G7広島サミット(先進七カ国首脳会議)が開幕した。核兵器を保有する米英仏三カ国を含むG7首脳が被爆地に集まった意義は大きい。これを起点に、核軍縮・核廃絶に向けた機運を再び高める努力を、岸田文雄首相はじめG7首脳に求めたい。核兵器の非人道性は、被害の規模や爆発の威力を数字で示しただけでは十分に伝わらない。多数の市民が一瞬に、あるいは苦しみながら命を失い、今も後遺症に悩む被爆者がいる。こうした「被爆の実相」を理解するには、被爆地への訪問が欠かせない。G7首脳がそろって爆心地に近い平和記念公園を訪れ、短時間とはいえ、原爆資料館を視察し、被爆者と言葉を交わしたことは評価したい。続く原爆慰霊碑への献花までの一連の行動は、核兵器を使ってはならないとの力強いメッセージになった。初日夜の討議は核軍縮・不拡散がテーマだった。ウクライナに侵攻したロシアによる核の威嚇、核兵器の不使用を続ける重要性、透明性を欠いた中国の核戦力増強などが当面する課題だ。ただ、基本的価値観を共有するG7が合意を文書にまとめるだけでは核軍縮は進まず、中ロ両国を巻き込んだ対話が必要だ。しかし、中ロも加わる核拡散防止条約(NPT)再検討会議は二〇一五、二二年の二回連続で決裂した。米ロ二国間の核軍縮の枠組みは崩壊が危ぶまれ、米朝、米イラン間の核協議も頓挫したまま。G7も含む国際社会は核抑止をより重視するようになった。岸田首相も十八日のバイデン米大統領との会談で、米国の「核の傘」は地域の安全保障に不可欠との認識で一致した。米国の核抑止力に依存しながら「核なき世界」を目指すのは容易でないが、唯一の戦争被爆国である日本が、けん引役を務めるのは当然だろう。首相が核兵器禁止条約の加盟国と核保有国との「橋渡し役」を担おうとするのなら、条約へのオブザーバー参加を早期に決断すべきである。核廃絶への道を歩み出すには、あらゆる手段を尽くさなければならない。
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