旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の献金被害を巡る訴訟で、最高裁が教団側勝訴の二審判決を破棄、差し戻した上で、「献金の返還は求めないとの念書は無効」と断じた。その意義は大きい。念書の存在で返金をあきらめた他の被害者にも希望を与えよう。早期救済を図ってほしい。
「不幸な出来事は、怨恨(えんこん)を持つ霊によって引き起こされている」-。教団信者は、こんな言葉で女性(故人)から2005~10年ごろ、1億円以上もの献金を引き出していた。女性には返還請求や損害賠償を求めないという「念書」なども書かせていた。
女性の遺族は「当時は十分な判断能力がなく念書は無効だ」と訴訟を起こしたが、一、二審は「原告敗訴」に終わっていた。
だが、女性は当時、精神的に教団の一方的な支配下にあったはずだ。念書を書いた半年後には認知症とも診断された。確かな判断能力があったかは疑わしい。
最高裁は「冷静に判断することが困難な状態だった」と認めた。さらに念書は勧誘による損害回復を封じることから「不利益が大きい」と述べ、「公序良俗に反し、無効」と断じた。
多額献金や物品購入の被害の声が絶えないことを踏まえれば、全面的に評価できる判決だ。「念書」を書かせる事例も相当数に上るとみられるが、それが返金を求める上で壁にもなっていた。今回の判決を機に献金被害の早期解決が進むことを望む。
さらに霊感商法など悪質商法に対しては、消費者契約法や不当寄付勧誘防止法があるが、まだ対応策が不十分といえる。
そもそも精神的な不安や判断力の欠如に付け込み、勧誘するのは不当だ。たとえ本人の意思であっても、資産状況に照らして、通常の生活が維持できなくなるまで寄付を勧誘するのも不当である。
宗教団体の正体を隠して勧誘してもいけない。違反した場合には、寄付の取り消しができるよう早急に法制化すべきである。
「宗教2世」の問題もある。「信じなければ地獄に落ちる」などと親に教義を強制されれば、人格形成にも教育上も大きな影響を与える。親の多額献金により困窮に陥り、成人後の人生にも困難を強いられたりする。重大な権利侵害と受け止めて、「宗教2世」への支援策も急ぐべきである。
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