ジョージ・ソーンダーズ『十二月の十日』
帯を外すと、コラージュの全容が現れる。
どことなく不気味ながらお洒落だ。
左下にある「十」は、パイプを十字に組んだ写真。
そのパイプと、ほぼ同じ太さでタイトル文字が入っている。
あえて、文字がコラージュの一部に見えるように組んでいるのだろう。
文字と写真の境界の曖昧さは、現実と妄想の曖昧さのようでもある。
この小説には、2つの世界を行ったり来たりしながら、読む者の気持ちを揺さぶり、しっかりつかんでしまう凄さとうまさがある。
10編の物語は、決して親しみやすいとはいえない。
ちょっとダメな人たちが登場し、共感しにくい。
彼らが、足を絡め取られるように、困ったことに巻き込まれていくと、同情しながら一緒に考え、経過を見守る。
お節介ながら、口を挟みたくなる。
言葉の感覚が絶妙だと感じるのは、岸本佐知子氏の翻訳もいいのだろう。
装画はQ-TA氏、装丁は川名潤氏。(2020)