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日本はウクライナ危機にどう向き合うべきか 山本太郎×伊勢崎賢治(東京外大教授)緊急対談 緩衝国家における平和構築

2022年03月08日 | 四要素論

日本はウクライナ危機にどう向き合うべきか 山本太郎×伊勢崎賢治(東京外大教授)緊急対談 緩衝国家における平和構築
https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/22870
2022年3月3日 長周新聞

 れいわ新選組の山本太郎代表と東京外国語大学教授(平和構築学)の伊勢崎賢治氏が、戦争状態に陥っているウクライナ情勢をめぐって対談した。伊勢崎氏は、2000年に国連PKO上級幹部として派遣された東ティモール(インドネシアから独立)で現地の県知事を務め、01年からは国連シエラレオネ派遣団の武装解除部長として内戦終結に貢献。03年からは日本政府特別代表としてアフガニスタンでの武装解除を担当した。対談の模様はユーチューブのれいわ新選組チャンネルで公開(2月27日)されている。その一部を要約して紹介する。

※補足
字幕入り【山本太郎 in JAZZ LIVE SHOW #2】 ゲスト:伊勢崎 賢治 氏


 山本太郎 さまざまな国で武装解除や停戦交渉など紛争解決にかかわってこられた伊勢崎さんの目からみて、今のウクライナでの停戦はハードルは高いと思われるか?


伊勢崎賢治氏

 伊勢崎賢治 大変難しい状況だ。私はウクライナには行ったことがないので本当は語りたくないが、ロシアとNATO(北大西洋条約機構)との狭間にあるような「緩衝国家」に対しては昔から問題意識を持っているので、その観点から語りたい。

 三つの点を整理したい。今プーチン大統領がやっていることについて、日本のメディアは「侵略である」としている。これは国際法違反だ。「武力侵攻である」という意見もある。これは以前に米国もやっているし、旧ソ連時代にもアフガニスタン侵攻があった。私はいわゆる日本人のなかで起きている「侵略戦争か、そうではないのか」という呼び方の議論はしたくない。犠牲になる人がいることは同じだからだ。

 一番訴えなければいけないのは、侵略であろうが侵攻であろうが、今回の出来事は国際社会の限界を示している。国際法の世界では、人類は戦争が起きないようにとり決めをしながら日夜努力してきた。今は国連憲章が一番力をもっている。

 今回のケースには難しい問題があって、ウクライナという一つの国の中にロシア系の分離独立派の人たちがいて、プーチンは侵略する前にその地域の独立を認めた。その「独立」した地域(人たち)から頼まれて軍事侵攻したという形をとっている。これが国際法の一つの限界だ。国連憲章で認められている集団的自衛権にあたる、という言い分だ。


山本太郎氏

 山本 そういうケースであれば、あのようなことも可能になると…。

 伊勢崎 国際法的にはスレスレだ。それでも一つの主権国家の中に分離独立を訴える人たちがいたとして、それを軍事的に支援するというのはどうかという話はある。分離独立、民族自決といえば格好いい。植民地からの独立は、国連憲章でも保障されている権利だ。ほとんどの被植民地はそれで独立した。東ティモールもインドネシアから分離独立しようとした。当時は冷戦時代で、独立派は「アカ」と呼ばれていた。日本も米国も欧州も「あいつらはアカだからインドネシアが正しい」といっていた。

 山本 共産主義者ではなく、独立派を「アカ」と?

 伊勢崎 確かに共産主義的な理念で建国するんだということを(東ティモール独立運動の)リーダーがいっていたことはある。ソ連が支援したからかもしれない。だが、主権国家に楯突くものは「アカである」と当時はいわれた。結果的には(主要国は)応援し、(独立を)祝福もした。だから分離独立、民族自決というのは結構厄介な問題だ。あんまり無制限に認めてしまうと内戦になってしまう。

 例えば日本でも、私は沖縄の人たちにシンパシーを感じて沖縄独立運動を主張した人間の一人なのだが、そうなると日本の世論としては国家の概念が変わり、これを中国が支援したりすると内政干渉にもなりかねないという論議になる。格好いい割には大変問題のある概念でもある。

 山本 逆に分離独立という動きを偽装して…ということも可能になるということか?

 伊勢崎 その通りだ。それは逆に米国がラテンアメリカなどでやってきたことでもある。キューバなどの政権を倒すために、その国のいわゆる民主化グループを支援するという形でCIAもいろんなことをやった。リーダーの暗殺までやるわけだ。


2014年1月、親露派のヤヌコヴィッチ大統領弾劾を求める大規模な騒乱が起きたウクライナの首都キエフ。背後で米国NEDが資金援助をおこなっていた。

 ウクライナもそのなかの一つだ。米国は民主化支援という形でCIAとは別に(全米民主主義基金=NEDなどを使って)政権転覆をやった経緯がある。その一つが「オレンジ革命」(2004年)だ。これも国際法スレスレだ。

 これから国際法が発展するとしたら、私が国際社会に訴えられることは、どんな場合でも国連加盟国の施政領域で軍事侵攻はしてはいけないという国際協定を結ぶとか、どんなに悪いとみなされる国で分離独立派を応援するにしても軍事供与してはいけないというとり決めをするという方法があり得ると思う。

 山本 国際法スレスレのところで今回のような事態にまで発展してしまった。それをこの先どうやって歯止めを掛けていくかというところまで考えていかなければいけないということか。

NATOの東方拡大

 伊勢崎 私が勤める大学にもウクライナ人の教え子がいる。今泣いている。日本在住のウクライナ人は2000人ほどいる。だから、こういうことをいうのは勇気のいることだが、私が教えているのは平和構築であり、国家間の争いを止めたり、起こさないという学問だ。今プーチンが悪魔みたく扱われている。僕の教え子にとってもそうだろう。だが平和構築学の観点からいえば、なぜ悪魔が悪魔になってしまうのかという理由を考えなくてはいけない。敵にも理由がある。それは、あの地域での米国、NATOの振る舞い方にも一つの問題があるということだ。

 山本 NATOが拡大されていったことか。

 伊勢崎 そうだ。プーチンは、冷戦が終結した直後の1990年にNATOとロシアとの間には「NATOは1インチも東方(ロシア側)に拡大しない」という約束があったと主張しているが、それはあまり話題にされない。ウソじゃないかと思う人もいるのでは?

 山本 むしろ今メディアを含めて世界でロシア包囲網をつくっている感じで、向こう側(ロシア)の言い分があまり聞こえてこない。

 伊勢崎 米国の大学では公文書のアーカイブがある。米国では日本みたいに自衛隊日報を隠したり、勝手に処分したりしない。政府の文書は、それが機密文書であっても国民の財産なので政府が勝手に破棄できない。だから米国では外交文書といういわゆる密約にあたるものでも一定の年月を経ると公開される。それを大学の研究者が整理している。

 そこで「1インチも東方拡大しない」という約束があったことは証明されている。ゴルバチョフが中心になったペレストロイカ、東西冷戦の終焉というのは、別に欧米がソ連をやっつけたわけではなくソ連がみずから変革した。ソ連内には西側諸国に対する強硬派も多かったので、ゴルバチョフが潰されないように、当時のブッシュ米大統領やサッチャー首相(英国)、コール首相(西ドイツ)などが、彼を気遣って約束したことが機密文書に書かれている。当時、東西ドイツの統一をソ連が認めるかわりに、NATOはポーランドも含めてNATO加盟国にしないことなど、「1インチも拡大しない」という言葉として文章に残っている。

 そもそもNATOはソ連に対抗する軍事同盟だ。ソ連崩壊後は敵がいなくなるため必要なくなる。だから当時の首脳たちは、NATOを軍事同盟ではなく、ロシアを含めて「母なるヨーロッパ」という概念にもとづく政治フォーラムにするというビジョンがあった。だが、その約束をどんどん破って東方に拡大したのがNATOだった。



 山本 当時黙らせた強硬派の魂がそのまま今に蘇っている状態ということか?

 伊勢崎 そこでプーチンがあらわれたわけだ。ここで注目したいのは、NATOが東欧諸国を引き込むときに結んだ地位協定だ。NATO地位協定は、日米地位協定のように2国間協定ではないので主語がなく、派兵国と受け入れ国という言葉しかない。立場が逆になることもある。お互いの軍の自由を認めていない。派兵国の軍隊はすべて駐留受け入れ国の法律に従い、環境基準も訓練のやり方もすべて受け入れ国の基準に従う。このような対等なNATO地位協定を、仇敵である旧ソ連圏の国々にも与えて引き込んでいった。日本よりも好条件を与えている。これを日本人としてどう考えるか?

 山本 日本の場合は(米軍の)やりたい放題だ。でも、西側(欧米側)がロシアとの密約を反古にしてきたことから考えると、今起きていることは一方的にロシア側が悪いというだけでは片付けられない。もちろん戦争を始めてしまったのは最悪のケースだと思うが。

日本人としてどう見るか

 伊勢崎 国際法の限界としての武力行使という点。さらに悪魔化されているプーチン側にもそれなりの理由が国際関係の議論上にはあるという点。では、昨日起きたこと(ロシアの軍事侵攻)をわれわれ日本人としてはどう捉えるべきか。その視点を持つべきだと思う。

 今与党の政治家には「明日は我が身だ」「だから日米関係をもっと強くしなければいけない」とか「日本もNATOに入らなければならない」と発言するものもいる。

 だが、日本はウクライナと同じく緩衝国家という立場にある。こちらはアジアだが、同盟国の米国は1万㌔も海の彼方にあるわけだ。

 ウクライナはNATO加盟国ではない。一方、日本は米国の軍事同盟に入っている。だから緩衝国家でありながらNATOの一員としてやってきた国々のことをわれわれは勉強するべきだ。ノルウェーやアイスランドがそうだ。ノルウェーは冷戦時代にNATO加盟国として唯一ソ連と国境を接した。その隣国のフィンランドは、ロシア寄りの中立国だ。中立を掲げることによってロシアとも西側ともうまく付き合ってきた。スウェーデンもNATO非加盟国だ。

 これらの国は、日本人にはあまり知られていない工夫をしている。中立を掲げることもあるが、中立ではなくNATO加盟国のノルウェーは、ノーベル平和賞の国であり、オスロ合意など世界のいろいろな紛争の信頼醸成の場になってきた。それはロシアに接しているという地政学上の条件があるからだ。

 ノルウェーはロシアを刺激しないように、つい最近まで国内にNATO軍も米軍も入れない方針をとってきた。ノルウェーの北側にあるバレンツ海はロシアの原子力潜水艦も行き来するので、NATOや米軍にとっても重要な国だ。それでも米国の資金援助でレーダー施設をつくったとしても、それはノルウェーのものであるとし、ロシアとの国境地帯ではノルウェー軍も軍事訓練をおこなわない。そのようにしてロシアと付き合ってきた。

 これが2014年のロシアによるクリミア併合で変わってくる。ノルウェーでは史上初めて米原子力潜水艦が国内に寄港した。それまで世論は二分して争ってきたが、クリミア併合によってロシアへの恐怖心から軍事同盟強化という声が大きくなっているという。フィンランドも中立国をやめてNATOの加盟国になろうという意見も出始めている。


NATOに加盟したポーランドに配備されたミサイル防空システム(米レイセオン社製)

 山本 そうなるとロシアは孤立していく。

 伊勢崎 こういうなかで日本はどう考えるか。私は日本は緩衝国家ではなく、「緩衝材国家」と呼んでいる。自分の意志がないからだ。バルト三国も含めNATO加盟国でありながら緩衝国家の国々は、NATO地位協定だからお互いに対等だ。駐留する外国軍にも勝手なことをさせない。主権国家だからこそ緩衝国家になれる。だが、われわれ日本は自由がない。米国のいいなりになっていることがまずいということがわかっていない。自国内で外国軍が勝手なことをして、一番先に報復されるのは緩衝国家だ。だから基本は、駐留させたとしても自由なき駐留だ。これを同盟という。日本はそうではない。

 さらに、今日の報道ではチェルノブイリ原発をロシア軍が制圧した。意図はわからないが、これから長期化してロシア軍が入ってきて地上戦になれば、ウクライナ市民も応戦して市街戦になる。そのときに原発は究極の地雷となる。そこを早く制圧するというのは当然といえば当然だ。

 山本 重要拠点は真っ先に抑えられる。そうなると、この緩衝材国家(日本)には山ほど占拠されるような施設が林立している。

 伊勢崎 今は亡き私の友人が経団連幹部で原子力産業の中枢にいたが、彼は生前「原発というものはみずからに向けた核弾頭だ」といっていた。それが仮想敵国と向かい合う海岸線にずらっと並んでいるわけだ。こういう国を通常戦力で防衛するというのは無理だ。ウクライナ危機を通じて日本は学ばなければいけない。

 山本 ここまで進んでしまった事態を中断させることは難しい。こういう状態になるまでは「G7で力を合わせて!」と結構勇ましいことをいっていたが、実際に戦いが始まると一歩も踏み出せない。それをやると世界中で戦争になる。

 伊勢崎 2014年から8年もたっているのに、なぜ国際社会は米国を中心に対話によってウクライナ東部に高度な自治を認めるなどの決着を図らなかったのか、だ。

 山本 ウクライナのNATO加盟についても、「東方拡大をしない」という約束がありながら、あり得るかもしれないという広がり方はまずい。

 伊勢崎 そういうことをプーチンは利用する。プーチンは追い詰められるキャラではないとは思うが、NATOの冷戦直後から続く約束も含めて、ロシアに攻撃の口実を与えるようなことをずっと積み上げてきたのが西側でもある。冷戦終結時には西側首脳にはNATOを軍事同盟ではなく、政治フォーラムに変身させるというビジョンが明らかにあった。そこへもう一度もっていくために、何がそれを仲介できるか。国連は常任理事国の一つがかかわっているから安保理が動かない。

 山本 日本が事態をエスカレートさせないためのカードとして主体的に動ける部分はあっただろうか?

 伊勢崎 ちょっと遅い。その前に日本にその意志があるのかという話だ。この国にはプレゼンス(存在感)がない。アフガン問題に関しても、今から20年前の日本にはまだ中東和平に向けたプレゼンスがあったが今はない。

 現状に介入することは難しいが、冒頭でいったように国際法をもう一歩バージョンアップさせるべきだ。国際法のあいまいなところでこの事態が起きている。つまり集団的自衛権の発動を依頼されたという形で軍が入っている。これは明確にやってはいけないというとり決めを、国連憲章に加えるのか、国際協定みたいなものを成立させて批准国を増やしていくなどのやり方で広げる。そういうことを日本が主体になってやってほしい。


「オイコラ警察」に道を開くな!〜警察法改悪に反対する院内集会開かれる

2022年03月08日 | 四要素論

「オイコラ警察」に道を開くな!〜警察法改悪に反対する院内集会開かれる

 

全動画(68分)

 3月3日に衆院本会議を通過した「警察法改正案」、委員会審議はたった3時間半だった。反対したのは共産党と「れいわ」のみで、立憲は賛成してしまった。市民団体の取り組みが遅れていたが、内容が明らかになるにつれ、急速に反対の声が広がっている。「改正案」は、警察庁に新たに「サイバー警察局」をつくること、そして警察庁自らが捜査権限を大幅に強化する点にある。反対運動を呼びかけた小倉利丸さんは、「サイバー警察局とは、言論・表現を取り締まるもので憲法21条に抵触する。市民的自由を抑圧するものだ」と危機感を露わにする。

 3月7日午後、「警察法改悪反対」の実行委員会が主催する院内集会が、衆院議員会館で開催された。ゲストは、一橋大学の村井敏郎名誉教授(刑法/写真)だった。村井氏は秘密保護法反対運動から先頭に立ってきた法学者で、ことし80歳。開口一番「リモートという話もあったが、私はみんなにお会いして話したかったので、タクシーも使わず歩いてきた」。とても元気そうだ。しかし怒りにあふれていた。

 「このところ内外ともに腹立たしいことばかりだ。ウクライナのことでは胸がつぶれる思いだ。プーチンの問答無用のやり方に権力の横暴を見せつけられた。権力が集中するとどうなるかを示している。警察法改悪で実現しようとしていることも本質的にはそれと同じで、“捜査権限の集中”が狙いであり、とても怖いことだ。国民に影響する大問題なのに、まともに国会審議もされずに衆院を通ってしまった。立憲は野党の役目をまったく果たしていない。本当に許せない」。

 村井氏が強調したのは、この20年の警察の法整備の流れだった。「1999年の盗聴法から、秘密保護法、共謀罪、デジタル庁、そして今回の警察法改正と続いてきた。いまや総務省と警察庁がタイアップすれば何でもできる体制ができつつある。日本の警察は、戦後は国家警察の反省からそれを廃止し、都道府県警察としてスタートした。その長い歴史がある。それを今回の改悪はサイバー局新設をテコに、都道府県警察から国家警察に変えるもので、性格がまったくちがうものになる。1958年には警察権限を強化する警職法に反対する大運動が起きたが、このときの合い言葉は、“オイコラ警察”はゴメンというものだった。今回の警察法改悪は、オイコラ警察に道を開く戦前への回帰現象といえる」。

 約30分の村井氏講演につづいて、小倉利丸・内田聖子(写真)・原田富弘の各氏から、それぞれの活動分野を踏まえた問題提起があり充実した院内集会となった。とくに村井氏の渾身の訴えは、会場の参加者にインパクトを与え、危機感が広がった。しかし状況は厳しい。来週月曜(3/14)にも参院審議がはじまり、すぐに委員会採決という事態も懸念される。院内集会を主催した市民団体は、参院議員への働きかけやホームページを通しての情報発信を強める方針だ。(M)

→警察法改悪・サイバー警察局新設に反対する「ホームページ」(最新情報あり) https://www.jca.apc.org/no-cyberpolice/

*3.7院内集会は以下の3団体の共催です。
 共謀罪NO!実行委員会/「秘密保護法」廃止へ!実行委員会/警察法改悪反対・サイバー局新設反対2・6実行委員会