さて、花火大会のことばかり書きましたが、先週元海上自衛隊幕僚長のお話を聞いてきて、
その内容について報告するという非常に時を得た内容でお送りします。
・・・・正直、花火の話をでれでれと書いている方がアタマも使わないし気が楽なのですが、
もうここに至って事態はのっぴきならぬ状態に来ていますのでここは一つ気力を振り絞って。
ところで、現在進行形で開催されている国会。
あの香港活動家の魚釣島上陸について行われている質疑の政府答弁、お聞きになりました?
あまりにも幼稚でお粗末で嘘丸出しで・・・。
こんな子供政府に、今この日本のかじ取りを任せていては国の将来は無い、と再認識しました。
そして、政府の対応のお粗末さを国民が看過しているのも、これ全て現状認識のための情報が
あまりにもこの国の「反日メディア」によって隠ぺいされているからだと確認しました。
と言うわけで、メディアがはっきりと警告として伝えない防衛の最前線を知っていた海幕長の話を
少しでも皆様の認識の一助にしていただき、考えていただきたく思います。
まずは、読者の方にいただいたコメントからどうぞ。
(`・´)ゞエリス中尉殿、元海幕長との懇談会、羨ましい限りです。
中国の海洋進出は、卑兵も10年ほど前から、気にしていた重要案件です。
記事、楽しみ にしております。
私の理解では、北海道から本州、九州、トカラ、奄美、沖縄、石垣、台湾、フィリピンと繋がる
海の防波堤が、中国軍の太平洋への出口を閉ざ しています。
これは、日米安全保障条約で守らなくてはいけない両国の重要な使命。
尖閣諸島問題も、本件、避けては通れない問題ですし、
台湾の中国併合も、 当然あり得ません。
その場合、アメリカが黙ってはいませんから。
しかし、ここ数年、アメリカの弱り具合は、大変情けない状態です。
たしか、3~4年前、米 海軍幹部が北京を訪問、中国解放軍海軍幹部と懇談した時、
中国側が提案した事、
「アメリカは、世界中に兵を派遣し、平和維持しなくてはならない、お金が掛かるでしょ。
極東アジアの平和維持は、中国にお任せください。
アメリカはハワイまで担当して、ハワイより西側の太平洋は、我々がカバーします」です。
米海 軍幹部は、「・・・・・・」と無言で、帰国したとの事。
一方、解放軍は、旧ソ連製空母ワリャーク(満載排水量5万9千トン)が、試験航海中。
純国産大型原 子力空母二隻を建造中であり、海南島に、2015年までに配備の予定。
米国は、なんとしても中国軍機動部隊を、
南シナ海~インド洋に閉じ込めておかなく てはなりません。
この新さんのコメントにある件についても関連事項がありますので、合わせてご覧ください。出席者に配られた資料。
この下半分に書かれている地図は「中国から見た尖閣海域、ならびに列島線」
我々にはピンときませんが、中国は日本を見るときにはこのような形で見ているのです。
講演の骨子は
「中国の巨大な人民海軍」
「中国の海洋進出」
「それに対する我が国の対応」
の三点から成っていました。
中国と言う国の立場で考えれば、ご存じのように、国内外を問わず不安定で不確定要素が、
混在しているというのが現状です。
そして、遅れてきた大国主義、覇権主義の台頭と共に外へ外へと力を伸ばしつつある実情で、
要地、資源をめぐる対立をあちらこちらに起こして現在に至ります。
そういった中国と言う国の戦略方針を一言で申し上げると、それは
「積極防御」
これに尽きるそうです。
国防費はこの五年で倍増。20年で見ると実に18倍にまでなっています。
しかも、この国防費にはかなり「不可視な部分」、例えば研究費などがあるため、
実際には、この数字の2倍から3倍であろうと言われているそうです。
積極防御とはつまり「被攻撃時の積極反撃」。
簡単に言うと攻撃こそ最大の防御、つまり「侵略も防御」と考えているともいえます。
現在の人民解放軍の軍事力を表にしたものです。
例えば、中国海軍は約60隻の潜水艦を保有していますが、我が国の海上自衛隊は16隻。
しかし、これに関しては海幕長自身の口から、
「我が国の潜水艦は非常に優れている」という頼もしい言葉をいただいております。
さらに原子力潜水艦と通常の電池式の戦力差はほとんど無い、ということもおっしゃっていました。
しかし、何と言っても保有数にして1対4。
そして、中国はその通常型潜水艦をもさらに大量に導入しています。
大型駆逐艦、原子力潜水艦、2万トン級ドック型揚陸艦の配備などを着々と進め、
この4~5年で遠洋展開のための能力を急激につけつつあるのです。
左は2002年に中国が購入したクズネツォフ級空母、「ワリヤーグ」。
昨年改修が済み、2011年8月にはすでに洋上航行試験が行われています。
「永遠に空母を持たないわけにはいけない」
という発言が、日中防衛省会談席上における中国国防部長からなされましたが、
中国は現在、空母の取得に強い意欲を示しており、
おそらく数年以内に2~3隻の空母を持つのではないかと言われています。
さらに、J-15と呼ばれる艦載機タイプの新型飛行機が登場し、
このための模擬訓練施設が建設されているということです。
しかし、空母よりむしろ中国が力を入れているのが潜水艦。
潜水艦の隠密性を必要とする海洋戦略を重く見ていると認識していいでしょうか。
そもそも、どうして中国が海洋進出に力を入れているかと言うと、その理由はシンプル。
まずは一にも二にも経済発展のための海洋権益の確保です。
尖閣にしても、中国が所有を主張し出したのは1968年、海底調査でそこに石油や天然ガスなど、
資源があることが分かってからのことなのは皆さんもご存じでしょう。
大正9年(1920)中華民国、福建省の漁民が遭難したとき、魚釣島の日本人住民が救助にあたり、
それに対して「帝国日本、沖縄県の魚釣島の住民に対する感謝状」が中華民国から出され、
それが資料として残っているのですが、これなども
当時は中国は尖閣諸島が日本の領土だと認識していたという証拠です。
ちなみにここの石油埋蔵量は240億トン、中国全体の年間消費量の100倍。
天然ガスは14兆m3でd、やはり年間消費量の約500倍と言われています。
これだけの資源が中国にとって喉から出るほど欲しいものであるのは明白です。
資源だけでなく、大陸棚、FEZ(排他的経済水域)の管轄権を確保し、
また、海上交通の安全を確保するために中国は自らを「海洋大国」と位置づけました。
ところが実際のところ、中国のFEZ、領海の面積は世界で15位に過ぎません。
対して日本は世界第6位。
国土との割合で行くと、中国とは比べ物にならないくらいの海洋大国です。
(1、アメリカ 2、フランス、3、オーストラリア、4、ロシア、5、カナダに次ぐ)
昨年5月、中国が強引な手でフィリピンの島に標識を立ててしまうという事件がありました。
フィリピンは軍を派遣して標識を撤去したのですが、これが日本だったら
「遺憾砲の発動」だけで終わってしまったのではないかと思われます。
陸地面積のわりに領有海域が少なすぎることが、中国が外へ外へと覇権を伸ばしつつあることの
根本的な理由となっていると言えましょう。
中国は他にもベトナム、ブルネイ、インドネシア、シンガポールとの間にも衝突があります。
また、台湾問題ですが、新さんのコメントにもあるように、中国にとって台湾に独立されることは、
中華民族の根本的利益にかかわってきますから、絶対に阻止しなくてはいけません。
ですから、中国は人民海軍の強大化をよりいっそう推し進め、それによって、
台湾の分裂勢力を威嚇、牽制し、震え上がらせて統一を確保する必要があると言うわけです。
中国は、南沙、西沙、中沙の三つをまとめて「三沙市」という都市を国内法で制定しています。
人の領土に入り込んで勝手に標識を立てる、勝手に市に決めてしまう。
威風堂々、もうはっきり言ってヤクザ国家です。
元海幕長はこういったことについて、批判めいたことや個人的感情的な意見は一切述べません。
ただ淡々と、中国のジャイアニズムの現状を資料で示して解説するのみ。
しかしながら、その事実を披歴するだけで、中国と言う国の恐ろしさ、タチの悪さが
否が応でも証明されるという結果となっていました。
ベトナムに対して、対日本のように、南シナ海の領有の主張を始めたのが51年のことです。
そして、73年に米軍がベトナムから撤退したとたん、海洋調査に入り、
軍事衝突を繰り返した末、92年に在比米軍が撤退したとたん、
94年にはついにミスチーフ礁を占拠してしまいました。
そして現在では全域の支配権の確立を進めているというわけです。
皆さん。
赤字に注目して下さい。
現在、沖縄の基地問題をめぐってアメリカとの関係はぎくしゃくしたままと言えます。
誰が、どの政権が、そのような事態にしたのかはご存知ですね?
誰の、どういう発言が日米関係を劣化させたのか、覚えておられるでしょうか?
この政権の少なくない人数が、政権交代するや否や、真っ先に「中国詣で」をし、
全員が中国の元首と写真を撮り、そして何やら接待されて帰ってくると言う、
とんでもない朝貢外交をしたのは、記憶に新しいところです。
彼らは、アメリカを切り、そこに中国が当然のように入ってくることを、
むしろ中国の要請によって積極的に推し進めているかのように見えます。
何やかやと理屈をつけて防衛費を削れるだけ削り、日本の防衛力を縮小し、
このうえさらにアメリカとの関係が悪くなっていったとき、最終的に
どの国が得をするのか。
上の赤字部分を見れば、それが何を意味するのかは火を見るより明らかです。
さて、このような情勢を、元海幕長の説明によって新たに整理し直すことができ、
講演は非常に有益なものでした。
先ほども言ったように、元海幕長はそれによってナショナリズムをアジテーションするような
言辞は勿論、その脅威についてのネガティブな意見も全く述べることは無く、
ただ我々の認識に、全て判断をゆだねる形で講演会は終わりました。
ただ、そのなかで、非常に興味深かったのが、台湾と言う国について、
「台湾と言う国は、国も民間も日本に本当の好意を持っていてくれる国です」
と言ったこと、そしてベトナムについて、
「したたかと言うか、実に優秀で、文化レベルも民度も非常に高い国だと思います。
フランスにも勝った、アメリカにも勝った国です。
いくら実効支配をされても、やられてもやられても、
決してあきらめないで向かっていくような気概があります。
ベトナムはロシアから潜水艦を6隻購入しています。
ベトナム海軍のトップと話をしたとき、そのことについて『どう思う?』と聞かれました。
わたしは『素晴らしい。潜水艦が6隻あれば、かなりのことができる』と答えました」
と言う発言でした。
8月15日、現政府は、魚釣島に現われた香港の民間活動家に対し上陸を許し
(海保に行動の制限をつけたものと思われる)報道陣にヒーロー・インタビューをさせ、
飛行機で無事にお送り申し上げるという、何に配慮したのか腰砕けもいいところの対応をし、
さらに海保のビデオを公開しないという、二年前と全く同じ対応で現在国会を紛糾させています。
直後のインタビューで、活動家たちは
「今回、上陸などとてもできないと思っていたのに、海保が全然何もしてこないから上陸できた」
と語ったそうです。
さらに、
「活動家たちはレンガを投げてきたが、当たらなかったから公務執行妨害にもあたらない」
という判断で日本政府は彼らを(表向き)強制送還、実は凱旋帰国させました。
しかも、テロ対策上入れてはいけない場所、そして驚くことに
海保の巡視船の上でわざわざメディア(30社)を入れたうえでのインタビュー
を許したというのです。
当初、日本の関係者は誰ひとりこれを阻止することをせず、自民党の宇都隆史議員が
「これはおかしい」と文句を言って、初めて制止がなされたということです。
先日の予算員会、自民の山谷えり子議員の
「上陸を許したのは野田総理の意図でもあったのか」
と言う質問に対し、逆切れして
「暴言じゃないですか!そんなことをするはず無いじゃないですか!」
と激昂してみせた総理ですが、
「海保は『上陸させるな』と言われれば必ず阻止する力を持っているはず。
政府の基本方針の中に『上陸を何が何でもさせるな』と無かったから上陸を許したのです」
と切り返され、沈黙しました。
どこまで中国の足を舐めるのか、とおそらく国民の心ある有権者は同じことを思っているでしょう。
竹島の件に対し、政府は若干強く出ましたが、それが人気取りになると判断したからに過ぎません。
(しかも、それが人気取りになると判断してからなので、非常に対応が遅かった)
中国にはこうやって相変わらず不可解な配慮を続け、それを突っ込まれると逆切れ、居直り、
それが現政権の外交であるわけです。
山谷議員の
「フィリピンも、ベトナムもインドネシア、ブルネイ、シンガポール、インド、皆困っているんです。
中国が覇権主義的で国際ルールを守らない。
日本は平和主義でアジアのお兄ちゃんとして尊敬されている国であります。
シーレーンの安全を皆で守ろうじゃないかと日本がむしろリーダーシップを取っていくべきです」
と言う発言に対する玄葉外相の「我々はそれをやっている」と言う言葉も空虚に響きました。
今、日本は間違いなく歴史の分岐点に立っていると思います。
今後一年、いや数か月の個々の判断のそれぞれが、
日本の将来の姿を決めると言っても、過言ではないのではないでしょうか。
そのような非常時にこのような政権でいいのか。
このとき、海幕長のお話を聞いた人々の中にも、このような不安が新たに生まれたことでしょう。
昨日参議院で野田総理の問責決議が可決しましたが、賛成の立場で川口順子議員は
「今こんな時に政権が交代するのは望ましくないという意見があるが、それは違う。
今こんな時だからこそ、一刻も早く与党能力の無い政権は去るべきである」と述べました。
わたしも全く同意見です。
さて、この講演で浮き彫りにされた、(ぶっちゃけ)「皆が困っている中国の覇権主義」。
それに対して現状でどのような対応を日本が取っているのか、さらに日米同盟についても、
少し踏み込んだお話が聞けたので、また次回にその話をしたいと思います。