ゆずりは ~子想~

幼い葉が成長するのを待って、古い葉が譲って落ちることから名付けられた「ゆずり葉の樹」。語りつがれる想いとは・・・

思い出はいつも突然に

2007年05月25日 | これも自分あれも自分
今朝、歯磨きをしていた時だった。
突如として、幼き頃の思い出がよみがえった。
それは、私の幼稚園時代。

新しく建てられた園内。外には園庭とその向こうに広い空き地と、セメント工場の要塞が見えた。煙突からモクモクと出ている煙はいつも白かった。
私はいつものように園の教室にいた。担任の先生から離れず、なにやら話を聞いてほしくて、いつもしゃべり続けていたように思う。定かではないが。
この日も、先生に話しかけていた。最近、自分の大腿部がズキンズキンと痛むことを。「ズキンズキンと骨の中が痛いんだよ、先生。」
「ねぇ、先生、大丈夫かなぁ?」
「先生、ほらまた、痛いよ。ここ、ここ。」
先生は、私の目も見ずに、他の園児たちと戯れている。園児の小さな椅子に座って、前にも後ろにも子ども2、3人が囲んでいて、先生は笑いながらも大変だったのかもしれない。が、子どもの私には分かっていた。私の言葉を聴きたくないのだということに。
先生の立場から考えれば、先生の取った冷たい態度はよくわかる。逐一報告してくるそのよく見えない体のこと。いつも先生の周りにいて、しゃべりまくっているこの子どもを相手にするには、すべての言葉を100%聴いては仕事にならないこと。
子どもの私は割りと平気なふりをして、先生は今日は私の話を聞きたくないんだと思いたかった。
しかし、今朝急に思い出したのは、「あ、先生は私のこと、あまり良く思っていなかったな。」という新事実だった。そして、そう思い出すと、そういえばいつも目が笑っていなかったとか、担任の先生よりも園長先生が好きだったなとか考え出すと、きりがなくなってきた。自分のお弁当がなかった時にも、その先生にだけは「お弁当を忘れました。」と言えなくて、4人か6人で座ったテーブルに、じっとうつむいたまま、泣くのをこらえていたことも思い出し、なぜ言えなかったのかを勘ぐってしまう始末。なにやらおかしな方向に考えが及んでしまったので、コップでうがいをするのと同時に、洗面台にペッと吐き出した。

思い出は、いつも突然にやってくる。
しかもそれは、だいたいなんにも関係性のない時に起きるのだ。

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