ヨシムラ・サイエンス・ラボ

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身の周りでひっそりと使用されている亜鉛

2021年10月03日 | 身近な金属製品
伝統工芸と身近な物を材料科学するヨシムラ・サイエンス・ラボです。

今日は、「亜鉛」のお話です。
亜鉛は、鉄、銅、アルミニウムと同様に、ベースメタルと呼ばれる私たちの生活を支える基盤となる金属材料の1つです。
しかし、亜鉛と言われても、一般の方々にとっては、馴染みの薄い金属材料ではないでしょうか。
そこで、本日は、私たちの身の周りで活躍している亜鉛の用途についてご紹介します。

亜鉛の用途を多い順で並べると、トタンと呼ばれる犠牲防食を目的としためっき用途、次に銅への添加元素としての伸銅品用途、ダイキャスト用途、無機薬品用途、の順になります。

亜鉛用途1位のめっき用途は、鉄鋼材料の赤錆を抑制するいわゆる犠牲防食の役割で、灰色の模様のある街角のポールや門扉で見ることができます。

亜鉛用途2位の伸銅品用途は、銅に亜鉛を添加して銅の強度などの特性を向上させる役割で、その銅合金を黄銅や真鍮と呼びます。
亜鉛用途3位目のダイカスト用途は、亜鉛にアルミニウムを添加した亜鉛合金を使用した用途で、おもちゃや自動車部品などに使用されています。

1位の鉄鋼材料の赤錆を防ぐめっき用途と、2位の銅の特性を向上させる伸銅品用途は、亜鉛用途全体のおおよそ70%弱を占めています。
これらの用途は、どちらかというと亜鉛が主役というよりは、鉄鋼材料や銅を陰で引き立てる、黒子、あるいは縁の下の力持ち的な役割と言えるのではないでしょうか?
亜鉛が主役となるダイカスト用途がようやく3位にありますが、ダイカスト製品のほとんどは、その表面に塗装やめっきが施されていますので、亜鉛が使用されていることに気づくことが少ないようです。
具体的には、先日のブログでご紹介したアメリカの1セント硬貨のように。

以上から、亜鉛は、身の周りでひっそりと使用されている金属材料と言えるかもしれませんね。

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