アイラ・シャピロ 元USTR大使(日本・カナダ担当)2013.9.27
公開日: 2013/09/26
Ira Shapiro, Former Ambassador of the U.S. Trade Representative
アイラ・シャピロ元USTR大使は、TPP交渉が妥結すれば、デジタル経済、知的財産、環境問題などを包括的に取り込む21世紀型の通商協定が成立すると述べた。
日本にとっては、経済成長、経済改革を呼び込み、日米間の貿易、投資の増大につながるものだとした。
司会 日本記者クラブ企画委員 軽部謙介(時事通信)
通訳 小松達也(サイマル・インターナショナル)
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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2013年10月号に掲載)
TPPの交渉合意に自信
1990年代に日米の自動車交渉を担当した米通商代表部(USTR)の高官で、いまは弁護士としてそのキャリアを生かして、これから交渉がヤマ場にさしかかる環太平洋経済連携協定(TPP)にも関与する。TPPの交渉の行方について「日本が加わったことでTPPが意味のあるものになった。日米の交渉チームは建設的に参加しており、失敗したドーハラウンドの時と異なりモメンタムが感じられる。日米を含めてすべての国がセンシティブセクターを持っているが、合意することの重要性を考えて各国の政治的決断がなされて良い結果をもたらすと確信している」と述べ、交渉は成功するという見方を示した。
世界的に見て多国間交渉よりも2国間交渉が進行している状況については「貿易交渉を見ると多くの2国間交渉が行われているが、結果的にはこうした交渉はまとまって統合されるものだ。2国間交渉は多国間交渉につながるブロックの1つとして重要だとみている」と指摘した。 自動車問題に関しては「米国で販売される日本車のうち70%は米国で作られている。日本車の生産は州や各地域に貢献しており、米国経済の一部になっている。この問題はより大きな通商協定の中でハンドリングできると思う」と述べ、自動車は大きな問題にはならないとの見方を示した。農業関連で「5つの重要項目」を提示している日本にとって気掛かりなセンシティブセクターの取り扱いは「米国は(通商交渉で)オーストラリアの砂糖の輸入を認めていない。代わりに韓国とはコメは除外品目として認めている。すべてのセンシティブセクターには配慮がなされ妥協が行われる。こういう問題も乗り越えながらまとまっていくのではないか」と述べ、会見の全体を通して交渉合意に自信を見せたのが印象的だった。
共同通信客員論説委員 中西 享