つばた徒然@つれづれ津幡

いつか、失われた風景の標となれば本望。
私的津幡町見聞録と旅の記録。
時々イラスト、度々ボート。

一房の葡萄と昭和。

2019年11月16日 16時21分54秒 | これは昭和と言えるだろう。

今朝(2019年11月16日)、関東甲信地方は冷え込んだ。
放射冷却現象が強くなり、東京都心の7.8度をはじめとして、
各地で最低気温が10度を下回った。
宇都宮と甲府では、初氷を観測。
北海道~東北からは、数日前に雪(吹雪)の便り。
11月に入り、季節は歩みのスピードを上げてきたらしい。

津幡町は、最低気温10度、最高気温15度。
十分に肌寒い。
最近の散歩では冬支度を目にする機会が増えた。
例えば「吊るし柿」。

皮をむくと呼吸できなくなった渋柿が、実の中でアセトアルデヒドを発生し、
それに渋み成分「タンニン」が結合すると「不溶性」へ変化。
渋さは封印される。
あと数週間もすれば、ねっとりと甘い干し柿が完成するだろう。

また、とある民家の軒先で葡萄が目に留まる。

「ピオーネ」だろうか?
1つだけ取り残され、寒風に揺れる様子を見て、
中学時代に読んだ短編、「有島武郎(ありしま・たけお)」の「一房の葡萄」を思い出す。

出来心から友人の絵の具を盗んでしまい、罪の意識に苛まれる少年。
彼が密かに思いを寄せる女教師は、犯した罪を責めず慈悲を与える。
彼女が差し伸べた真白く美しい手には、一房の葡萄があった。

『・・・クリスチャンであり、洗礼を受けていた作者は、
 教師に神を、葡萄に神の恵みを重ねていたのかもしない。』

中学生の僕はそんな風に考え、優しい女教師の姿を想像した。
そして、印象を憧れのセンセイに重ね合わせ、赤面し唇を噛んだ。
コメント
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