なんと!十五フラン六十五サンチームも! 他の場合であればこのような予想外の大盤振る舞いにシュパンの顔には大満足の皺が寄せられる筈であった。ところが今日の彼はにこりともしなかった。彼は放心したようにポケットに金を滑り込ませると、酷く気乗りのしない口調で「どうも」と言った。
フォルチュナ氏の方は自分の考えに耽っていて、この些細な出来事には気がつかなかった。
「あいつらをやっつけるぞ、ヴィクトール」と彼は再び口を開いた。「コラルトとヴァロルセイには裏切りの代償を支払って貰う、とお前にも言ってたろう。その日も近いんだ。ほら、この手紙を読んでみてくれ……」
シュパンは有能そうな様子でその手紙を注意深く読んだ。読み終えるとフォルチュナ氏が言った。
「さぁ、どう思う?」
しかしシュパンは軽々しく自分の意見を述べるような青年ではなかった。
「ちょっとすいません、旦那。事情が分からないと答えようがありませんや。何せ俺は旦那から聞いたことっきゃ知らなくて、それはほんのちょびっとだ。俺が自分でこうじゃないか、と当て推量もできなくはないけど、大したことは分からない。つまり、俺には事の次第がまるっきり分かってないんで……」
フォルチュナ氏はしばらく考え込んだ。
「お前の言うことは尤もだ、ヴィクトール」と彼はやがてはっきりした口調で言った。「これまでのところは、お前には必要なことしか話してこなかった。が、これからはお前にもっと重要な仕事をして貰おうと思っている。だから、お前にすべてを説明しなくちゃならないな、少なくともこの件に関する限り私の知り得るすべてを……。これで私がお前のことをどれくらい信頼しているか、分かってくれると思う……」
実際、すぐに彼はシュパンに語り始めた。ド・シャルース伯爵のこと、ド・ヴァロルセイ侯爵とマルグリット嬢について……それは概ね真実であった。しかし、このように打ち明け話をすることで部下のシュパンは自分を大いに評価するだろうと彼が期待していたとしたら、それは大いなる思い違いであった。
シュパンは豊かな経験と、物事を公正に判断する力を持ち合わせていた。フォルチュナ氏の立派そうな動機に基づいた行動は何よりも失望、そして傷ついたプライドから来ているものだということを見抜いた。それに、もし彼が自尊心を傷つけられていなかったら、ド・ヴァロルセイ侯爵がその邪な企みを易々と達成するのを何の良心の痛みも感じることなく傍観していたであろう、ということも。9.1
フォルチュナ氏の方は自分の考えに耽っていて、この些細な出来事には気がつかなかった。
「あいつらをやっつけるぞ、ヴィクトール」と彼は再び口を開いた。「コラルトとヴァロルセイには裏切りの代償を支払って貰う、とお前にも言ってたろう。その日も近いんだ。ほら、この手紙を読んでみてくれ……」
シュパンは有能そうな様子でその手紙を注意深く読んだ。読み終えるとフォルチュナ氏が言った。
「さぁ、どう思う?」
しかしシュパンは軽々しく自分の意見を述べるような青年ではなかった。
「ちょっとすいません、旦那。事情が分からないと答えようがありませんや。何せ俺は旦那から聞いたことっきゃ知らなくて、それはほんのちょびっとだ。俺が自分でこうじゃないか、と当て推量もできなくはないけど、大したことは分からない。つまり、俺には事の次第がまるっきり分かってないんで……」
フォルチュナ氏はしばらく考え込んだ。
「お前の言うことは尤もだ、ヴィクトール」と彼はやがてはっきりした口調で言った。「これまでのところは、お前には必要なことしか話してこなかった。が、これからはお前にもっと重要な仕事をして貰おうと思っている。だから、お前にすべてを説明しなくちゃならないな、少なくともこの件に関する限り私の知り得るすべてを……。これで私がお前のことをどれくらい信頼しているか、分かってくれると思う……」
実際、すぐに彼はシュパンに語り始めた。ド・シャルース伯爵のこと、ド・ヴァロルセイ侯爵とマルグリット嬢について……それは概ね真実であった。しかし、このように打ち明け話をすることで部下のシュパンは自分を大いに評価するだろうと彼が期待していたとしたら、それは大いなる思い違いであった。
シュパンは豊かな経験と、物事を公正に判断する力を持ち合わせていた。フォルチュナ氏の立派そうな動機に基づいた行動は何よりも失望、そして傷ついたプライドから来ているものだということを見抜いた。それに、もし彼が自尊心を傷つけられていなかったら、ド・ヴァロルセイ侯爵がその邪な企みを易々と達成するのを何の良心の痛みも感じることなく傍観していたであろう、ということも。9.1
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