ハビエル・アスペイティア『ヴェネツィアの出版人』
15世紀のヴェネツィアで、本作りに取り憑かれた男の物語。
帯に「ビブリオフィリア必読の長編小説!」と書いてあるにもかかわらず、ノンフィクションだろう、本好き(ビブリオフィリア)が知っておくべき歴史が書かれているのだろうと思っていた。
簡潔で主張しない、表紙の静かなたたずまいが、真面目で堅い内容を想像させたのだ。
ところが、冒頭の数行を読んだだけで気持ちをがっちり掴まれてしまった。
さらに1ページと進まないうちに、鮮やかな視点の移動に参ってしまい、それからあとは一気読み。
実際には、何日もかけてじっくり読んだのだが、一気に物語の中を走り抜けような爽快感があった。
そして、もう一度、最初の章を読んでみる。
余韻に浸る。
史実に基づいているのだろうが、著者の想像力は凄まじい。
人物一人ひとりが、いまを生きているように魅力的に描かれている。
ビブリオフィリアしか興味を持てないのか?
とんでもない。
きっと誰が読んでも楽しめる。
装丁は水崎真奈美氏。(2019)