空に月が浮かんでいる。
澄んだ空気のなかで、白く、まろく、輝く月。
その下に並ぶ、高層ビル、都会の建物たち。
けれど月の向こうにははるかな薄青い空、そしてピンク色の朝焼け。
早朝から出かけた兄がメールをくれました。
「月がきれいだよ。ベランダから見えるよ」
窓を開けると、まだ街が動き出す前の月、眠りの前の月明かりがありました。
♪月を眺めていた
少年はいつか
大人になり、町を去った
魔法など信じられないと
けれど
時は流れいつか 少年は再び
月を見てる 都会の窓から
魔法を信じて
これは昨年、お世話になっているアプローチシアターさんの公演
「お月様へようこそ」で歌われたオリジナルのエンディングテーマの歌詞。
それはそれはうつくしい曲で、真っ青なライトの中浮かぶ月を背景に
オペラ歌手のゆかりちゃんの天から降りてきたような祈りのある声が印象的で
今でも夢の中に出てくるくらいの名曲なのです。
(作詞はブックマークにもある「タカラノタマゴ」のわきちゃんが書いたもの。
日本でも有数のフィギュアスケートのコメンター、そして評論家であり、
あの有名な「劇団○季のオペラ座の怪人はすごいらしい」を生み出した
コピーライターで童話作家で画家で女優、さらに英語ぺらぺらの才媛であります。)
私はこの歌詞がとても気にいっています。
朝焼けの月を見ていたら、月を見上げる少年の気持ちになりました。
きっと魔法を信じられるようになった、大人の少年は(^^)
こんな気持ちで空を、月を見上げたに違いありません。
「お月様へようこそ」を書いたジョン・パトリック・シャンリィは
アメリカ・ブロンクス生まれの作家で、ブロンクスを舞台に
人間の中にある孤独とそこから生まれ来る愛を描くのです。
私の好きな脚本家の一人です。
このお月様へようこそは6つのお話のオムニバスで構成されています。
赤いコートに秘められた想いから始まる若い男女の恋、
鉛筆がなければ詩をかけないと苦悩する詩人とそれを支える恋人、
バーで出会った孤独な男女が心を通わした瞬間に到達する宇宙、
自分以外には見えない人魚に恋をしたウォルターの喜びと孤独、
街に閉じ込められた少女と旅するカウボーイのはかない恋、
そして表題「おつきさまへようこそ」は
高校を卒業してしばらくぶりに出会った男女の恋心を描きます。
どの主人公も大人になって、魔法が信じられなくなり、
そして自分の中に魔法がある事を見つけ出す、そんな話です。
人の人生にはいろいろな出来事が潜んでいて、それをその本人しか体験できません。
その経験は喜びになり、悲しみになり、いろいろな形になってその人に宿ります。
時に孤独は人の心をさいなみ、すべてのものさえ失わせてしまう。
けれど、実はその孤独の中に答えが潜んでいる。
そしてその孤独を解く魔法が愛であると言う事をシャンリィの作品は教えてくれるのです。
「空を見てご覧。星や惑星だ。こんな美しさがあったなんて信じられない。
しかも、僕たちは何年も生きてきて、気付きもしないんだ。」
・・・
「二人でいるのがこんない楽しいのは何故だろう?何の努力もしていないのに?
星や惑星はいつもあそこにあるんだよね?」
「そう」
「そして人間はいつも孤独なんだよね?」
「そう」
「でも、今夜僕が、何年かぶりかに感じているこの喜びを感じる事が可能なんだ。」
・・・
「どうやってここにたどり着いたんだろう?」
「真剣になったからここへ来たのよ」
“お月さまへようこそ~星降る夜に出かけよう”より
こういった「愛を知り魔法が解ける」というシチュエイション、かなり好きですね(笑)
もう一つ、これ系のお気に入りがミュージカルの「美女と野獣」です。
ディズニーのアニメーションでは野獣のビーストとベルが
お散歩をしたり、小鳥に餌をやったりして少しづつ仲良くなっていきますが、
ミュージカルではこのシーンが「図書館での出来事」に変えられています。
私はこの図書館のシーンが大好きなんです。
ここにはミュージカルだけのためのオリジナル曲「ヒューマン・アゲイン」が使われています。
その我侭な心のために野獣に変えられてしまったビーストの城には
家来達もいろいろな家財道具に姿を変えられて住んでいます。
魔法を説く方法は一つだけ、魔法使いの置いていった薔薇の花びらが
全部落ちてしまうまでに野獣が誰かに心から愛し、愛されるなら魔法は解ける。
美しい娘ベルが囚われたのをきっかけにみんなは二人の愛を期待しますが
元来我侭なビーストはベルを怒らせてばかりです。
ところがビーストがベルの大好きな本を与えようと
城の図書室に行ったところから話が少しづつ変わっていくのです。
図書室に連れて行かれたベルは大好きな本に囲まれて喜んでいます。
「まあ、アーサー王の物語、これあたし好きなの!読んだ事ある?」
「いいや」
「良かったら先に読んで」
「いいよ、君から」
「いいわ、あなたから」
「…、読めないんだ」
「どうして…読み方を習わなかったの?」
「習ったよ。遠い昔に…」
「、、、あたし!この本、誰かに読んであげたいと思っていたのよ!
さあ、どうぞ。隣に座って。」
ベルは優しくビーストに声をかけ本を読み始めます。
「そうしてグィネビア姫は修道院に入り一生を過ごしました。おしまい」
「ああ、なんて素敵な話なんだ。本がこんなに面白いなんて!」
「気に入った?」
「ああ、本は僕を別の世界に連れてってくれる。
僕が誰であるかという事を忘れさせてくれる。」
「、、、あなた、あたしと似てるわ。」
「君と僕が?」
「ええ。私の街ではみんながあたしの事を“変わり者”って呼ぶの」
「君が?変わり者?」
こうして二人の孤独が出会い、溶け合っていきます。
それを見まもる家来達はこの恋が実り人間に戻る日が来る事を夢見て
「ヒューマン・アゲイン」、もう一度人間に戻りたいと望みます。
そしてシーンはこういうセリフで終わります。
「ねえ、お願いを聞いてくださる?」
「なんだい?」
「あたしと食事をして欲しいの」
「君と僕が?」
「ええ」
「食事を?」
「ええ」
「ああ、答えはもちろん“YES”です!」
二人を見つめる周りの人々はこの様子を観て
もう一度人間に戻れる日がくるのなら
こんどは歌って、踊って、笑って、こころから楽しく暮らすんだ、
あの輝く光を大切に暮らしていこうと歌いあげます。
ラストはご存知のようにベルとの愛を得た野獣が人間に戻り幸せになるというお話。
ミュージカルではポット婦人と息子のチップの親子愛が描かれていたり感動的です。
どんどん動けなくなり本物の家財道具に近づくなかポット婦人が言うのです。
「あたしは諦めないわ。あの子が笑顔で駆け回るのを見るまでは」
ラスト、人間に戻ったポット婦人のもとに、少年に戻ったチップが
「ママ!」と駆け寄ってくるところは舞台に出ていても涙でした。
機会があったらご覧いただきたい作品の一つです。
愛という魔法はあちこちに眠っているのです。きっと。
魔法の杖は心の中にあります。どうぞそれを見つけてください。
あなたの中の魔法を忘れた少年も月のちからでよみがえることでしょう。
そらはすっかり青空です。
澄んだ空気のなかで、白く、まろく、輝く月。
その下に並ぶ、高層ビル、都会の建物たち。
けれど月の向こうにははるかな薄青い空、そしてピンク色の朝焼け。
早朝から出かけた兄がメールをくれました。
「月がきれいだよ。ベランダから見えるよ」
窓を開けると、まだ街が動き出す前の月、眠りの前の月明かりがありました。
♪月を眺めていた
少年はいつか
大人になり、町を去った
魔法など信じられないと
けれど
時は流れいつか 少年は再び
月を見てる 都会の窓から
魔法を信じて
これは昨年、お世話になっているアプローチシアターさんの公演
「お月様へようこそ」で歌われたオリジナルのエンディングテーマの歌詞。
それはそれはうつくしい曲で、真っ青なライトの中浮かぶ月を背景に
オペラ歌手のゆかりちゃんの天から降りてきたような祈りのある声が印象的で
今でも夢の中に出てくるくらいの名曲なのです。
(作詞はブックマークにもある「タカラノタマゴ」のわきちゃんが書いたもの。
日本でも有数のフィギュアスケートのコメンター、そして評論家であり、
あの有名な「劇団○季のオペラ座の怪人はすごいらしい」を生み出した
コピーライターで童話作家で画家で女優、さらに英語ぺらぺらの才媛であります。)
私はこの歌詞がとても気にいっています。
朝焼けの月を見ていたら、月を見上げる少年の気持ちになりました。
きっと魔法を信じられるようになった、大人の少年は(^^)
こんな気持ちで空を、月を見上げたに違いありません。
「お月様へようこそ」を書いたジョン・パトリック・シャンリィは
アメリカ・ブロンクス生まれの作家で、ブロンクスを舞台に
人間の中にある孤独とそこから生まれ来る愛を描くのです。
私の好きな脚本家の一人です。
このお月様へようこそは6つのお話のオムニバスで構成されています。
赤いコートに秘められた想いから始まる若い男女の恋、
鉛筆がなければ詩をかけないと苦悩する詩人とそれを支える恋人、
バーで出会った孤独な男女が心を通わした瞬間に到達する宇宙、
自分以外には見えない人魚に恋をしたウォルターの喜びと孤独、
街に閉じ込められた少女と旅するカウボーイのはかない恋、
そして表題「おつきさまへようこそ」は
高校を卒業してしばらくぶりに出会った男女の恋心を描きます。
どの主人公も大人になって、魔法が信じられなくなり、
そして自分の中に魔法がある事を見つけ出す、そんな話です。
人の人生にはいろいろな出来事が潜んでいて、それをその本人しか体験できません。
その経験は喜びになり、悲しみになり、いろいろな形になってその人に宿ります。
時に孤独は人の心をさいなみ、すべてのものさえ失わせてしまう。
けれど、実はその孤独の中に答えが潜んでいる。
そしてその孤独を解く魔法が愛であると言う事をシャンリィの作品は教えてくれるのです。
「空を見てご覧。星や惑星だ。こんな美しさがあったなんて信じられない。
しかも、僕たちは何年も生きてきて、気付きもしないんだ。」
・・・
「二人でいるのがこんない楽しいのは何故だろう?何の努力もしていないのに?
星や惑星はいつもあそこにあるんだよね?」
「そう」
「そして人間はいつも孤独なんだよね?」
「そう」
「でも、今夜僕が、何年かぶりかに感じているこの喜びを感じる事が可能なんだ。」
・・・
「どうやってここにたどり着いたんだろう?」
「真剣になったからここへ来たのよ」
“お月さまへようこそ~星降る夜に出かけよう”より
こういった「愛を知り魔法が解ける」というシチュエイション、かなり好きですね(笑)
もう一つ、これ系のお気に入りがミュージカルの「美女と野獣」です。
ディズニーのアニメーションでは野獣のビーストとベルが
お散歩をしたり、小鳥に餌をやったりして少しづつ仲良くなっていきますが、
ミュージカルではこのシーンが「図書館での出来事」に変えられています。
私はこの図書館のシーンが大好きなんです。
ここにはミュージカルだけのためのオリジナル曲「ヒューマン・アゲイン」が使われています。
その我侭な心のために野獣に変えられてしまったビーストの城には
家来達もいろいろな家財道具に姿を変えられて住んでいます。
魔法を説く方法は一つだけ、魔法使いの置いていった薔薇の花びらが
全部落ちてしまうまでに野獣が誰かに心から愛し、愛されるなら魔法は解ける。
美しい娘ベルが囚われたのをきっかけにみんなは二人の愛を期待しますが
元来我侭なビーストはベルを怒らせてばかりです。
ところがビーストがベルの大好きな本を与えようと
城の図書室に行ったところから話が少しづつ変わっていくのです。
図書室に連れて行かれたベルは大好きな本に囲まれて喜んでいます。
「まあ、アーサー王の物語、これあたし好きなの!読んだ事ある?」
「いいや」
「良かったら先に読んで」
「いいよ、君から」
「いいわ、あなたから」
「…、読めないんだ」
「どうして…読み方を習わなかったの?」
「習ったよ。遠い昔に…」
「、、、あたし!この本、誰かに読んであげたいと思っていたのよ!
さあ、どうぞ。隣に座って。」
ベルは優しくビーストに声をかけ本を読み始めます。
「そうしてグィネビア姫は修道院に入り一生を過ごしました。おしまい」
「ああ、なんて素敵な話なんだ。本がこんなに面白いなんて!」
「気に入った?」
「ああ、本は僕を別の世界に連れてってくれる。
僕が誰であるかという事を忘れさせてくれる。」
「、、、あなた、あたしと似てるわ。」
「君と僕が?」
「ええ。私の街ではみんながあたしの事を“変わり者”って呼ぶの」
「君が?変わり者?」
こうして二人の孤独が出会い、溶け合っていきます。
それを見まもる家来達はこの恋が実り人間に戻る日が来る事を夢見て
「ヒューマン・アゲイン」、もう一度人間に戻りたいと望みます。
そしてシーンはこういうセリフで終わります。
「ねえ、お願いを聞いてくださる?」
「なんだい?」
「あたしと食事をして欲しいの」
「君と僕が?」
「ええ」
「食事を?」
「ええ」
「ああ、答えはもちろん“YES”です!」
二人を見つめる周りの人々はこの様子を観て
もう一度人間に戻れる日がくるのなら
こんどは歌って、踊って、笑って、こころから楽しく暮らすんだ、
あの輝く光を大切に暮らしていこうと歌いあげます。
ラストはご存知のようにベルとの愛を得た野獣が人間に戻り幸せになるというお話。
ミュージカルではポット婦人と息子のチップの親子愛が描かれていたり感動的です。
どんどん動けなくなり本物の家財道具に近づくなかポット婦人が言うのです。
「あたしは諦めないわ。あの子が笑顔で駆け回るのを見るまでは」
ラスト、人間に戻ったポット婦人のもとに、少年に戻ったチップが
「ママ!」と駆け寄ってくるところは舞台に出ていても涙でした。
機会があったらご覧いただきたい作品の一つです。
愛という魔法はあちこちに眠っているのです。きっと。
魔法の杖は心の中にあります。どうぞそれを見つけてください。
あなたの中の魔法を忘れた少年も月のちからでよみがえることでしょう。
そらはすっかり青空です。