2017年のブログです
村上さんの新作『騎士団長殺し』を読んでいたら、『海辺のカフカ』を思い出しました。
物語の底を流れるユーモアの質にじーじは同じような印象を受けました。
特に、ホシノくんをめぐるユーモアと同質のように思える前向きなユーモアは絶品だと思います。
どんなに苦しい状況でもホシノくんのようなユーモアがあれば、なんとかなれそうな気がします。
『海辺のカフカ』については2012年にブログを書いていて、とても十分な文章とはいえませんが、しかし、全くの的外れでもないようなので、再録してみます。 (2017. 4 記)
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2012年のブログです
村上春樹さんの『海辺のカフカ』を再読しました。
単行本が出てすぐ、ついこないだに読んだばかりのような気がしていたのですが(この間、いろいろな村上春樹論を読んでいたせいもあるかもしれません)、単行本は10年前に出ていますので、じつに10年ぶりの再読でした。
一回目に単行本を読んだ時はやや急いで読んでしまったせいか、あまり深い感動というものまでは感じられないで終わってしまった印象でした(村上さん、ごめんなさい)。
しかし、今回は自分が10歳、年を取ったこともあってか、一つ一つのエピソードがとても面白く、印象的でした(特にカーネル・サンダースとホシノくんのやり取りがとても面白くて、深刻な場面なのについ笑ってしまいました)。
じっくりと味わいながら、終わりが来るのがもったいないような気持ちで読みました。
読み込んでいる最中には、時々、意識がどこかにいっているような感じもするくらいで、集中して意識や無意識を深めながら読めたように思います。
そして、あちこちの箇所でいろいろな感情や気持ち、感覚、情動などを味わえたと思います。
読後には精神的にリフレッシュしたような感じがしました。
また、数年後に読みたいなと思うくらいに、とてもすごくて、いい小説だと改めて思いました。 (2012記)
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2019年6月の追記です
7年ぶりに再読をしました。
ゆっくり、ゆっくりと、味わいながら読みました。
60代なかばで読む『カフカ』はまた魅力的でした。
読む人の年齢、環境、生き方によって、それぞれの読み方ができ、感じ方ができるのでしょうが、年寄りになった今のじーじには、やはりホシノくんの存在が一番大きく感じられました。
ただのヤンキーがナカタさんやカーネル・サンダースとのやり取りの中で成長する姿がとてもいいです。
特に、カーネル・サンダースとのやり取りはすごく面白くて、電車の中で読むのは危険です。
村上さんもおそらくかなり楽しみながら書いたのではないかと想像します。
カフカ少年と母なる存在の佐伯さんとの関係では、覚えていることの大切さが印象に残りました。
覚えていることで、死者は生きる者の中で意味を持ち続けるということでしょうか。
また、虐待や遺棄については、いろいろな事情をわかることが赦すことにつながるということ、もテーマでしょうか。
とにかく、一つの小説の中で、いろいろなことが重層的に語られている本当の意味での「物語」ではないかと思います。
いい小説です。 (2019.6 記)
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2020年12月の追記です
先日、堀江敏幸さんと角田光代さんの『私的読食録』(2020・新潮文庫)を読んでいたら、角田さんが、『海辺のカフカ』は、理解するとか、解釈するとか、そんなことよりも、この物語のおもしろさをただ浴びればいいのではないか、と思った、と書いていて、同感!と思いました。 (2020. 12 記)
すごく救われました。
人の失敗をどれだけおおらかに見守ることができるかどうか、大切なことだと思います。
なかなか難しいことですが、見習っていきたいと思います。
いつも、ブログを拝見させていただきながら、「ああ、そうだな・・」と共感したり、参考にさせていただいたりしています。
『海辺のカフカ』私も読みました。
もちろん、本も持っています。
もう一回、読んでみようかな・・と思っています。
それから、コメントのこと、どうぞ、お気になさいませんように・・。
コメントをいただけたことは、とても嬉しかったのですから。
でも、ご希望ですから、削除をいたします。
これからも、どうぞ、よろしく。。。
たしかに、カーネルサンダースのことは微かに覚えていますが、ホシノくん?読み急いでしまったからでしょうか、忘れてしまいました。単行本の背表紙はほぼ毎日目に入っているのですが。
次の作品まではまた何年かかかるでしょうから、もう一度、読んでみようと思います。ありがとうございます。