つばた徒然@つれづれ津幡

いつか、失われた風景の標となれば本望。
私的津幡町見聞録と旅の記録。
時々イラスト、度々ボート。

モンスターの系譜・人狼。~「闇に棲む者」の巻。

2018年01月14日 06時35分55秒 | 手すさびにて候。
ほんの手すさび、手慰み。
戌年最初の不定期イラスト連載・第六十九弾は「人狼(雌)」。

農耕が社会基盤になる以前、人が命をつなぐ主な方法は狩猟だった。
狩りの現場において、相棒になってくれたのが「犬」である。
俊敏な身のこなし、高い攻撃力、優れた嗅覚を兼ね備え、しかも従順。
傍にいてくれると心強い。
一方、犬側にも、人と一緒に過ごすことで、
外敵から身を護れる、エサをもらえる等のメリットがある。
つまり、相見互いの共生関係だと言えるだろう。

そんなパートナーの祖先…「狼」は、長く畏怖すべき存在だった。
例えば、古代ローマの始祖「ロムレス」と「レムス」は狼に育てられた。
あるいは、モンゴル帝国を築いた「チンギスハーン」は“蒼き狼”の子孫など、
他にも、その力強さに肖った伝説は数多い。
狼は、神格化された存在だったのだ。

しかし、キリスト教が浸透するとヨーロッパでの様相は変化。
古くから敬われてきた神々や精霊などは、日陰へと追いやられていった。
「イエス」を頂点にした聖界の住人以外は認めないという訳だ。
そして、闇の中から、獣人化~悪魔憑きの伝説が生まれる。
特に「人狼」は、悪役の親玉。
小さな子どもを殺して食べると忌み嫌われた。
輪をかけたのが「狂犬病」だ。

病原体はウイルス。
感染した動物に咬まれることで伝染し、発症すると神経系を冒され、
興奮状態となり、よだれを流し、全身の痙攣 ・麻痺 を起こして絶命に至る。
…と、現代では、正体が判明し予防法が確立しているが、
かつては、謎に満ちた死神そのもの。

狂犬病をはじめとした流行り病、精神病など、
理屈が明らかではない「怖れ」を具現化したのが「人狼」だと推測される。
しかし、科学・医学が発達し、様々な病理が駆逐された現代においても
「人狼伝説」は廃れていない。
それは矢張り、いつの世も得体の知れない「心の闇」の化身だからだろう。
コメント
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