XIV
不意を突かれ、頭の中は混乱しきっていたが、ド・コラルト氏とド・ヴァロルセイ侯爵のことはずっとウィルキー氏の頭を離れなかった。彼らが自分の立場だったらどうするだろう? 『上流階級』のお手本のようなあの二人なら取るであろう態度を真似るには、どういう風な物腰で行けば良い? そうだ、あの物に動じない冷ややかな表情、そしていかにも退屈だというような横柄な態度、あれこそが洗練された最高のものではないか。
この考えで頭が一杯になり、彼らに負けてなるものかという競争心に燃え、彼はスーツケースの一つに腰を下ろし、脚を組み、あくびをかみ殺している風を装い、密かに呟いていた。
「はいはい、そうですか!またぞろ長台詞とメロドラマか……面白くもないことになりそうだ」
マダム・ダルジュレの方はこれから思い起こそうとする記憶にすっかり気を取られていたので、ウィルキー氏の無礼な態度に気がつかなかった。
「そう、あなたに言っておかねば」 と彼女は喘ぎながら再び口を開いた。「あなたにというより私自身のために。私は自分が何者であるか、そしてどんな苦しみを経て現在の状況に辿り着いたか話しましょう。現在のこの状況……私にとってすべての終わり……。
私の家系を知っていますか……教えてあげましょう、あなたは知らない筈だから。私たちの家系はフランスで最もよく知られた名門の一つです。その家柄の古さにおいても、姻戚関係の煌びやかさにおいても、財産においても……。
私がまだ少女だった頃、両親はフォブール・サン・ジェルマンに住んでいました。ド・シャルースの古い館は本物の立派なお城で、今のパリではもう見られなくなった広大な庭に周囲を囲まれていました。数世紀を経た自然な木々が影を作っている本物の庭園……。
確かに、お金で買えるものは全て手に入ったし、我儘のしたい放題だったけれど、私の青春は惨めなものだった……。
私の父は私にとって殆ど見知らぬ人同然だった。というのは、父は政治的野心に執りつかれ、目まぐるしい政争の渦の中に巻き込まれていたから……。母はと言えば、私を愛していなかったからか、愛情を見せるのは地位にふさわしくないことだと思っていたからなのか分からないけれど、自分と私の間にガラスの壁のようなものを築いていた……。兄は自分の楽しみにあまりに夢中になっていて、取るに足りぬ妹のことなど眼中になかった……。
というわけで私は一人ぼっちで放っておかれ、孤独が生み出す危険な空想に浸るしかなかった。あまりにもプライドが高くて、地位の下の者たちから親切にされても受け付けなかった。慰めといえば本だけで、それも母の相談役によって厳しく選別されたものばかり。でもそれらは私の精神を妄想の世界に導き、あり得ない人物たちのことを思い描くよう計画されていたかのようだった。1.19
不意を突かれ、頭の中は混乱しきっていたが、ド・コラルト氏とド・ヴァロルセイ侯爵のことはずっとウィルキー氏の頭を離れなかった。彼らが自分の立場だったらどうするだろう? 『上流階級』のお手本のようなあの二人なら取るであろう態度を真似るには、どういう風な物腰で行けば良い? そうだ、あの物に動じない冷ややかな表情、そしていかにも退屈だというような横柄な態度、あれこそが洗練された最高のものではないか。
この考えで頭が一杯になり、彼らに負けてなるものかという競争心に燃え、彼はスーツケースの一つに腰を下ろし、脚を組み、あくびをかみ殺している風を装い、密かに呟いていた。
「はいはい、そうですか!またぞろ長台詞とメロドラマか……面白くもないことになりそうだ」
マダム・ダルジュレの方はこれから思い起こそうとする記憶にすっかり気を取られていたので、ウィルキー氏の無礼な態度に気がつかなかった。
「そう、あなたに言っておかねば」 と彼女は喘ぎながら再び口を開いた。「あなたにというより私自身のために。私は自分が何者であるか、そしてどんな苦しみを経て現在の状況に辿り着いたか話しましょう。現在のこの状況……私にとってすべての終わり……。
私の家系を知っていますか……教えてあげましょう、あなたは知らない筈だから。私たちの家系はフランスで最もよく知られた名門の一つです。その家柄の古さにおいても、姻戚関係の煌びやかさにおいても、財産においても……。
私がまだ少女だった頃、両親はフォブール・サン・ジェルマンに住んでいました。ド・シャルースの古い館は本物の立派なお城で、今のパリではもう見られなくなった広大な庭に周囲を囲まれていました。数世紀を経た自然な木々が影を作っている本物の庭園……。
確かに、お金で買えるものは全て手に入ったし、我儘のしたい放題だったけれど、私の青春は惨めなものだった……。
私の父は私にとって殆ど見知らぬ人同然だった。というのは、父は政治的野心に執りつかれ、目まぐるしい政争の渦の中に巻き込まれていたから……。母はと言えば、私を愛していなかったからか、愛情を見せるのは地位にふさわしくないことだと思っていたからなのか分からないけれど、自分と私の間にガラスの壁のようなものを築いていた……。兄は自分の楽しみにあまりに夢中になっていて、取るに足りぬ妹のことなど眼中になかった……。
というわけで私は一人ぼっちで放っておかれ、孤独が生み出す危険な空想に浸るしかなかった。あまりにもプライドが高くて、地位の下の者たちから親切にされても受け付けなかった。慰めといえば本だけで、それも母の相談役によって厳しく選別されたものばかり。でもそれらは私の精神を妄想の世界に導き、あり得ない人物たちのことを思い描くよう計画されていたかのようだった。1.19
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