計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

7月の節電効果はどれ程あったのか? (東北電力管内)

2011年08月05日 | 気象情報の現場から
 御存じのように、この夏は全国的に節電が求められています。今年の7月は例年にないような暑さに見舞われました。そこで、気象庁が公開している気象観測データと、東北電力が公開している電力使用実績のデータを基に、この7月の節電効果を独自に検証してみました。


[1] 従来の気温と電力需要の関係 ~ 従来パターンのモデル予測式の作成 ~

 2008~2010年の各07月の東北電力管内の平均気温と電力需要量の相関を求めました。ここで、平均気温は、東北電力管内の各県を代表して新潟、山形、秋田、青森、盛岡、仙台、福島の各日平均気温の単純平均(算術)を求めたものです。また、電力需要量とは、各日の1時間単位の電力使用実績の最大値を使用しています。平日と週末では電力使用の状況が大きく異なるため、平日と週末で独立に相関を求めました。


図1. 2008~2010年の各07月の平均気温と電力需要量の相関(平日)


図2. 2008~2010年の各07月の平均気温と電力需要量の相関(週末)

 図1と図2には、平均気温と電力需要量の相関を求めました。どちらも簡単な一次関数の形で定式化する事ができました。これが、従来の電力需要パターンになります。


[2] 平年値と2011年の平均気温の変化傾向

 続いて、2011年07月の気温の変化を見てみましょう。今年の07月は梅雨明けが非常に早く、その後は07月とは思えないような、本格的な夏の暑さが続きました。


図3. 2011年07月の平均気温の変動と平年値の比較

 図3には、今年の07月の平均気温の変動と平年値の比較を示しました。ここで、平均気温と平年値のいずれについても、東北電力管内の7地点平均を使用しております。07月の上旬~中旬は、平年値よりも5℃近くも高い時もあったようです。


[3] 2011年の気温変化に基づく、従来パターンの電力需要と今年度の電力使用実績の比較

 今年の07月は平年よりも5℃近くも高い・・・という事は電力需要もその分、増加すると考えられます。もし、これが従来パターンであればどの位の電力需要に達するのか、それに対して今年の実績はどうだったのかを見てみましょう。


図4. 2011年07月の気温変動を想定した従来パターンの電力需要と実際の電力使用実績の比較

 図4では、2011年07月の気温変動を想定した従来パターンの電力需要と、実際の電力使用実績を比較してみました。もし、3.11の災害が発生していなければ、この07月の電力需要は1400万kWを超えていたかもしれません。しかし、実際には1200万kW程度に留まっています。全体的に今年の電力使用実績は、従来パターンを下回っています。つまり、節電の効果が確かに現れているのです。


図5. 2011年07月の節電効果(対・従来パターン比)

 図4の結果を基に、節電効果が何%あったのかの推移を表してみました。この結果を見ると、日によって10~20%の間で変動が見られますが、概ね15%前後の効果が得られていると考えてよいでしょう。ちなみに・・・先般、東北電力管内では「この夏は基本的に計画停電は行わない」との発表が出されました。


コメント (2)
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