ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

赤いモレスキンの女

2021-03-01 19:05:05 | 読書
 アントワーヌ・ローラン『赤いモレスキンの女』




 アントワーヌ・ローランの日本語訳本は、とてもお洒落なカバーを身につけている。

 『ミッテランの帽子』も『赤いモレスキンの女』も、持っているだけで楽しくなる。それは、センスのいいイラストと色のためだろう。

 『赤いモレスキンの女』に使われている赤は暗めの落ち着いた色。モレスキンのノートと同じ赤なのか、手元にノートがないのでわからないが恐らく近い色のはずだ。

 原題は「赤いノートを持つ女性」でモレスキンは入っていない。モレスキンがあることで、知的で上品な女性を連想させる。カバーに描かれた女性が手に持つノートには何が書かれているのか、ミステリアスな魅力も感じる。

 イラストには黒猫も描かれている。この猫は単なる飾りではなくて、物語の中で重要な役割を果たす。


 物語は、想像できない展開をしていく。細部にまでセンスの良さが行き渡り、読んでいて心地よい。

 実在する作家パトリック・モディアノが心憎い登場の仕方をする。この本が執筆された当時、モディアノはゴンクール賞作家だったが、その後ノーベル賞を受賞した。ノーベル賞作家としてのモディアノでも、この本に登場したのだろうか。この小説にはゴンクール賞作家の方がお洒落で似合っている気がするのだ。


 イラストは北住ユキ氏、装丁は新潮社装幀室。(2021)