アレックス・ノース『囁き男』
密生した葉の間に見える2つの目が、恐ろしげでもあり、ややコミカルにも見える。
カバーのイラストからは、この本が純粋なホラーのようにも思えるし、「囁き男」という都市伝説を題材にしたミステリーとも受け取れる。
日本語タイトルの下に入っている「Whisper man」も楽しげな様子を醸し出していて、本当はとても怖いことを隠しているかのようだ。
子どもが行方不明になった。
母親は、その子がいなくなる前、窓際で怪物に囁かれたと言っていたことを思い出す。
その街では、似たような事件が20年前にも起こっていた。しかし、その時の犯人「囁き男」は捕まり、今は刑務所にいる。
物語は、その街に引っ越してきたシングルファーザーと7歳の息子を中心に語られる。
愛情はあるのに、亡くなった妻のように息子と上手に接することができずに悩む父。
息子は、孤独から心を病んでいるようにも、どことなく不思議な力を持っているかのようにも描かれる。
驚かされる展開が続く中で、父と息子の確かなつながりが、物語をより堅牢なものにしていく。
装画は阿部結氏、装丁は須田杏菜氏。(2021)