国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

エマニュエル・トッドの自由貿易批判:保護貿易は経済危機を救うか?

2011年01月06日 | 欧州
何故エマニュエル・トッドは保護主義を主張しているのだろうか?これはフランスの特殊事情だと思われる。2010年11月11日の記事「英仏両国の衰退」でも書いたが、ユーロ安で大幅な貿易黒字のドイツと貿易赤字のフランスの間で経済力の格差が大きくなっている。ドイツ・オーストリア・オランダ・スイス・ベルギー北部などのゲルマン圏が経済的強者であり、ラテン・スラブ圏とイギリスが経済的弱者である。ゲルマン圏以外の地域は経済力低下に見合った国民の生活水準低下が必要なのだが、フランスでは革命のお国柄のためかデモ・ストライキが相次ぎ、国民に生活水準低下を納得させることが困難なのである。従って、保護貿易という形態で途上国との競争に勝てない弱体な産業を国内に増やしていって国民の失業を減らしていこうというのがトッドの主張だと思われる。一言で言えば、フランスは既に先進国から脱落したのだ。 ただ、ユーロ圏は域内での自由貿易を貫いており、フランス一国の事情で保護貿易を導入することは出来ない。結局は、ゲルマン圏とラテン圏の二つにEUが分裂し、二つの共通通貨が並立する状態になると思われる(スラブ圏や北欧諸国は各国の事情に合わせていずれかの共通通貨を選ぶと思われる。イギリスはもし共通通貨に加盟するならラテン圏通貨になると予想する。)。そして、ゲルマン圏連合は自由貿易を維持して先進国の地位を維持し、ラテン圏は保護貿易に向かい先進国から脱落していくことになるだろう。日本としては、途上国に勝てない産業は贅肉として削り落とし、途上国に勝てる産業だけからなる筋肉質の国家を維持していくことが先進国の地位の継続に繋がると思われる。 私がこのブログで繰り返し述べていることだが、今回の世界大不況の解決には二つの必要条件がある。一つ目は、東アジアに集積した過剰な工場設備が破壊されてデフレが終わることであり、その観点で見て日本に最も望ましいのは韓国の滅亡と北朝鮮による半島統一+中国内陸部の内乱化である。日中戦争で日本が滅亡するという悪夢だけは回避せねばならない。二つ目は、ニューヨークとロンドンの国際金融資本から、米国西海岸と日本とドイツの三大先進国・地域への世界覇権移動である。第二次世界大戦の例から考えて、この二つの条件なしには世界不況は終わらないだろう。 . . . 本文を読む
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イスラエル右翼と交流するゲルマン系の極右政党

2010年12月27日 | 欧州
オーストリア、スウェーデン、ベルギー北部のオランダ語系地域の極右政党がイスラエルを訪問しイスラエルの右翼政党と交流を持ち、イスラム原理主義に対する戦いを宣言したエルサレム宣言に調印したという。オーストリアの極右政党はドイツの北ラインウェストファリア州に姉妹政党を有しており、この政党も後日エルサレム宣言に調印している。また、ベルギー北部の極右政党は分離独立主義で親ドイツ的であるという。従来、反イスラム主義を掲げる右翼政党はネオナチというレッテルを貼られ、反ユダヤ主義者と同一視されてきた。今回の欧州の極右政党のイスラエル訪問はこのレッテルを打ち破る画期的なものである。この他にオランダには極右政党の自由党が存在し、ドイツにはその姉妹政党の自由党が存在する。オランダ・ベルギー北部はオランダ語地域であるが、そもそもオランダ語がドイツ語の方言に過ぎないことを考えれば、これらの政治的動きは汎ゲルマン主義と呼ぶことができる。ベルギーではオランダ系の北部が経済的に優位に立っており、オランダもフランスに比べて経済競争力が強い(このことはオランダとフランスの国債の利率に現れている)。今後、オランダ・ベルギー北部・ドイツ・オーストリアというゲルマン系地域は共通通貨の元に政治的・経済的に統合され、フランスを含む地中海地域は別のより弱い共通通貨の元に統合されていくのではないかと私は想像している。それはJJ予知夢の言う欧州の東西分裂の実現に他ならない。ただ、私はゲルマン民族の右翼政党とイスラエルの右翼政党の協力がスムーズに進むとは考えていない。イスラエルの右翼政党はアラブ地域から移住してきたスファラディの支持者が多いが、スファラディはユダヤ教徒であるという点を除いては非常にアラブ的であり、男尊女卑の傾向が強い。彼らはトルコ人やアラブ人と同様に欧州文明には受け入れがたいと思われる。彼らの共同宣言は、欧州の極右政党に貼られたネオナチというレッテルを打ち破ることが目的であり、実際に欧州が受け入れることが可能なのは東欧出身で左翼的なアシュケナジーであると思われる。21世紀の欧州大陸は、ドイツ系民族とアシュケナジー系ユダヤ人が支配し、ラテン系民族やスラブ系民族がそれに従属していくことになるだろう。 . . . 本文を読む
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英仏両国の衰退

2010年11月11日 | 欧州
英仏両国は年金改革や予算削減などの生活水準低下政策に本格的に取り組みはじめた。これに伴って両国では激しいデモが起きているようである。フランスでは国民の67%がデモに賛成しているという。両国の国民の考えは甘過ぎる。 英国の雑誌「エコノミスト」の巻末には各国の経済データが載っている。ドイツは大幅な貿易黒字なのにフランスは貿易赤字。長期国債の金利も、同じユーロ圏なのにドイツよりフランスがかなり高くなっている。国力の格差が国債の金利に既に現れているのだ。格付機関の格付けよりも、この長期金利の格差の方がずっと信頼できるデータである。ただ、フランスは高速鉄道や原子力発電や軍用機などの工業力が残っているだけまだマシである。イギリスに至っては、国家を支えてきた金融業がリーマンショック以後大打撃を受けており復活の目処が立っていない。更に悪いことには、北海油田・ガス田の枯渇が近づいている。 現在、欧州ではユーロ圏のアイルランドやギリシャの経済危機が大問題となっている。ドイツ国民にアイルランドやギリシャを支援する意志がない以上、これらの諸国の経済破綻は避けられないだろう。そして、経済破綻はイギリス・イタリアといった大国まで及ぶだろうと私は想像している。フランスは破綻はしないだろうが、衰退は避けられないだろう。そして、ユーロは消滅してマルクやフランが復活するだろう。 貿易収支や国債金利に現れているように、英仏両国とドイツの国力には雲泥の差がある。しかし、生活水準の差はほとんどない。そして、英仏は核戦力や空母といったドイツにない金のかかる軍事力を保有している。このような現状は決して持続不可能である。11月2日に英仏両国は核実験施設と空母の共同利用計画に合意したが、これは軍事費を削減するための苦肉の策である。しかし、この程度では焼け石に水だろう。空母や核戦力を保有する経済力がある国は欧州ではドイツ以外に存在しないのだ。どうしても英仏が核戦力や空母を保有し続けたいのならば、大幅な生活水準切り下げ以外の選択枝はあり得ないが、贅沢な生活に慣れきった両国の国民にそれは不可能だろう。最終的には英仏両国の国民は大砲よりバターを選択し、核戦力と空母はドイツに売却されることになると私は予想する。 . . . 本文を読む
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敗北を覚悟で戦うことの意義:フィンランドとバルト三国の歴史の比較

2010年09月28日 | 欧州
 独ソ不可侵条約によってバルト三国とフィンランドはソ連の勢力圏と定められ、これらの国々はソ連の軍事基地建設と軍隊駐留を要求された。このソ連側の要求に対するバルト三国とフィンランドの対応は対照的であった。バルト三国はソ連の要求を受け入れ、その後ソ連軍に全土を占領される際にも積極的な抵抗は行わなかった。バルト三国はソ連との戦いを避ける事により、人命を失うことはなかったのである。しかし、その代償は大きかった。ソ連支配下では多くのバルト三国人がシベリアへ強制連行され命を失った。また、最終的にバルト三国はソ連に併合されて独立を失い、ソ連崩壊まで再独立できなかった。  一方、フィンランドはソ連の要求をはねつけ、ソ連との戦争に突入した。戦争での勝利は絶望的であったがフィンランド軍はよく健闘しソ連軍を苦しめた。最終的にはフィンランドはソ連が当初要求した以上の領土を失うことになったが、独立を維持し、フィンランド人のシベリアへの強制連行を回避し、冷戦期間中も東側諸国としては例外的に西側レベルの生活水準を享受することができた。このバルト三国とフィンランドの歴史は、敗北を覚悟した戦争で戦うことが国益に繋がることを教えてくれる。  私がなぜ今このような記事を書くかというと、日本は新たな超大国である中国から、属国になるように脅迫される可能性があるからである。中国側は恐らく、沖縄の割譲と日本本土への人民解放軍駐留を要求してくるだろう。もしバルト三国のようにその要求に屈すれば、更なる中国からの圧力により日本の独立は失われて中国に併合され、現在のチベットのような悲惨な運命が待っているはずである。日本が敗北を覚悟で中国の脅迫をはねつけて人民解放軍と戦争になった場合は、恐らく日本は沖縄だけでなく、種子島・屋久島以南の南西諸島全て、五島列島、対馬+壱岐、小笠原諸島などの多数の島嶼を中国に奪われる可能性が高いと思われる。日本本土への人民解放軍の駐留も避けられないだろう。しかし、日本人が決死の覚悟で中国軍と戦ったならば中国人も日本占領の困難さを理解し、日本は中国の衛星国ではあるが何とか独立を維持できるのではないかと思われる。  今後数百年間の展望として、日本人は中国側の理不尽な要求には屈せず、敗北確実であっても戦争を行う覚悟を持つべきである、というのが私の結論である。 . . . 本文を読む
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欧州の移民問題

2010年09月04日 | 欧州
私は、ザラツィン理事の発言や更迭劇はドイツ支配階層の意向を受けたものであり、ドイツ人に移民問題を提起することが目的であると考えている。今回の更迭劇で彼が8月30日に出版した「自壊していくドイツ」は大ベストセラーになることだろう。そして、ドイツ人の大多数が移民問題を直視しはじめることだろう。今後採られうる政策としては、モスクの新設禁止、女性のヘッドスカーフの禁止、コーランを大音量で流すことの禁止などが考えられる。しかし、その様な穏健な政策だけでイスラム教徒たちがドイツ社会に統合されたり、祖国に帰国したりするとは考え難い。結局は、かつてナチスが行ったように強制的にイスラム教徒を東方に向けて送還するしかないと私は想像する。イタリアのマローニ内相が主張するロマの強制送還構想はそのはしりではないだろうか。ドイツはナチスが行ったユダヤ人迫害の記憶が強烈であり、これまで移民問題に真正面から取り組んでこなかった。しかし、欧州の中核であるドイツにはもはやその様な姿勢は許されない、とドイツ支配階層は決意したのではないかと思われる。 イスラム教は、他教徒との婚姻を禁じており、婚姻の為にはイスラムに改宗せねばならない。また、改宗を禁止している。このような点で、イスラム教は他の宗教と共存しにくい様に思われる。今後の日本は東アジアの中核国家となり、インドネシア人・マレーシア人・パキスタン人・アラブ人・ウイグル人・カザフ人、中国の回族などのイスラム教徒が訪日することが考えられる。しかし、日本という国家を維持し繁栄させていく為にはイスラム教は有害であり、日本に在住するイスラム教徒を一定数以下に制限しておく必要があるだろう。 日本は他の先進国の優れたところは熱狂的に取り入れるが、良くないと思われるところは決して取り入れないという伝統を持っている。平安時代に中国から宦官や纏足を輸入することがなかったこと、安土桃山時代や明治時代に欧米からキリスト教という一神教を輸入しなかったこと、第二次大戦後に欧米のように低賃金労働者の移民を受け入れなかったこと、現在も欧州の死刑廃止運動を取り入れていないことなどが挙げられる。日本人は一神教は排他的であり好ましくないと考えているのだ。イスラムはキリスト教より更に排他的であり、ムスリムを日本に受け入れることは多大な害悪をもたらすと考える。 . . . 本文を読む
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欧州危機の行方

2010年07月26日 | 欧州
ブログ「貞子ちゃんの連れ連れ日記」は、「恐慌とは、『お金持ちの覇権国家(経常黒字国にしてリーダー国家)不在の時に起きる。』というセオリー」が、厳然と存在する、と主張している。現在の世界では経常黒字国は日本・ドイツ・中国・中東産油国などであるがいずれも覇権国ではない。従って、恐慌が発生するのは必然的である様に思われる。ただ、私は恐慌は「起きる」ものではなく、世界支配階層によって「起こされる」ものだと考えている。戦争・恐慌といった大事件は全て、綿密なシナリオのもとに実行されているはずである。そして、来るべき欧州恐慌も明確な目的があるはずだ。それは何だろうか? それは、統合体として未成熟なEUを、世界覇権国の一つに改造する事であると思われる。EUは通貨は統合されているものの、政治的統合は進んでいないという過渡的状況にある。この政治的統合を推進するのが第一の目標であろう。第二の目標は、域内各国の経済格差への対処である。経済格差はこれまではEU周辺国のバブルによって縮小してきたが、今やそのバブルは破裂しつつある。この格差は各国の国民性を反映したものであり、短期的解決は不可能である。対処法としては、経済水準の低い国では低賃金・長時間労働・福祉水準切り下げを受け入れて貰う他にないと思われる。この動きはギリシャを筆頭に地中海諸国で現在取り組みが始まっている。第三の目標は、EUにおけるドイツの優越を制度化することである。現在のEUでは、各国は対等の地位となっている。しかし、経済・技術などの点から見てドイツは突出した存在である。来るべき欧州恐慌を解決するには、ドイツに国債を大量に発行して貰い、内需を拡大する他にないと思われる。ヒトラーが第二次大戦前に採った政策と同じである。そして、ドイツはその資金を地中海諸国などにある程度供与していくことを求められるであろう。しかし、ドイツ国民にとってみると、地中海諸国の面倒を見させられるだけで、国債はドイツ国民が返済する義務を負うことになり、一方的に不利な政策である。ドイツ国民の同意を得るには、何らかの見返りが必要であろう。それは、EU域内でのドイツの指導的地位の制度化、あるいは誇張されたナチスの戦争犯罪の真実を明らかにすることでドイツの名誉を回復することなどが考えられる。 . . . 本文を読む
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ウクライナの東西分割を狙うドイツ:21世紀のモロトフ=リッペントロップ協定

2009年12月12日 | 欧州
ドイツ軍の内部で、ウクライナを東西に分割した上で西ウクライナだけをNATOに加盟させる計画があるという。恐らく東ウクライナやベラルーシはロシア圏にとどまることだろう。21世紀のモロトフ=リッペントロップ協定と呼ぶべきこの計画は、ドイツとフランスを中心とするNATO圏とロシア圏に欧州を分断するものである。ただ、モロトフ=リッペントロップ協定が住民の意思を反映しない秘密協定であったのに対し、この計画は西ウクライナの親EU感情という住民の意思を反映している点が異なっている。 この計画は世界の多極化の反映である。独仏連合、ロシアという二つの極が発する強い引力がウクライナという国家を東西に引き裂きつつあるのだ。世界の多極化と共に、あらゆる国家はどの極に所属するのかを問われている。 . . . 本文を読む
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ロシアとの戦略的連携を深めるフランス

2009年12月01日 | 欧州
フランスとロシアは、反ロシア感情の強いウクライナ・ポーランド・バルト三国を通過しないガスパイプラインにフランスが出資することで合意した。ウクライナ・ポーランド・バルト三国はこの動きに懸念を強めているはずである。また、ロシアはフランスの最新鋭強襲揚陸艦「ミストラル」級を購入し、その後フランスからの技術移転を受けてヘリ空母4隻を国内で建造したい考えだという。グルジアやバルト三国はこの軍艦の脅威に直面することになる。 一方でフランスは昨年のグルジア紛争の解決を仲裁している。また、グルジアを通過するであろうナブッコ計画はロシアを経由しないパイプラインルートとしてEUが推進しており、フランスはグルジアを見捨てるつもりはないと思われる。グルジアとロシアの実質的な境界線は恐らく現状維持のままで今後推移するのではないかと思われる。 このような事態から見えてくるのは、欧州で主導権を握る独仏連合とロシアのような大国の地位が上昇し、小国は地位が低下するであろう、ということである。グルジア・バルト三国のような小国はロシアの軍事力に怯え、西欧諸国の軍事力に縋りながら生きて行かねばならない。現在のように反ロシア政策を採ることさえ困難になっていくことだろう。 各国が自国の国益を追求するパワーポリティクスの世界では、大国のみが自立したプレーヤーである。アメリカ一極時代には地域大国と小国は同格だったが、多極化する21世紀の世界システムでは、各極を形成する地域大国と小国の国力の格差が拡大することになるだろう。東アジアでは、日中印露の四カ国が全てを取り仕切る時代になると私は予想している . . . 本文を読む
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ドイツの主要紙に、EUは米国との同盟をやめてロシアと同盟すべき、と言う記事が掲載された

2009年11月14日 | 欧州
ドイツの主要紙に、EUは米国との同盟をやめてロシアと同盟すべき、と言う記事が掲載された。この記事では、ドイツ地政学の創始者であるKarl Haushoferと、ロシアの極右イデオロギー信奉者であるAlexander Duginが取り上げられており、著者はDuginの提案する「Pax Eurasiatica」の概念を推奨しているという。Duginのいうユーラシアの範囲は、スペイン南西部の港町であるカディスからロシア極東のウラジオストクまでであり、欧州大陸+ロシアが中心である。また、Duginはイランやトルコ民族、アラブ民族との同盟を打ち出している。 パックスアメリカーナの終焉と共に、世界はパックスアメリカーナ以前の世界へと戻りつつあるように思われる。しかし、単純に戻っているのではない。この百年間にドイツとフランス、ドイツとロシアが戦ったことを反省して、戦争によらない、国家連合による覇権体制が誕生しつつある。ロシアとドイツの同盟もその一例であり、将来的にはEUとロシアは統合されてゆくことになるだろう。 ユーラシアの東側でも同様の事態が起きることだろう。ペリー来航前の世界、あるいは第二次大戦前の世界へと東アジアは回帰してゆくはずである。当然、株式日記の言うように、日米同盟は解消される方向に向かうだろう。その後の東アジアは、日本・ロシア・中国・インドの四大国の同意によって全てを取り仕切るシステムになっていくと私は予想している。また、日本・中国・ASEAN・オーストラリア・ニュージーランド・インドを含む東アジア共同体が大東亜共栄圏の後継組織として結成され、その中で日本が指導的役割を果たしていくことになるだろう。ドイツ紙の記事にあるように、東アジア共同体の内部でも、小国の主権は覇権国によって制限される様になっていくことだろう。 . . . 本文を読む
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ルーマニアに統合されるモルドバ:東方へまた一歩拡大するEU

2009年09月25日 | 欧州
7月に行われたモルドバの総選挙で共産党が敗北し、親欧州の野党連合が勝利した。野党連合のミハイ・ギムプ議長(大統領代行も兼任)は、ルーマニアとの統合支持を明言している。この背景には、ルーマニアのEU加盟以降、ルーマニア国籍の取得申請をするモルドバ国民が急増していることが挙げられると思われる。国民のルーマニアへの流出を防ぐ方法は、もはや統合以外に存在しないと言う判断があると思われる。EU加盟には経済的水準が低すぎるモルドバが、ルーマニアとの統合により早期にEU圏内に入ることができるという算段もあるだろう。そして、モルドバのルーマニアへの統合によってEUは東側へ更に一歩拡大することになる。 ロシア系住民の多い沿ドニエストルは国際的には承認されていないものの、モルドバ政府の統治を受けていない地域である。キプロス共和国の北キプロスと似た存在であり、EUへの統合の障害にはならないと思われる。むしろ、沿ドニエストルを支援するロシアが弱い立場になると想像される。また、モルドバのEU圏内入りは隣接するウクライナに早期のEU加盟への希望を与え、それに反対するロシアとの間で対立が深まると思われる。 将来的には、北方領土の返還と共にカレリアがフィンランドに返還され、東プロイセンが欧州出身のイスラエル人の避難先としてロシアからドイツに返還される様な事態が想定されるが、沿ドニエストルとグルジア共和国の南オセチア・アブハジアの三地域はロシアの西側への橋頭堡として残ると思われる。この三地域の問題は、ロシアのEU加盟によってのみ解決可能であろう。 . . . 本文を読む
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欧州に拡大するイスラム嫌悪

2008年02月26日 | 欧州
欧州でイスラム嫌悪の動きが高まっている。従来は極右とされる一部政党に限られていたのだが、オーストリア南部のカエルンテン州議会では州内にモスクやミナレットの建設を禁止する条例が承認された。極右とされる勢力が多数派となった訳である。今後、他の地域でも同様の条例や法案が成立する可能性は高いだろう。 欧州は多文化主義・宗教への寛容性という建前をうち捨てて、キリスト教文明というアイデンティティを明確にしつつある。欧州を人体に喩えるならば、内部で増殖し始めたイスラム社会を免疫細胞が異物と認識して攻撃し始めた段階である。預言者に関する悪意に満ちたイラストをデンマークの新聞が繰り返し掲載していること、モスクやミナレットの建設を禁止する条例が承認されたことこそがその攻撃のよい例である。 イスラム教では改宗が死罪にあたることを考えると、キリスト教への改宗による同化は期待薄である。また、宗教行事にほとんど参加しない世俗的イスラム教徒として欧州で生きていくという選択枝も考え得るが、結婚や葬儀といった行事はやはりイスラム教の教義に則って行わねばならず、そこでキリスト教社会と対立してしまうように思われる。欧州のイスラム教徒は最終的には大部分が追放され、従来イスラム移民が行っていた低賃金労働は東欧出身労働者が代行するという未来が予想される。 . . . 本文を読む
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2月17日のコソボ独立宣言はキリスト教とイスラム教の戦争を通じて欧州に反イスラム運動を巻き起こすか?

2008年02月10日 | 欧州
表向きは独仏連合とロシアはコソボ問題で対立している。しかし、ドイツ・フランス・ロシアは英国に対抗する大陸国家連合として緊密な連携を保っており、事実上の同盟関係にあると想像され、裏で何らかのシナリオが立てられている筈である。セルビアとコソボの戦争を回避する為の外交努力がないがしろにされていることから考えて、ドイツ・フランス・ロシアはコソボで戦争を起こすことを狙っているとしか思えないのだ。では、その戦争の目的とは何だろうか?私は以下の三種類を想像している。 1.ドイツ・オーストリア連合による、第一次世界大戦を起こした責任者であるセルビアの弱体化作戦: ロシアがセルビアを支持していることから考えて、この可能性は薄いと想像する。 2.戦争・民族浄化作戦を通じて早期にコソボとセルビアに国民国家を形成させ、バルカン半島を安定させることが目的: このシナリオの可能性は十分あるが、ボスニア戦争の惨禍を経験した欧州が何故コソボに譲歩を迫ると共に住民交換による平和的解決を主張しないのか疑問である。 3.キリスト教とイスラム教の宗教間戦争をコソボで起こすことで、欧州に反イスラム感情を蔓延させて、中近東や北アフリカ出身のイスラム教徒を追い出すことが目的: ボスニア戦争がカトリック+イスラム教vs東方正教会というキリスト教の内戦であったのとは対照的に、コソボの戦争はイスラム教と東方正教会の激突になる。この宗教間戦争と、西欧でのイスラム教徒移民反対運動が結びつくと、カトリックやプロテスタントの間に東方正教会への同情と支援が広まることになる。運動の中心はフランスのルペンに代表される親ネオナチ勢力だが、保守系有権者の広範な支持が期待できる。私は最近、この「宗教間戦争シナリオ」が真の目的なのではないかと考えている。 . . . 本文を読む
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「コソボ独立後の支援はするが、国家承認については加盟各国の判断に任せる」というEUの無責任さ

2008年01月09日 | 欧州
コソボの独立を巡るEU内部の調整が大詰めを迎えているようだ。しかし、自国内に分離独立運動の芽を抱えるスペイン・ルーマニア・スロバキア・ギリシャ・キプロスはコソボ独立に反対ないし慎重論の構えを崩していない。 1月8日の朝日新聞では、「EUとしてコソボ独立後の支援はするが、国家承認については加盟各国の判断に任せる」という線での合意を狙うという驚くべき妥協案が述べられている。つまり、独立したコソボをスペイン・ルーマニアなどが国家として承認しないことを容認するというのだ。これはあまりに無責任な妥協案であり、そのような提案が存在すること自体、EUが本気でコソボ問題に取り組んでいないことを示している様に思われる。では、EU諸国の真意は何だろうか? ボスニア紛争が多くの死傷者を出した上で解決に向かいつつあることからも分かるように、民族問題は一度戦争を起こして多くの犠牲者を出さない限り解決できない傾向がある様に思われる。戦争の痛みが当事国を平和的解決に向かわせる原動力になるのである。EU諸国はそのような観点からわざとコソボの独立の意志を煽り、セルビアと激突させることを狙っている様に感じられる。 仮に戦争になったとしても、コソボの住民の大部分がアルバニア系であることから、コソボの独立を撤回させることはセルビアには困難だと思われる。セルビアにできるのは、コソボの一部をセルビア領にすること程度であり、戦争の落とし所はその様な条件闘争になるのではないだろうか。 1月20日にはセルビアで大統領選挙が予定されており、民主派と民族派が争っている。選挙戦によりセルビア国民の民族意識が鼓舞されることで、2月にも予想されるコソボの独立宣言の後にはセルビアとコソボの間で戦争が勃発するのではないかと私は想像している。セルビアがルーマニアと国境を接している事を考えると、ロシア軍がルーマニアを経由してコソボに介入するという可能性もあるかもしれない。 . . . 本文を読む
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コソボ問題の謎:セルビア民族主義という毒をもって、バルカン半島のイスラム教徒という毒を制する戦略?

2007年12月15日 | 欧州
私が不思議に思うのは、ロシアと良好な関係にあると想像される独仏両国(特に仏)がコソボ問題ではロシアと対立しており結果的に緊張を激化させていることである。また、セルビアの大統領選挙という重要な時期に敢えてコソボ独立問題をぶつけて選挙の争点にしてしまっていることも謎である。もし本当にコソボ問題を平和的に解決したいならば、独仏連合はコソボ独立を先延ばしにすると共に、セルビア側が妥協できるような大きな譲歩(例えばコソボ共和国の領土縮小など)をコソボ側に飲ませるべきだろう。それをせずに一方的にコソボ側の独立の意向を丸飲みしてセルビアに無理強いするのは、故意に対立を激化させているようにしか感じられないのだ。では、その裏に存在する独仏連合+ロシアの真意は何だろうか? コソボに住むアルバニア系住民はアルバニア人、ボスニア・ヘルツェゴビナのボスニア人と同様に欧州内のイスラム教徒として異端者的存在である。その裏には、彼らをイスラム化させたトルコの強い影響力が存在すると想像される。独仏連合としては、コソボやアルバニア、ボスニアをEUに統合する際に可能な限りトルコやイスラムの影響力を排除していきたいと考えている筈だ。その為に、彼らはセルビア民族主義という毒を用いてバルカン半島のイスラム勢力というもう一つの毒を制することを目指しているのではないかと私は想像する。 この私の想像が正しいならば、1月20日のセルビア大統領選直後からコソボで軍事衝突が開始され、ロシアがセルビア側を支援して紛争は一気に国際問題化するだろう。そして、1990年代にはコソボ独立を支持してセルビアを空爆した欧米諸国は一転して傍観姿勢に廻り、苦境に陥ったコソボはトルコに支援を求めて露土戦争が再現されることになると想像する。事態は東方正教会とトルコの間の宗教戦争に突入し、ボスニアやアルバニア、キプロス、トルコ本土などにも戦火が及ぶことだろう。その戦争はトルコの敗北・ロシア側の勝利に終わり、バルカン半島のイスラム勢力はトルコとの絆を失って欧州キリスト教文明の中で細々と生き長らえることになると想像する。松藤民輔氏は来年は株安・金高・ドル高になる、戦争か革命が起きると主張している。マーク・ファーバー氏も来年はユーロ・ポンド売りを推奨している。その理由が、来るべきバルカン半島での大戦争によるユーロの下落なのかもしれない。 . . . 本文を読む
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ポーランドの親ドイツ政権の成立と欧州統合反対派の英国・スカンジナビア連合の孤立深刻化

2007年11月15日 | 欧州
10月21日のポーランド総選挙は、ドイツとロシアを共に敵に回しEU内部で孤立することになった奇矯な民族主義政権が倒れて、親ドイツ、親EU政権が誕生することになった点で非常に意義深いと思われる。新政権はユーロの2012年導入を目指すなど欧州統合にも積極的であり、これでマドリッドからワルシャワまで、欧州大陸の5大国全てが欧州統合推進派に足並みを揃えたことになる。ロシアが親ドイツであることを考えると、欧州半島ほぼ全体が親ドイツに塗りつぶされたと考えても良いだろう。 英国・スウェーデン・デンマークなどの欧州拡大賛成派は、トルコをEUに加盟させないためにフランスのサルコジ大統領が提案している「賢人会議」に反対だという。これらの国々はトルコをEUに加盟させることでEUの統合を阻止したいと考えていると思われる。揃って通貨にユーロを採用していないことも、通貨主権の統合に反対であることの証拠である。この観点から見ると、欧州統合反対派はEU未加盟国を含めても英国・スウェーデン・デンマーク・ノルウェー・アイスランドの5カ国しか存在しないと想像される。ポーランドの前政権はユーロ導入に反対する点でこの英国・スカンジナビア連合の貴重な味方であったが、それが今回の総選挙で敗れたことは大きな痛手である。いずれにせよ統合反対派の劣勢は明らかであり、彼らは統合された欧州の中で孤立し、最終的には統合に飲み込まれていくことだろう。 ただ、欧州統合推進派の前途は決して安易なものではない。統合反対派の代表である英国の不動産バブルと同様にスペインやアイルランド、東欧諸国などの欧州辺境諸国を中心とする不動産バブルも崩壊しつつある。それは相対的に貧困なこれらの諸国の経済に大きな打撃を与えるだろう。ユーロ高の中でも輸出が堅調なドイツと異なりこれら諸国は膨大な経常赤字を出している。既にドイツ国債の利回りとフランス・スペインの国債の利回りの格差が拡大しているという情報もある。ユーロ加盟国の場合は国債価格の暴落、ユーロ未加盟国の場合は通貨の暴落という形式で統合推進派諸国は攻撃を受けることになるだろう。英国は自らの不動産バブルを崩壊させることでそれを欧州辺境諸国に波及させ、欧州統合を崩壊させるという一種の自爆テロ計画を準備している様にも思われる。欧州大陸諸国と英国の間のこの深刻な対立の行方から目が離せない。 . . . 本文を読む
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