中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

夏蜜柑

2007-03-02 09:54:17 | 身辺雑記
 時折、車窓などから畠の夏蜜柑の木に実が鈴なりになっているのを見ることがある。収穫間近らしく緑の葉の間の黄金色の実が美しい。

            

            

 子どもの頃は夏蜜柑と言うから夏にできるものと思っていた。あの頃の夏蜜柑はかなり酸っぱく、皮を剥きだす時から口の中の唾液が増え、口をすぼめてシイシイと息を吸い込みながら剥く。袋を剥いて口に入れると、酸っぱさに顔を顰めながら食べた。時には砂糖をつけたが、それでも酸っぱかった。こうして書いているだけでも口の中が酸っぱくなってくる。

 夏蜜柑に限らず、蜜柑には酸味があるものと思っていた。冬の蜜柑でも、今頃のものに比べるとずっと酸味があった。火鉢の炭火にかけた網の上に乗せたり、灰の中に埋めたりして温めて食べると、少し甘味が増すように思われた。運動会の季節になるとまだ青い蜜柑が出て、弁当と一緒に校庭に作られた観客席で食べた。まだ皮も硬くかなり酸っぱかったが、初物で何となく嬉しかった。今でも青い蜜柑を見ると運動会を連想する。近頃は何かにつけ甘さ嗜好が強くなったようで、蜜柑もほとんど酸味がない。また、ポンカン、タンカン、デコポンなど、昔から産地では珍しくなかったようなものや交配されて創られたものなど、さまざまな品種が店頭に並ぶようになった。どれも甘い。夏に出回る蜜柑類の種類も多くなった。

 夏蜜柑は酸っぱいものだが、いつの頃からか甘夏と言うものが出るようになった。甘いと言っても、私が酸っぱさには少し弱いせいか、やはり酸味は強いと思った。そのうちに、米国産のグレープフルーツが出始めた。横半分に切って切り口に砂糖をかけ、スプーンで果肉を掘り出すようにすくって食べるのが物珍しかった。知人に昔ながらの酸っぱい夏蜜柑が好きなのがいて、グレープフルーツなんてと敬遠していた。

 柑橘類は温州蜜柑に限らず、柚子でも酢橘でもレモンでも、香りを嗅いだだけで気分が爽快になるような気がする。もっとも猫は蜜柑の匂いが苦手なようで、皮を折り曲げて汁を吹きかけると顔を振って逃げ出してしまう。食べるわけではなかったが、子どもの頃に火鉢で蜜柑の皮を焼くと、香ばしい香りが部屋の中に漂うのが好きだった。夏蜜柑も香りは好きだが、あの酸っぱさだけはどうにもならず、最近はかなり甘くなっているのかも知れないが、酸っぱいものだという先入観があって、やはり今でも敬して遠ざけている。