
空の青さと木漏れ日が眩しすぎて、一瞬意識が虚空へ飛んだ。
「桐の花が咲いてるよ、かぁちゃん。」
30年近く前、かぁちゃんが失意の中でここの近所に越してきた時に
窓から見つけた空へ向って咲く薄紫の花。
最初は木の名前さえ知らずにいたけれど、
「桐」の花だと誰かに聞いてきて嬉しそうにはしゃいでたっけ。
それから毎年この花の季節を楽しみにしていたよね。
私は何年かぶりで見たのだけれど、
つい興奮して携帯のカメラに収めてみた。
木の真下まで行って、ほれほれ~って騒いでみせたけど
かぁちゃんはチラリと見ただけで微笑む事も忘れていた。
空の青さが少しだけ寂しかった。