ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

裏切り

2022-11-26 15:26:28 | 読書
 シャルロッテ・リンク『裏切り』



 期待をしすぎると残念な思いをすることがある。

 わかっていても、同じ著者の『失踪者』で最高に楽しい経験をした後に、気持ちを抑えるのは容易ではない。


 ミステリーに仕組まれた謎は、一見不可解な方が面白い。

 でも、突拍子もなく感じてしまうと、それまで読んできた重厚だった物語の表面が、風雨にさらされた砂山のようにもろく崩れていく。

 しかし、少し崩れただけでは、この小説の面白さは、実は揺るがない。

 
 引退した警部が惨殺され、娘のケイトがロンドンから戻ってくる。

 彼女はスコットランド・ヤードの刑事だが、人とうまく接することが苦手で、刑事として優秀ではない。

 彼女を案内する地元警察のケイレブはアルコールの問題を抱えている。

 最初はケイトのことを気遣うが、警察の捜査に先んじて行動する彼女を次第に疎ましく感じていく。

 物語は、犯人と思われる男の常軌を逸した行動を同時に追い、緊迫した展開になっていく。


 読み終わり、謎が解けたあとでもページを繰ると引き込まれてしまう。

 犯人を追うことだけが物語のすべてではなかったと気づくのだ。


 装丁は東京創元社装幀室。(2022)


コメント
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