チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ『なにかが首のまわりに』
美しい黒人女性の横顔が描かれたカバー。
右端、縦にまとめられたタイトル、著者名などは、イラストに比べて控えめなのに、不思議なほど可読性がいい。
本を開く。
袖に著者の写真があり、ハッとするほどの美人。カバーのイラストは著者なのだろう。
12の短編。
舞台はナイジェリア、またはアメリカ。
家族、夫婦、恋人、友人、見知らぬ他人との関係を、ピンセットでそっと言葉を並べるように描いていく。
人と人は分かり合えるのか、それとも理解できないものなのか。
少々、悲観的な見方をしているようにも感じる。
それは、著者がアフリカ出身で、黒人で、女性ゆえに受ける、他人からの眼差しや、言葉の端々に感じる差異に気づいてしまうからだろう。
著者のそんな繊細さの表れた物語。
「アメリカ大使館」は、ナイジェリアのアメリカ大使館で、難民ヴィザの申請をする女性の話。
迫害された証拠が必要だと言う担当者に、女性は不信感を募らせる。
「…おそらくヤシ油で料理などしない人、しぼりたてのヤシ油が鮮やかな、鮮やかな赤色をしていて、時間がたつと凝固して、ごつごつしたオレンジのようになる、そんなことさえ知らない人だ」
とはいっても、相手も血の通った人間、本気になって話せば、こっちのことを理解してくれるのではないか、そんな考えは甘いのだろうか。
カバーデザインは鈴木成一デザイン室、装画は千海博美氏。(2019)