしか見せてくれないのでは鵜呑みにはできないかも、という印象が残ってしまうのは、伝え方として成功なのかちょっと疑問です。
もう一つ疑問なのは、本の構成。いくつかの講演の内容がそのまま収録されているからか、複数の著者によって、同じ子育て支援策の情報について再三論じられるなど重複が多い(しかも微妙に違ったりして混乱する)。章どうしの関連も希薄で、一冊全体としてまとまった内容が伝わってこない。こんなに面白いトピックについて、最前線で活躍する人々が論じているのに、ちょっともったいない気がします。
ところで面白いというか、衝撃的だったのが、収録された統計。たとえば子育て期の家庭について、額面の収入と、子育て支援のための税控除・補助金などによる再分配後の収入を比べたデータ。当然ながらほとんどの国で、再分配によって収入は上がり、支援策の恩恵を受けているのですが、そのデータ内では日本のみが、逆に収入がちょっと下がっているというのです。統計は算出方法によって違いが生じるものだから、元データに戻って確認するなどしないと確実なことは言えませんが、本当だとすればすごい話です。再分配の方法が悪いか、分配するといって徴収した税金の一部が、分配されないでどこかに吸収されてるか。。。 いずれにしても、日本の少子化が食い止められそうだと思えるデータではありませんでした。
ともあれ、個人的には、少子化どうこうより、実際に生まれてきた子供たちが、どこに生まれたのであれみんな、大切に育てられる状況を促進するような社会であってほしいものだと思います。
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