他山の石
皆さんは「他山の石」と言う言葉をご存じだと思いますが、思いのほか、ご存じない方や誤解している人が多いようです。
実は、少し古い資料ですが、文化庁が行った平成16年度の「国語に関する世論調査」で、正しい意味を回答した人が26.8%と3割に満たなかったのです。
そこで今日は「他山の石」の謂れについて調べることにしました。
「他山の石」
「他山の石」は中国最古の詩集「詩経」の「小雅・鶴鳴」篇にある故事、即ち、「他山之石、可以攻玉」(他山の石、以って玉を攻(おさ)むべし)に由来します。
この意味は、「よその山から出た粗悪な石でも、自分の玉(宝となるもの)を磨く砥石として利用できる」ということであり、ここから、「他人の失敗やつまらない言行も自分の人格を育てる助けとなりうる」ことを例えて使用されるようになりました。
この成句は「他山の石とする」とも言います。
広辞苑では、【他山の石とする】として、「自分より劣っている人の言行も自分の知徳を磨く助けとすることができる」と説明しています。
「国語に関する世論調査」
しかし、文化庁が行った国語に関する世論調査によれば、正しい意味を回答した人は僅か26.8%で、3割に満たなかったのです。
調査で「他山の石」の意味を尋ねたところ、結果は次のとおりでした。(下線を付したものが本来の意味。)
(ア) 他人の誤った言行も自分の行いの参考となる・・ 26.8%
(イ) 他人の良い言行は自分の行いの手本となる・・・・ 18.1%
(ウ) (ア)と(イ)の両方の意味で使う・・・・・・・・・・・・・・・・5.5%
(エ) (ア)と(イ)のどちらの意味でも使わない ・・・・・・・ 22.4%
(オ) 分からない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・27.2%
調査結果では、(イ)の意味に誤解している人と(エ)、そして(オ)の分からないと答えた人の合計が67.7%を占めており、7割ほどの人が本来の意味を理解していなかったようです。
特に(オ)の「分からない」を選んだ人が全体では27.2%と最も多かったのがこの言葉の特徴だったということです。
「使用上の注意」
「他人の良い言行は自分の行いの手本となる」と誤解して、例えば先生や目上の人に対して、「先生の教えを他山の石として頑張っていきます。」のように使用した場合には、先生や目上の人に大変失礼な発言となります。
『他山の石』の本来の意味は『他人の 誤った言行も自分の行いの参考となる』と言う意味なので、間違わないように、使用には十分注意したいですね。