ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

囁き男

2021-07-04 19:40:45 | 読書
 アレックス・ノース『囁き男』




 密生した葉の間に見える2つの目が、恐ろしげでもあり、ややコミカルにも見える。

 カバーのイラストからは、この本が純粋なホラーのようにも思えるし、「囁き男」という都市伝説を題材にしたミステリーとも受け取れる。

 日本語タイトルの下に入っている「Whisper man」も楽しげな様子を醸し出していて、本当はとても怖いことを隠しているかのようだ。


 子どもが行方不明になった。

 母親は、その子がいなくなる前、窓際で怪物に囁かれたと言っていたことを思い出す。

 その街では、似たような事件が20年前にも起こっていた。しかし、その時の犯人「囁き男」は捕まり、今は刑務所にいる。


 物語は、その街に引っ越してきたシングルファーザーと7歳の息子を中心に語られる。

 愛情はあるのに、亡くなった妻のように息子と上手に接することができずに悩む父。

 息子は、孤独から心を病んでいるようにも、どことなく不思議な力を持っているかのようにも描かれる。


 驚かされる展開が続く中で、父と息子の確かなつながりが、物語をより堅牢なものにしていく。


 装画は阿部結氏、装丁は須田杏菜氏。(2021)


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