ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

インヴェンション・オブ・サウンド

2023-03-31 18:33:04 | 読書
 チャック・パラニューク『インヴェンション・オブ・サウンド』



「キャー!」

 恐怖に慄く女性の悲鳴。

 瞬間、身体が硬直し、頭の中は真っ白になる。


 そんな悲鳴を、いままで間近で聞いたことがない。

 記憶にあるのは、俳優が演じる映画やドラマの中だけだ。

 それは本当の恐ろしさ、痛みが伴うものではないはず。

 では、真実の苦痛がもたらす悲鳴とはどんなものなのだろう。


 肉体を傷つけ悲鳴を上げさせる。

 それを録音して、映画の音響として使用する。

 考えるだけでもおぞましい。

 この小説では、それを職業にする女性が登場する。

 嘘のような話なのに、実在する映画のタイトルが散りばめられると、どことなくリアルに感じられる。

 世界は陰謀に満ちていると信じてしまう人の気持ちが、少しだけわかる気がする。


 カバーの紙は傷だらけで、平積みにされていた書店で、思わず下の本を探ってしまった。

 傷は、写真に意図してつけられたもの。

 不快なところを突いてくるデザインと物語は、悪夢を見そうだ。


 装丁はコードデザインスタジオ。(2023)