エミール・ガボリオ ライブラリ

名探偵ルコックを生んだ19世紀フランスの作家ガボリオの(主に)未邦訳作品をフランス語から翻訳。

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2022-12-22 10:06:03 | 地獄の生活

こう考えると、この哀れな婦人は絶望で両手を揉み始めた。なんということか! 彼女はもう十分過ちの償いをしたのではなかったか。この上まだ息子にまで罰を受けねばならないのか! ここで初めて彼女は鋭い疑念に捕らわれ煉獄の火で焼かれるような苦痛に心を引き裂かれた。彼女が至高の母性愛の為せる業だと思っていたこと、それもまた過ちであったのか、しかも最初のものより更に大きな過ちなのか? 彼女は息子の幸福のため女の貞潔を犠牲にしてきた。彼女にそんな権利があったのか? 息子に惜しみなく与えてきたお金、まさにその金があらゆる悪の芽を育んでいたのではないか。堕落、そして恥辱を……。もしももしも、息子のウィルキーが真実を知ったとしたら、どれほどの苦痛や怒りが彼を襲うことか?

ああ、そうなったら、息子はいかなる言い訳も和解も受けつけないであろう! 峻厳な裁判官のように! 上流階級の最高の地位から最下級の賤しい階層へと転落した母親に対し憎悪と軽蔑以外の何を感じるであろうか……。息子の憤慨した声が聞こえるような気がした。

「僕を飢え死にさせてくれた方がよかったのに。そんなお金で得たパンを食べて生き永らえるくらいなら! あなたの穢れたお金で僕の名誉を汚し烙印を押すどんな権利があなたにあると言うんです? 転落したなら、あなたは労働によって這い上がるべきだった。それが肉体労働でも、どんなに辛い仕事であっても……。僕を労働者に育てるべきだった。こんな自分の食い扶持も稼げない怠け者にするのでなく! 誘惑され、捨てられた哀れな娘の私生児として、その母親と僕の得た賃金を分け合いながら、それでも僕は頭をまっすぐ上げ誇りを持って生きていけたでしょうに……。二十年も経ってから、リア・ダルジュレの息子として、男たちとのゲームで金を得てきたあのリア・ダルジュレの息子として、一体どこに行けばその恥を隠せるというのですか!」

おお、そうに違いない、ウィルキーはこんな風に言うに違いない、もし彼が知ることになったら……。そして彼は知るだろう。彼女にはその確信があった。トリゴー男爵、パターソン氏、ド・コラルト子爵、そしてフォルチュナ氏……この四人が知っているのだ。最初の二人には彼女は信頼を置いていた。子爵はなんとか制御できる。しかしフォルチュナ氏だけは!

時間はどんどん経っていったがジョバンはまだ戻ってこない……。なんでこんなに遅いのだろう? 男爵の居所を突き止められないのだろうか? 友達に出くわして彼らと一緒に酒を飲みに行ってしまったのではないかしら!

確かに不幸が彼女に迫っていた。破局が差し迫っているときにはすべてが不都合に働き、支障が生じ、頓挫し、思い通りにならないものだ。12.22

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