テイラー・アダムス『パーキングエリア』
雪が散らつく夜、外灯の下に駐められたバンのリアウィンドウに、人の両手が貼り付いている。
車の中で惨劇が起こったのか、この物語はホラーなのか。
書店で見かけた文庫本のカバーに、ショッキングなイラストが描かれていた。
タイトルを読んだ直後に、その小さな手に気づく。何気なく見ていたものが、以前とは違ってしまう、それは巧妙なデザインの効果だ。
手は、タイトルの「パーキング」と「エリア」のほんのわずかな隙間に見える。
版面いっぱいに大きな文字が入るよう「パーキング」は途中で改行されているのに一語として認識できる。
続く「エリア」は、「パーキング」と同じかすれた黄色で、右上に微妙に傾いでいて、2つの単語は一体化している。
それなのに、何か訴えかけるような手を見つけてしまうと、「パーキング」と「エリア」は完全に分断されてしまう。異常な状況下で、仲間とはぐれた時の怖さを想像する。
サスペンスの導入部分として、これほど魅力的なものはない。
ただ、小説はその期待の大きさに見合うほどではなかったのが残念なところだ。
サスペンスは騙す。事実を隠し、嘘をつく。
この物語でも、何度も騙され、それが読書の楽しさを生む。でも、映像にした方が面白いかな、ちらりと思う。
装丁はアルビレオ、装画はゲン助氏。(2020)